公的さい帯血バンクが深刻な財政的危機に見舞われています。
さい帯血とは、母親と新生児を結ぶ、へその緒と胎盤に含まれている血液で、血液をつくる造血幹細胞が成人よりも豊富に含まれている血液です。このため、白血病などの血液疾患に対し、これを移植することで治療に効果があります。提供者となる母親と赤ちゃんに全く危険がないことや、移植の際の拒絶反応が起こりにくいことなどが特徴です。
このさい帯血を冷凍保存して、移植を必要とする患者との仲介を行うのが公的さい帯血バンクの役割です。全国に11箇所存在し、6月2日現在、3万3049本の供給可能なさい帯血を保存、これまでに6328本が患者に移植された実績があります。
公明党は1997年8月から、浜四津敏子参院議員を中心に議員、党員が一丸となり、さい帯血移植への保険適用と公的バンクの設立などを求める署名運動を展開。その結果、98年4月にさい帯血移植の保険適用、99年8月に公的バンクの中核組織「日本さい帯血バンクネットワーク」が設立されました。2000年には検査費の一部に保険適用が実現し、公明党はさい帯血移植の推進に大きく貢献してきました。
全国の公的バンクの財政危機は、その運営の後続的欠陥に由来します。さい帯血を採取してから患者に供給するまでには、1本当たり約200万円の費用(施設費や人件費などを含む)が掛かりますが、バンクに入る診療報酬は管理料としての17万4000円に過ぎません。収入の大半を占める国からの補助金を合わせても損失が出るため、「さい帯血の保存本数に比例して赤字額が増える」現状となってます。
さい帯血バンクの運営者からは、赤字体質のバンクを、寄付金や補助金に依存した“支援される運営”から、医療保険を基盤とする“自立した運営”に変えるためにも「さい帯血を医療材料として保険適用するように取り組んでほしい」との強い要望が出されています。
さい帯血バンクの中でも、特に「宮城さい帯血バンク」は、資金難から平成23年度以降の存続が危ぶまれています。東北地方唯一の「宮城さい帯血バンク」に、保存されている臍帯血は1051本と全国最少。各バンクへの補助金は採取数などに応じて配分されるため、宮城さい帯血バンクへの補助金はここ数年、2千万円前後に止まっています。宮城さい帯血バンクは設立当初の寄付金を切り崩して運営してきましたが、23年度でそれも枯渇する見込みです。
さい帯血バンクの運営を支えるための、抜本的な仕組み作りが強く求められています。
参考:日本さい帯血バンクネットワークのHP
宮城さい帯血バンクが経営危機に
望まれる赤字体質からの根本的脱却
さい帯血バンクNOW(2010/5/15 No53)
3月24日、毎日新聞朝刊が「〈さい帯血バンク〉宮城のNPO法人が経営危機」と報じました。宮城さい帯血バンクは日本さい帯血バンクネットワークに参加する全国に11あるさい帯血バンクの一つですが、この経営危機の背景には、単一のさい帯血バンクが抱える問題ではなく、さい帯血バンク全体に共通する根本的な財政問題が経営危機として顕在化したものです。
宮城さい帯血バンクでは3月23日に行われた臨時総会で、年間1000万円の赤字が続いていることが報告され、このまま事業を継続することの是非が論議されました。そして、今年度の運営の目途は立ったとして、6月の通常総会および9月か10月の臨時総会で事業をどのような形で継続できるのかを含めた最終的な結論を出すことが確認されました。
さい帯血バンク事業の収入は、国の補助金が大部分を占めています。補助金はさい帯血の採取保存数と公開数に応じて決まります。さらに、さい帯血移植が行われたときに医療保険の診療報酬から、さい帯血管理料としての1件あたり17万4000円がさい帯血バンクに支払われます。しかし、これだけではさい帯血バンクを運営することはできません。
こうした状況は、宮城さい帯血バンクだけでなく、そのほかのさい帯血バンクも同様の状況で、日本さい帯血バンクネットワークが一昨年に行った第三者評価にも明記されていることです。しかしながら、何とかここまで事業を行ってきたのは、各さい帯血バンクの経営母体である血液センターや大学病院が赤字を補填して何とか運営しているのが実情です。そういったバックボーンを持たないNPO法人などでの経営は寄付金などに依存しなくてはならず、苦しいのが現状です。
移植に使うさい帯血は現在は無料で提供され、患者負担金はありません。しかし、このままでは経営は成り立たず、社会的批判の多い骨髄バンクのように患者負担金などが発生するおそれがあります。今春の診療報酬改定で骨髄バンク関連の点数は大幅に引き上げられましたが、さい帯血バンク関連は据え置かれました。こうした経営状況を改善するには、国民のための事業として、国庫補助金の見直しなど、根本的な経営の体制などを改革する時期を迎えているということができるでしょう。