千葉県庁での不正経理問題は、9月10日付のブログ「千葉県庁で30億円に上る不正会計処理発覚」で指摘したところですが、茨城県庁でも不適切な経理処理の実態の一部が明らかになりました。平成21年第3回定例県議会が開会された10月5日、県議会に対して県監査委員が「平成20年度茨城県歳入歳出決算審査意見書」を提出しました。その中で、3,142万円の物品購入に関する不適正な経理操作があった事実が報告されました。
県監査委員によると、昨年11月に会計検査院が全国12道府県で、国庫補助事業の事務費に不適正な経理処理があったことを指摘しことをキッカケに、茨城県においても実態調査を行いました。その結果、物品を購入したこととして支払いを完了したものの、実際に購入せず業者に代金を預けていた事例(預け)が10機関で518万円。契約と異なる物品を差し替えていて納品させていた事例(差し替え)が23機関で1,274万円、後日異なる物品を購入するとして一括払いしていた事例(一括払い)が10機関で1,350万円、合計32機関3,142万円の不適正な経理処理が発見されました。
井手よしひろ県議の問い合わせに対して、監査委員事務局は「不適切な会計処理が指摘された出先機関は、土地改良事務所など農林水産部関係の出先機関で12カ所、土木事務所など土木部関連で10カ所、産業技術専門学院など商工労働部関連で4カ所、保健所など保健福祉部関連で2カ所、県立高校など教育庁関係で4カ所の合計32カ所」、「金券などを購入した事例、実際に何に使ったのか特定できていない事例、私的に流用された可能性がある事例、業務と関係のない品物の購入に使用された事例などはない」ことなどを回答しました。
県監査委員は、「不適正な経理処理が行財政改革推進のさなかに行われていたことは、県民の信頼を著しく失墜する行為であり誠に遺憾である。今後、再びこのような事態が生じないよう、不適正な経理処理の原因を検証し、職員の意識改革を含め抜本的な改善策を講じ、適切な予算執行に努められたい」と、知事をはじめとする県執行部に、職員の意識とシステムの改善を強く求めています。
県庁内の不適正経理処理問題について、井手県議は10月9日に行う県議会代表質問で、さらにその詳細の説明を知事に求めることにしています。
監査委員の今回の調査は、出先32機関の調査結果であり、県庁の全体像を示すものではありません。現在、県では国の会計検査院の調査が継続されており、それにあわせる形で行政監査室が中心となった全庁的な内部調査が進められています。会計検査院の調査は、例年11月上旬に公表されることになっていますが、井手県議は橋本昌知事の5期目スタートであるこの10月定例県議会中にも、詳細な結果の公表を行うよう求めていく予定です。
不適正な経理処理問題について
平成20年11月の内閣への会計検査院決算検査報告で12道府県において、国庫補助事業事務費の不適正な経理処理による支出があったことが指摘され、本県においても、県単独事業を含め調査を行っている。 監査委員としてもこの不適正な経理処理問題は極めて重大なものと受け止め、早急な実態調査が必要と認識し、県の全機関を対象に照会を行い、平成18年度、平成19年度に不適正な経理処理があった機関のうち、2ヶ年の累計金額が10万円以上の機関を中心に、契約と異なった物品の納入の有無などに重点を置いて不適正経理の実地調査を行った。
その結果、物品を購入したこととして業者に代金を預けていたもの(「預け」)が10機関で518万円、契約と異なる物品に差し替えていたもの(「差替え」)が23機関で1,274万円、随時に物品を納入させ、後日異なる物品を購入したとして一括払いしていたもの(「一括払い」)が10機関で1,350万円、合計32機関(いずれも出先機関)で3,142万円の不通正な経理処理が確認され厳重に注意を行っているところである。
なお、平成19年度の事務費の予算執行について不適正な経理処理が確認されたもののうち5機関(合計327万円)については定期監査の指摘事項として指導を行った。
また、平成20年度の事務費の予算執行分については、本庁及び出先機関に対する定期監査の中で確認調査をしているが、平成21年4月から9月までの監査では不適正な経理処理を行っている機関はなかった。
