深刻な医師不足に対して、県は、筑波大に地域枠5名を新たに設けることを決め、現在開会中の県議会に報告しました。茨城県の人口10万人当たりの医師数(2006年)は155.1人で、都道府県別で46位と全国最低レベルとなっています。さらに、少ない医師の地域的な偏りも問題を一層深刻化させています。鹿行地域が人口10万人当たり90.3人、常陸太田・ひたちなか地域が94.8人、筑西・下妻地域は95.8人と、いずれも県平均を大きく下回っています。
こうした現状を改善するために、つくば市の筑波大学の入学定員に2009年度から、県内出身者を対象とする「地域枠」を設置することになりました。都道府県ごとに最大5人までの医学部定員増を認めた国の緊急対策の一環で、地域枠入学者は県からの奨学金を受け、卒後9年間は、茨城県内に医師として勤務することが義務づけられます。県内に勤務する医師の絶対数を確保するという、医師不足への有効策です。
3月3日の県議会で、橋本知事は「国の緊急医師確保対策により可能となった各県最大5人の臨時的な定員増について、筑波大学に2009年度から地域枠を新設することで大学との合意に達し、現在、国との協議を進めている。今後は、同大との連携のもとに医師不足地域に教育拠点病院を設けるなどして、地域医療を担う人材育成、確保に努める」と答弁しました。
地域枠は筑波大医学群医学類(医学部)の現在の定員100人に、推薦入学枠を5人を増員する形で設置されます。この地域枠は県内出身者に限られ、在学中の6年間は県の奨学金を受け、卒業後9年間、知事が指定する医師不足地域の医療機関に勤務すると、奨学金の返還が免除されることになります。
ただし、この地域枠の設置は2009年度から9年間の期限付きの政策です。その間養成される医師は、わずか45名にすぎません。これでは、抜本的な改善にはなりません。さらに人口300万に対してわずか100人という筑波大学の医学部定員の大幅増が必要です。
また、医師不足地域に「教育拠点病院」を、筑波大と県が連携して設置する方針を定めました。医学教育の一環として医学生に地域医療を経験させるため、早ければ09年度からスタートさせます。
県では、筑波大学の地域枠とは別に、県独自の医学部奨学生制度を設け、卒業後一定期間県内で勤務すれば、奨学金の返済を免除する制度を創設し、運用しています。