医師不足解消事業、大幅見直し
常陽新聞(2009/10/20)
新政権の補正予算執行停止受け、圧縮
民主党新政権が16日、補正予算2兆9259億円の執行停止を閣議決定したのを受けて、本県では、医師不足解消策の目玉事業となるはずだった「地域医療再生計画」が大幅な見直しを迫られている。2009年度から5年間で100億円の事業規模が、4分の1の25億円に圧縮されたためだ。県医療対策課は「規模縮小の中、単純に4分の1に減らさないためどうやって医師を確保するか、関係機関と調整しているところ」とする。見直し案は11月6日までに国に提出する予定だ。
地域医療再生計画は麻生内閣が1次補正で予算化した5カ年事業で、100億円事業と25億円事業の2本立て。県は、100億円事業で医師不足解消を、25億円事業で筑西市民病院と県西総合病院の再生に取り組む計画を立てた。このうち25億円の筑西市民病院などの再生は計画通り実施される見通し。
見直しを迫られている100億円事業は、これまでも県と連携し医師不足解消に協力してきた筑波大学、東京医科大学に、新たに東京医科歯科大学を加え、3大学に県がそれぞれ、小児、周産期、救急医療などの寄付講座を開設。各大学のいわゆる臨床研修病院となっている土浦協同病院、県立中央病院、東京医科大茨城医療センターに研修医の指導医などを派遣し、さらに医師が不足している県北、県央地域などの中核的病院に、研修医などを派遣するなどが主な事業。ほかに医学部への進学支援、勤務医の環境改善なども計画に含まれている。
寄付講座の開設などにより、年間で何人の医師が新たに確保できるのかについて、県は当初から明らかにしていないが、事業規模を単純に4分の1に減らさないためには①県が執行停止分の一部を独自に負担するか②大学に協力を求めるか③計画に含まれている他の事業を後回しにする―などが必要になる。県は「現段階ではこれ以上何とも言えない」とし、頭を痛めている。
10月20日付けの常陽新聞は、一面トップ扱いで国の『地域医療再生基金』の一方的な削減を取り上げました。常陽新聞の論調は、医師確保に重大の支障が起こるとの視点ですが、さらに、日立医療圏にとって産婦人科医療や救急医療にも大きな影響が出るとの視点は残念ながら欠落しています。
そもそも地域医療再生基金の100億円事業は、日立医療圏がその受け皿となる前提で計画が積み上げられてきました。県北地域の深刻な医師不足の解消を目指して、県が筑波大学、東京医科大学、東京医科歯科大学と連携し、寄附講座などの事業を行うことを計画したものです。また、日立医療圏では、日製日立総合病院の産婦人科が分娩の受付を休止しているなど、地元で出産ができない非常事態に対して、産婦人科医師の確保を最優先で行うことなどが計画に盛り込まれました。さらに、ハード面の整備でも日製日立病院に地域救急救命センターを設置するなど、地域の医療に最優先の課題に対して、具体的な取り組みが網羅されたとことです。
しかし、国の補正予算停止を受けて、県の地域医療再生計画自体の見直しが迫られ、対象医療圏から日立医療圏が外され、水戸医療圏に計画主体が変更されました。県北の日立市、高萩市、北茨城市の住民にとっては非常に残念な計画変更です。日製日立意病院の産婦人科医再開も、救急救命センター設置も補正予算凍結のあおりを受け頓挫しました。こうした方針の大変更が、政権の密室の中で断行され、結果だけが地方にたった一枚のファックスで通達されるような仕組みは望ましい形ではないと強く主張します。
(写真は日製日立総合病院に隣接する日立市の土地。地域救急救命センターの用地として確保したものです)