不適正な経理処理が生じた主な原因としては、職員の財務規則に対する意識の希薄さや内部牽制、検査・指導が徹底されていなかったことのほか、国庫補助事業では不用となった事務費については国に返還しにくいとの意識があったこと、補正予算などで年度末に新たに事務費の配当があった場合短期間で適切な物品購入処理が困難であったこと、備品が必要でも出先機関では予算の流用が出来ないため消耗品の予算で備品を購入したものなど予算や会計処理の制度的不備や硬直化が挙げられる。
このような不適正な経理処理が行財政改革推進のさなかに行われていたことは、県民の信頼を著しく失墜する行為であり誠に遺憾である。今後、再びこのような事態が生じないよう、不適正な経理処理の原因を検証し、職員の意識改革を含め抜本的な改善策を講じ、適切な予算執行に努められたい。
監査委員としては、従前の監査方法のみでは不適正経理を捕捉できないことに鑑みて、必要に応じ消耗品等の物品購入について取引業者帳簿等との照合を行うなど監査手法を見直して定期監査に臨んでいるところであるが、今後とも不適正経理を看過することのないよう一層厳正な監査を実施していく考えである。
不適正経理2年で3142万
読売新聞(2009/10/6)
06・07年度県の32出先機関で
県の32出先機関で2006、07年度の2年間、3142万円の不適正経理が行われていたことが5日、県監査委員の調査で明らかになった。県監査委員は該当する出先機関を厳重注意した。
物品を購入したことにして業者に代金を預ける「預け」は10機関で518万円に上った。預けが行われていたのは、出先の土木事務所などが多かったという。監査委員の調査によると、契約と異なる物品に差し替えていた不正が23機関1274万円。
県監査委員事務局は「2年間については私的に流用されたものはない」としている。監査委員は不適正経理の原因として〈1〉職員の財務規則に対する意識の希薄さや、検査・指導の不徹底〈2〉国庫補助事業では不用となった事務費を国に返還しにくいという意識――などを挙げている。
会計検査院は昨年10月、県に調査に入り、国土交通省や農林水産省などから補助金が出ている事業について不正な経理が行われていないか調べた。県も独自で調査を進めており、07年度までの5~6年分の調査結果を近く公表する。
不正経理3142万円確認―県監査
常陽新聞(2009/10/6)
県庁の出先32機関で
県庁の出先機関32機関で、2006、07年度の2年間に総額3142万円の不正経理が確認されたとして、県監査委員(委員・新井昇県議ら)は5日開会の県議会第3回定例会に、原因を検証し抜本的な改善策を講じるよう求める意見書を出した。このうち、業者に公金をプールすることから不正の温床とされる「預け」という手口が、10機関で518万円確認された。不正経理をめぐっては会計検査院が06年度に13府県、07年度に12道府県の不正経理を指摘し、いずれも返還対象となっている。
「預け」のほか、契約と異なる物品に差し替える「差し替え」という手口が23機関で1274万円、随時物品を購入し後日異なる物品を購入したことにして一括払いする「一括払い」が10機関で1350万円確認された。いずれも財務規則に違反する。
3142万円のうち、06年度の不正経理は27機関2815万円、07年度は5機関327万円。県監査委員はこのうち07年度分のみを08年度決算意見書で公表した。06年度分は公表していない。08年度分については現在調査中という。
一方使途は、すべて業務に必要な物品を購入するために使われており、私的流用や飲食費への流用、使途不明金などは確認されていないという。
不正経理の原因について県監査委員は、①財務規則に対する職員の意識の希薄さ②内部けん制、指導・検査体制の不徹底③会計処理の制度的不備や硬直化―などを指摘。「行財政改革の最中に不適正な経理処理が行われていたことは県民の信頼を著しく失墜し遺憾」だとして、執行部が原因を検証し抜本的な改善策を講じるよう求めた。
会計検査院が都道府県の不正経理問題を指摘しているのを受けて、今回、取引業者の帳簿と照合するなど、監査手法を見直して実施した。県監査委員が不正経理問題で意見を出したのは今回が初めて。