4月21日の党首討論で、公明党の山口那津男代表の追求に対して、鳩山由紀夫首相が、実母から提供された多額の資金の使い道に関する資料の国会提出を拒否したことは、政治家としての資質を問われる重大の問題です。
鳩山首相は、3月3日の参院予算委員会では『資料を皆さまに見ていただきたい』と答弁していました。
これが、3月31日の公明党の山口那津男代表との党首討論で「国民の皆さまにどこまでしっかりお示しできるか検証していきたい」と、一歩後退しています。
さらに、4月21日の党首討論に至っては「資料の提出は必要ないもの」と従来の発言を一転させました。一国の首相の発言がブレ、100%反対の方を向くようでは、国会での審議そのものがどのような価値を持つのか、国民の政治不信は高まるばかりです。
こうした鳩山首相の無責任な対応に、マスコミ各社も厳しく批判をしています。
23日付の読売新聞は社説で、「前言はすべて嘘だったのか。首相はただちに調査を開始して、巨額資金の使途を可能な限り国民の前で明らかにすべきだ」と断じています。また、産経新聞は「首相が不誠実な対応を示したのは21日の党首討論だ。公判終了後に関係資料を提出するとしてきたこれまでの国会答弁を翻し『基本的には必要ない』と述べた。勝場被告に、証人喚問に応じるよう促すことも拒否した」と手厳しく報道しました。
首相元秘書有罪「説明する」も嘘だったのか
(読売新聞社説:2010/4/23より抜粋)
鳩山首相は、母親から12億5000万円もの資金提供を受けていた。「知らなかった」と強弁し、昨年末に約6億円の贈与税を納付して幕引きを図ろうとした。
国民からは「発覚しなければ納税もしなかったろう。税金を払うのがばかばかしくなる」という声が上がった。当然の反応だ。
このうちの7億円余の使途も明らかになっていない。首相は「秘書に任せていた。わからない」を繰り返した。それでも、世論の批判や野党の追及に、12月には「検察の解明が終わった段階で、知りうる事実をすべて国民の皆さんに説明したい」と述べた。
先月には「裁判が終わった暁には(検察に)書類の返還を求め、皆様方に見ていただきたい」と具体的な説明方法にも言及した。
しかし一昨日の党首討論では一転、「資料を出す必要はない」と答弁を翻した。これには驚きを通り越して、怒りを覚えた国民も多かったのではないか。
前言はすべて嘘だったのか。首相はただちに調査を開始して、巨額資金の使途を可能な限り国民の前で明らかにすべきだ。
首相の責任逃れの姿勢は、民主党に対する国民のイメージを大きく損ねている。
元秘書有罪―首相の「決着」はまだ先だ
(朝日新聞社説:2010/4/23より抜粋)
首相は、元秘書の裁判が終わり、東京地検に押収されていた資料が返還されれば、弁護士に分析させ、結果を公にすると約束してきた。
それなのに、先の党首討論では「資料を提出する必要はない」と発言を後退させた。
何も私的な使い道まで示せと言っているわけではない。政治や選挙活動にかかわる支出について開示を求めているのだ。疑念を払拭(ふっしょく)するために、一日も早く実情を報告すべきである。
首相元秘書有罪 「母からの金」使途説明を
(毎日新聞社説:2010/4/23より抜粋)
首相は、自らの不起訴処分を受けた昨年12月の会見で、実母からの資金提供について、政治活動や個人活動に使われたと明らかにした。
使途の詳しい調査について問われると「それが国民の胸の中にあるなら、調査の必要があるかもしれない」と述べ、3月の参院予算委員会でも「裁判が終わったら、できる限り使途を説明したい」と答弁した。
だが、21日の党首討論で首相は、使途などの資料の国会提出について「基本的には必要ないのではないか」と消極姿勢に転じてしまった。
世間の常識を超えた額の資金を長年申告しなかった行為が、納税者である国民の不信感を増幅させたのだ。政治活動はもちろんだが、個人活動に使われた分も含め一定の説明責任は今もあるはずだ。首相に再考を求めたい。
元秘書判決 許されぬ首相の逃げ切り
(産経新聞主張:2010/4/23より抜粋)
首相が不誠実な対応を示したのは21日の党首討論だ。公判終了後に関係資料を提出するとしてきたこれまでの国会答弁を翻し「基本的には必要ない」と述べた。勝場被告に、証人喚問に応じるよう促すことも拒否した。
首相は資料提出を拒む理由を、検察捜査を経て決着した事件だからとした。納得できる説明ではない。自らの不起訴処分をもって潔白を主張し、説明責任も果たさないのは、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件での小沢一郎民主党幹事長と同じ論法ではないか。
首相が母親からの資金を全く知らなかったと主張してきたことが、この事件の前提となっている。内容を知らないのに「プライベートな部分」の公表を嫌がるのはなぜか。不透明な資金の流れが残っている懸念があるなら、自ら明らかにすべきである。