10月9日、平成21年第3回定例県議会代表質問が行われ、井手よしひろ県議が公明党を代表して、橋本昌知事に5期目県政の基本方針や鳩山新政権への対応などを質しました。
質問の冒頭井手県議は、橋本知事の5選勝利に祝意を表し、県民の期待を裏切ることのないよう、生活者の視点に立った懸命な県政運営を要望しました。井手県議は、橋本知事の5期目のスタートに当たり、「竹内藤男前知事の汚職・逮捕によって失われた県民の信頼の回復を最大の課題として出発した橋本県政。竹内ワンマン体制の中で、県民との間に出来た大きな溝を埋める作業が、橋本県政の最初の課題だったと言えます。それから16年、新たにスタートを切る橋本県政は、なによりも県民の声を大切にする政治を貫いていただきたいと思います。決して県民との対話を忘れず、県民の意見に一つでも多く耳を傾ける努力をするべきです。さらに、厳しい県財政の中、懸命に努力する現場の県職員の生の声を活かすことも重要です」と、県民に開かれた県政の推進の重要性を指摘しました。
その上で、◎人件費抑制による危機的県財政の建て直し策、◎乳幼児医療費の助成拡大、◎地域医療の充実策、◎茨城空港開港に向けて、◎県北地域の県民の期待にいかに応えるか、など5つの項目について具体的な実効策を質しました。
特に、人件費の抑制策について、「政府は、国家公務員の今年度の月給を平均0・22%、年間のボーナスを0・35カ月分それぞれ引き下げることを柱とした人事院勧告について、完全実施することを閣議決定しています。その中で注目すべきは、『持ち家に係わる住宅手当』の廃止を決定したことです。国家公務員には、自宅であっても新築・購入後5年に限り、月額2500円の住宅手当が支給されています。一方、我が県の『持ち家に係わる住宅手当』の現状は、月額4000円が支給され、その支給総額は平成20年度の実績で約5億4000万円と試算されています。この県職員の住宅手当も速やかに見直す必要があります」と井手県議が指摘しました。橋本知事は、「今年の人事委員会の勧告を踏まえて適切に対応してまいりたい」と答弁しました。
国の地域医療再生基金を活用し医療の建て直しを
また、地域医療の充実策について、井手県議が地域医療再生計画について具体的に提案。「自民・公明の前政権は、『地域医療再生基金』を設け、都道府県が『地域医療再生計画』に基づいて行う、医療圏単位での医療機能の強化や医師・看護師などの確保等の取組を、強力に支援することにしています。『地域医療再生基金』の総額は、全国で3100億円。採択予定地域は、100億円規模の事業が全国10カ所程度。25億円程度の事業箇所が84カ所程度で、47都道府県で各々2カ所程度が想定されています。茨城県でも、現在2つの医療圏でこの『地域医療再生基金』の採択をめざし、具体な提案の調整を急いでいます。私は、是非100億円事業を県北の日立医療圏に、25億円事業を筑西・下妻医療圏に導入すべきと提案させていただきます。特に、日立医療圏への100億円事業導入にあっては、茨城県全体の医師不足を解消するために、医療系の大学との連携の強化や寄附講座の拡充により、茨城県で新たに就職する医師の数を2割程度増員すること。来年度のできるだけ早い時期に「ドクターヘリ」を就航させること。日製日立総合病院に地域救急救命センターを設置すること、産婦人科医師の確保に努め、来春には産婦人科を再開すること、などが喫緊の課題であると申し上げたいと思います」と、茨城県の地域医療を立て直すために具体的な提案を行いました。橋本知事は、井手県議の提案をもとに国に対して『地域再生計画』を提出することを表明しました。その上で、「現在、新政権において平成21年度補正予算の見直しが進められており、地域医療再生基金についても、先行きが不透明になってきておりますが、私といたしましては、全国的な医師不足の状況を改善するためにも、この基金は極めて役立つものと考えておりますので、ぜひとも基金事業が予定通り実施されるよう、国に働きかけてまいります」と答弁しました。
民主党政権は「マニフェスト至上主義」、拙速な政権運営をやめ、国民の声を聞くべき
引き続き、井手県議は鳩山新政権の政権運営について、知事の所感を求めました。
