場当たり的で議論迷走、破綻したマニフェスト実現に国民負担増
12月16日、政府は2011年度税制改正大綱を閣議決定しました。
法人所得課税は菅直人首相の“鶴の一声”で、国・地方を合わせた法人課税の実効税率5%引き下に。経済活性化により雇用や投資の拡大を目指す姿勢を鮮明にしました。これに対し個人には、主に高所得者を対象にした増税メニューを列挙。地球温暖化対策税(環境税)や、雇用を増やした企業を優遇する雇用促進税制の導入なども盛り込みました。
法人課税では、中小企業減税も含めて国税で7000億円超の実質減税となります。一方、個人は所得・資産課税の見直しで5000億円の増税、地方分も含めるとさらに800億円超の負担が増す計算です。
大綱は、法人減税について「減税には代替財源を求める『ペイ・アズ・ユー・ゴー原則』との関係では財源確保は十分でないが、思い切った引き下げ措置を講ずる」とし、財源不足で見切り発車したことを認めています。無責任きわまりない内容となっています。
現行40.69%の法人課税の実効税率は35.64%になります。国税の法人税(現行30%)の減税は12年ぶりで、4.5%下げて25.5%にします。一方、給与所得控除は年収1500万円超で頭打ちにするほか、相続税の最高税率(現行50%)は55%に上げます。
- 法人課税は国税で7000億円超の実質減税
- 個人課税は5800億円超の増税
- 財源確保は十分ではないが、国・地方合わせた法人課税の実効税率を5%引き下げ
- 地球温暖化対策税を11年10月導入
- 所得税は成年扶養控除と給与所得控除を縮小
- 相続税は基礎控除を縮小、最高税率を55%に引き上げ
- 配当や譲渡益の課税を軽減する「証券優遇税制」を2年延長
- 子ども手当財源に検討した配偶者控除の廃止は見送り
今回の税制改正は、税制の抜本改革に向けた明確な理念や全体像がないままに、場当たり的な(民主党マニフェスト実現のための)財源探しに終始した内容になっています。また、民主党マニフェストの破たんが税制面からも明らかになりました。
理念なき税制改正ということでは、法人税減税をめぐる議論で、成長戦略に基づく(法人税減税の)明確な位置付けがないまま、(減税分の)財源探しに終始し、議論が迷走しました。場当たり的で財源探しに終始したという点については、本来、成年扶養控除や給与所得控除、相続税の見直しは、税制の抜本改革の一環として議論すべきところだ。だが、議論は子ども手当や法人税減税の財源探しに終始しました。
マニフェストの破たんだが、10年度税制改正でも、マニフェストになかった住民税の年少扶養控除(の廃止)や、16~18歳の特定扶養控除の縮小が盛り込まれました。今回の11年度税制改正では、子ども手当の財源として、マニフェストにうたっていた配偶者控除の縮小・廃止が見送られ、対応がちぐはぐになりました。また、ガソリン税の暫定税率は、マニフェストに掲げた「廃止」どころか、そのまま「維持」されています。
税制大綱はまとまりましたが、ねじれ国会の中でこうした欠陥税制が認められるのか、大きな疑問が残ります。
(写真は、税制改正大綱の影響について説明するテレビ東京の画面)