鳩山由紀夫首相と実弟の鳩山邦夫元総務相に、実母からの多額の資金が流れていたことが関係者の話で分かってきました。実母は08年までの5年間に自らの口座から計約30億円を引き出し、うち約9億円を鳩山首相側に提供していました。また、この30億円のうち一部が邦夫氏側にも提供されていたとみられます。
関係者によると、実母は鳩山家の資産管理会社「六幸商会」の管理する自己名義の銀行口座から年平均約6億円、08年までの5年間に計約30億円を引き出して現金化しました。
この約30億円から毎年、鳩山首相側に約1億8000万円、5年間で約9億円を提供していたことが判明しています。この9億円のうち鳩山首相の個人事務所の運営費などに充てられた資金を除き、約1億円は友政懇の政治資金となり、これが偽装献金の原資となっていました。
一方、この30億円の中から、邦夫氏側にも資金が提供されていたとみられ、一部は、邦夫氏の昆虫の標本の費用など、個人的な支出にも使われていました。
邦夫氏は12月8日、東京都内で開いた自身のパーティーで、実母からの資金提供について「兄(鳩山由紀夫首相)と違うのは、『新声会』(資金管理団体)の政治資金収支報告書に虚偽記載という犯罪行為がないことだ」と述べました。実母からの資金供与は、政治資金ではないことを強調。そのうえで、「最大限の贈与税を支払い、私の責任の付け方としたい。親子の貸し借りは、国民の常識では通用しない」と、実態が明らかになれば贈与税を納める考えを示しました。
こうした邦夫氏側の対応に呼応して、9日午前鳩山首相は、贈与税の修正申告をすることについて、「法に照らして適正に処理をしたいと思っている。そのような(修正申告をするという)判断になれば、そうなる」と語り、税法上の問題があれば修正申告などの措置を取る考えを示しました。
しかし、贈与税を支払えばそれで良しという単純な問題でありません。相続税法違反(贈与税の脱税)とされる嫌疑であり、予断は許されないが、「首相の犯罪」にもなりかねない脱法行為は、国政の根幹を揺るがしかねない重大事であることを自覚しなくてはなりません。
それにつけても鳩山首相は、その説明責任をまったく果たしていません。4日に閉会した臨時国会では、党首討論は一度も開かれませんでした。政治とカネに関する集中審議も遂に実現しませんでした。
首相は説明責任に関し「全容解明の暁には、私が国民に説明すべきだと考えている」と述べていますが、国政への影響を考えれば、疑惑を早急に、しかも国民の代表が集まる国会の場で晴らすべきでした。この一つもっても、欠格総理と言わざるを得ません。