その中で井手県議は、民主党はマニフェストの実現を急ぐあまり、国民の間に混乱が生じていることは看過できないと糾弾。新政権の政権運営の悪しき3つの特徴を指摘しました。「その第一は『マニフェスト至上主義』です。多くの国民は、政権交代という民主党の主張には賛意を示しました。しかし、それは民主党のマニフェストを無条件で承認したわけではありません。国民は民主党マニフェストに対し、白紙委任はしていないのです。本来、この時期、民主党に求められることは、官僚に対しても、地方自治体に対しても、そして何よりも国民に対して、自らのマニフェストの正当性を説明し、納得させることです。それなしに、水戸黄門の印籠のごとく、マニフェストをかざし、問答無用で政策を進めようとする姿は、正に本末転倒の姿です。二つには、余りにも拙速な政権運営です。鳩山総理は、温室効果ガス25%削減を国際公約として、国連や各国首脳との会談の場で公表しました。確かにその国際公約は野心的なものであり、ヨーロッパを中心とする国々から賞賛を受けたことも事実です。しかし、国内の産業界や地方自治体などの同意なしに、どのようにして具体的に削減を進めていくのでしょうか。万が一、国民に過度の負担が掛かった場合、国際公約だからといって、その負担を国民に強要するのでしょうか。その他、八ッ場ダム工事中止にしても、長寿医療制度の廃止、障がい者自立支援法の廃止にしても、制度を廃止したその後の代替え案の提示もないままの発表に、現場を預かる地方自治体の担当者は茫然自失状態と言っても過言ではありません。第三に、政治の目的が全く見失われてしまっていることです。政治は国民のためにあるという目的を、現政権はすでに忘れています。総選挙以来、私は、県内の様々な方、約300人と語り合ってきました。そこで聞かれた県民の声は、『高速道路を無料にしてくれ』とか『子ども手当ての2万6000円がほしい』とか『高校の授業料をタダにしろ』とかいう意見は誰ひとり聞かれません。『景気を良くしてほしい』『明日の仕事の場を確保してほしい』『安心して子供を産める病院を確保してほしい』との切実な声が、生活の現場から上がる国民の声なのです。こうした国民の声に、民主党新政権は耳を閉ざしていると言わざるを得ません」と、鳩山内閣の新政権運営を厳しく批判しました。
橋本知事はこうした民主党政権について、「政権発足後すぐに、大型公共事業の中止・凍結等の大きな方針転換が行われましたが、その際、中止の判断に至った理由や代替案等の説明が一切ないまま結論を押しつけるという、初めに結論ありきの進め方には、関係自治体や住民は大変困惑しているところであります。また、マニフェストに盛り込まれている政策の財源を生み出すために、経済対策として措置された補正予算の一部を一方的に執行停止するという、やや強引な進め方に対しても、地方側としては違和感を覚えております。さらに、政治主導とは言え、政務三役だけが集まって全てを決定しているため、事務方にはほとんど何を聞いても分からない状況が続立ていることは異常であり、一日も早く政と官が協力し合って、業務がスムーズに進むようになり、中央政府としての力を十分に発揮できる状祝になることを期待しているところです」と、所見を述べました。
県庁内の不適正経理処理問題について論及
最後に、井手県議は県の不適正経理処理問題にも言及しました。「現在、国の会計検査院の調査と連携して、県の内部調査が行われています。昨日の自民党の代表質問にたいして、橋本知事は、『この内部調査の結果、預け金、一括払、差替えの不適正な経理処理が行われていたが、使途不明金や私的流用はなかった」と答弁されました。しかし、監査委員の指摘によると、出先機関の極一部だけでも、不適正な経理処理の金額が3000万円を超えています。9月に問題が表面化した千葉県の事例では、不適正な経理操作の金額は、約30億円に達しています。使途不明金や私的流用はなかったとのご説明ではありますが、本当に流用がなかったのか、その金額など県民の疑念は深まっています。私ども公明党と致しましては、知事は調査を督励し、早急に、不適正な経理処理の全体像を報告すべきと要望いたします。この定例県議会では、決算特別委員会が設置される予定ですが、本件に関して十分な審査が行われるべきと考えております。遅くとも、決算特別委員会の開会(10月21日)までには、内部調査の内容を報告いただくことが必要です。さらに、内部けん制や検査・指導体制が十分に徹底されていなかったことは、大きな問題です。内部の帳票検査も、全て業者の納品伝票などのとの突合検査を制度化する必要があると思います」と、早期の調査結果の報告と内部統制の強化を強く主張しました。