水戸の誇りだ「桜田門外の変」映画に 地元あげ支援
朝日新聞(2008/8/20)
幕末に水戸藩士らが起こした「桜田門外の変」の映画化を応援する動きが本格化している。製作会社も決まり、撮影開始は09年春。ロケ地を地元が提案する企画などで街おこしをしようと支援団体が結成され、住民を巻き込んだ映画づくりを目指す。明治維新に向かう歴史を加速した「事件」を通じて、地域に元気を取り戻そうと意気込んでいる。
06年1月、地域おこしに関心のある4~5人が水戸市の居酒屋に集まったのがきっかけだった。09年が水戸開藩400周年にあたることも考え、桜田門外の変の映画化が決まっていった。
「桜田門外の変は誇りを持って語れる歴史なのに、郷土教育でも敬遠して扱わない。地元だからこそ、もっと正面から取り上げていい」。支援団体の事務局長を務める三上靖彦さん(49)はテーマ選定の理由を語る。
まもなく、実際の映画製作は都内の製作会社が担うことに決まった。原作は吉村昭さんの歴史小説「桜田門外ノ変」になった。脚本は映画「陰陽師」で脚本を手がけた江良至さん。10年正月ごろ、全国公開の予定だ。
三上さんらは今月7日、「映画化支援の会」を立ち上げた。具体的な取り組みを記したスケジュール表には約80の事業がずらりと並ぶ。
例えば、来月からは「ロケ地推薦コンクール」が始まる。吉村昭さんの原作を読んで、「この場面では我が家の裏山をロケ地に使ってほしい」などと売り込む企画。候補地は、支援の会が製作会社に推薦する。
ほかにも、10月18日には「水戸八景ツーリング」を企画。水戸藩主徳川斉昭が選定した偕楽園など水戸市近辺の名所8地点を自転車でめぐるイベントだ。郷土史家による講演会や史跡巡りも予定されている。
これらの事業は、内閣府の「地方の元気再生事業」に選ばれ、約2400万円の補助を受けることも決まった。
三上さんは「地域の歴史、自然、文化はそこに住む人たちの財産。映画づくりを通じてそれらを再発見し、郷土への愛着を深めてほしい」と、呼びかけている。
〈桜田門外の変〉 1860年3月、「安政の大獄」で水戸老公・徳川斉昭に永蟄居(ちっきょ)(終身謹慎処分)を命じた江戸幕府の大老・井伊直弼に不満を募らせた水戸浪士らが、江戸城桜田門外で井伊のかごを襲撃、暗殺した事件。以後の倒幕運動につながったと影響を指摘する説は多い。
「水戸藩開藩400年記念『桜田門外ノ変』映画化支援の会」では、水戸・千波湖畔に大規模なオープンセットを設置する計画です。
映画制作のスケジュールでは、この秋に正式な制作発表を行い、12月に撮影開始。「桜田門外の変」(1860年)から丸150年にあたる2010年秋に完成・全国公開の予定です。
映画「桜田門外ノ変」は、茨城県内でのオールロケで制作されることになっており、その中心が千波湖畔のオープンセットです。
今年8月7日に行われた支援の会総会では、岡田裕(ゆたか)プロデューサーが「映画人の私自身にとって、過去最大のオープンセットを千波湖畔に組みます。井伊直弼邸から桜田門までの200メートルにおよぶセットで、映画史上に残る殺陣シーンにしたい。スタッフは俳優ら総勢700人で、制作費10億円を超えるプロジェクト。リアリズムを追求します」と語っています。かつてNHK大河ドラマ「徳川慶喜」の撮影の際、同じ場所に作成されたオープンセットの規模を上まわる大規模な工事になります。
事務局によると、PRなどを兼ねてオープンセットに展示館も併設され、撮影後も水戸開藩400年の記念イベントとして約1年間、一般公開されることになっています。
井手県議、県の積極的財政支援を強く要望
9月4日、井手よしひろ県議は、県フィルムコミッション推進室並びに県観光物産課と、映画「桜田門外ノ変」への支援のあり方について意見交換を行いました。特に、財政的な支援についても、NHK大河ドラマ「徳川慶喜」の際の枠組みを参考に、最大限行うよう強く要望しました。

(2009/10/21更新)
茨城県では、井手よしひろ県議らの要望を受け、平成21年度補正予算に3000万円の予算を計上し、映画「桜田門外ノ変」の制作を全面的に支援することになりました。
20日には、江戸城桜田門、彦根藩邸などのオープンセットの安全祈願祭が開催れました。
千波湖畔に大名屋敷など再現/オープンセット着工
映画「桜田門外ノ変」支援の会
日本工業経済新聞茨城版(2009年10月21日)
水戸藩開藩四百年記念事業の映画「桜田門外ノ変」で、映画化支援の会(狩野安会長)は20日、水戸市の千波湖畔で、撮影のために建設するオープンセットおよび記念展示館の安全祈願祭を行い、工事に着手した。建設するセットは、高さ約9m、延長100m以上の巨大なもので、大名屋敷や江戸城桜田門、お濠などを再現する。撮影終了後にはセットの中に、地域学習とPRを兼ねた展示館(約330㎡)を建設し、一般に開放する予定だ。建設費は約2億円。
オープンセットの土木設計は㈱ミカミ(水戸市)、建築設計はエイプラス・デザイン(水戸市)、土木施工は㈱根本工務店(水戸市)、建築(美術関係)施工は東映京都撮影所(京都府)が担当。建設はお濠などの土木工事から始まり、今年内まで作業を進め、来年1月には完成の予定。
その後は、来年1月から撮影を開始し、3月ごろに記念展示館をオープンさせ撮影を終了。映画は来秋以降に全国公開の予定だ。
この映画は、幕末の安政7年(1860年)に水戸藩浪士などが当時の大老井伊直弼を江戸城桜田門外で襲撃し歴史に大きな影響を与えた「桜田門外の変」を取り上げる。映画化実現に向けて、県をはじめ水戸市など関係市町村、文化団体、観光団体など関係者が「支援の会」を立ち上げ、バックアップすることになった。
今回の映画は、すべてのシーンを地元(県内)で撮影するのが特徴で、千波湖畔にオープンセットを建設して、襲撃シーンなどの実写を行う。さらに県内各地でロケを実施する。
オープンセットは、100m以上に及ぶ大名屋敷(彦根藩、安芸広島藩、上杉藩など)、お濠、高さ約14mの「桜田門」などで構成する。建物などは東映が特殊美術で仕上げる。撮影終了後はセットの中に記念展示館も建設する。セットの建設費は約2億円。
20日の安全祈願祭には、関係者ら約40人が出席。工事の無事故無災害と映画の大成功を祈った。
神事に先立ち、支援する会副会長の加藤浩一水戸市長は「関係者のご尽力に感謝申し上げる。幕末の水戸藩の先人たちの思いは、今の時勢に合っているのではないか。映画の成功をお祈りいたします」とあいさつ。
支援する会の三上靖彦事務局長は「〝オール県内ロケ〟という映画は、邦画では初めてと思います。工事の安全、さらに映画の大成功を祈念いたします」と謝意を表した。
映画の制作費は約10億円。
監督は「男たちの大和・YAMATO」などを撮った佐藤純 氏。主人公の関鉄之介は、俳優の大沢たかお氏。そのほか、徳川斉彬を北大路欣也氏が、井伊直弼を伊武雅刀氏が演じる。