企業献金じわり争点化 自公に温度差、民主内にも異論
産経新聞(2009/3/26)
企業・団体献金の見直しが、次期衆院選の争点として浮上してきた。西松建設の違法献金事件で公設秘書が起訴された民主党の小沢一郎代表が企業・団体献金の全面禁止を主張したことが発端だが、自民党の大勢は「小沢氏が言うとは、盗っ人たけだけしい」(町村信孝前官房長官)と争点化を避けたい考えだ。
「政治とカネ」に厳しい立場の公明党からは全面禁止に賛同の声が出ており、与党の足並みは乱れつつある。民主党内にも全面禁止には反発の声がある。これに対し共産党や社民党は全面禁止を唱え、与党と民主党に揺さぶりをかけている。
「制限速度60キロの道路を200キロで暴走した男がいるから、制限速度を60キロから20キロに下げろという類(たぐい)の議論だ。反射的に政治資金規正法を改正すればいいというものではない」
自民党の鈴木俊一元環境相は26日昼、古賀派総会でこう述べ、企業・団体献金の全面禁止に否定的な考えを示した。
山崎拓元副総裁も同日午後、民放BS放送の収録で「小沢氏が『企業献金は悪だ。全廃しろ』と言ったのにはあきれた。企業・団体献金は重要な役割を果たしている。ゼロにすべきではない」と主張した。
自民党は民主党に比べても企業献金への依存度が高い。「政党助成金が増額されれば禁止でもいい」(若手)との声は少数で、「政党支部への企業献金の禁止は議員の党への従属につながる。議員生命にかかわる」(閣僚経験者)と考える議員は多い。
一方、「クリーンさ」を売り物にする公明党には、企業・団体献金禁止に前向きな意見が出ている。漆原良夫国対委員長は22日、富山市内での同党の会合で「私見だが政党支部に対する企業・団体献金を禁止してはどうか」と発言した。
公明党政治改革本部(本部長・東順治副代表)は26日、国会内で会合を開き、企業・団体献金などの政治改革について検討に着手。「超党派で政治とカネの問題を議論するテーブルを作れ」と、超党派の協議機関設置を求める意見が飛び出した。公明党幹部は「民主党に得点を稼がせるわけにはいかない。うちは企業・団体献金を廃止したって構わない。自民と民主の間で板挟みになるのはいやだ。公の場で各党がどんどん議論すればいい」と語る。
一方、小沢氏の西松建設違法献金事件で揺れる民主党は、マイナスイメージを挽回(ばんかい)しようと、党政治改革推進本部(本部長・岡田克也副代表)で企業・団体献金の議論を開始した。だが、論議はすんなり進みそうにない。
「大上段に立った議論はしていない」
26日の同本部役員会後、記者団から、小沢氏が提案した企業・団体献金の全面禁止論についての意見が出たかを問われた野田佳彦事務局長は、こう述べるにとどまった。
衆院選の政権公約(マニフェスト)にこの問題をどう盛り込むか。さまざまな思惑が錯綜(さくそう)し、与党や民主党にとって難しい課題となりつつある。

現在は、政治家個人の後援会には企業団体からの寄付は禁止されています。しかし、政党支部には企業団体からの献金を受けることができます。通常、国会議員の場合個人の資金管理団体(献金を受ける個人後援会)と政党支部の代表を兼ねるのが常であり、結果的に右のポケットと左のポケットに別に献金を受けるだけであり、実際に使うのは同じ政治家ということになります。
これが、政治資金規正法がザル法といわれる所以でもあります。
一番わかりやすい改革は、政党支部への企業団体献金も一切禁止することです。
民主党の一部には、公共事業に参加する業者の献金を禁止すればよいという考え方も提示されているようですが、政治家がその権限を発揮する分野は公共事業だけではありません。許認可や補助金、施策の方向性まで考えると、あらゆる企業団体のその影響は及びます。線引きも難しい公共事業に関連する企業団体への献金禁止だけでは不十分で、実効性がありません。
企業団体が政治家への献金を行う場合には、政党本部にその受け皿を限定すればよいと思います。特定の個人に献金したい場合は、あくまでもその金の流れを明確にするために、指定献金のような制度を設けて、政党本部から議員個人への献金の道筋を透明化すればよいと思います。
公明党内にも連立のパートナーである自民党への遠慮から、企業団体の政治献金に関しては、その姿勢が明確でないとの批判もあります。いまこそ、政治と金の問題については、どこよりもクリーンな政党=公明党の本領を発揮するときです。