茨城県の農業は、「外国人研修・技能実習制度」で来日した外国人労働者によって支えられていると言っても過言ではありません。しかし県内では、長時間労働をさせたり、基準外賃金の未払いなどのトラブルが増えています。こうした事態を受け、厚生労働省茨城労働局では、中国人実習生向けの「労働条件通知書」を作成しました。独自の形式の通知書作りは全国で初めてで、違法行為の解消に取り組む方針です。
「外国人研修・技能実習制度」は、1年の研修を受ければ、技能実習に移行しさらに2年間の日本滞在が認められます。研修生の期間は、製造業や農業などに従事して手当を支給され、技能実習生は労働者扱いで就業することが出来ます。この制度を支援する財団法人「国際研修協力機構(JITCO)」と茨城労働局によると、県内の実習生は約4700人(06年度)。このうち、農業に従事する実習生は全国で最も多い約2500人に上っています。
途上国の人材育成を名目にした実習生の低い賃金での雇用は全国的にも問題となっています。県内では、労働局の監督指導で発覚した農業に従事する実習生に関わる違反事業者数は05年は3件だったが、06年は39件、07年は34件と増加傾向にあります。
茨城労働局が作成した労働通知書は、農業事業主が雇用する実習生に交付することになっています。実習生の9割近くが中国人であることから日本語と中国語が併記されています。技術実習の期間、就業場所、業務内容、労働時間、休憩時間、時間外労働の有無、休日、年次有給休暇、賃金、最低賃金で以上であることの確認、時間外賃金の明示、賃金から差し引かれる費用、社会保険の加入状況などが明示されています。さらに、実習を途中で終了する場合は、少なくても30日前には通告することとし、予告日数が30日よりも少ない場合は、不足する日数分の予告手当を支払うことなどが記載されています。
茨城労働局労では、一次受け入れ先であるJAなどを通じて、会員の農家などすべての事業主に配布することにしています。
反面、雇い主側の農業者からは、「こうした労働条件ではとても採算が合わず、実態から大きくかけ離れている。とても農業を続けていくことは出来ない」との声も寄せられています。
参考:国際研修協力機構(JITCO)