脳卒中学会が警告、高血圧増加で発症の危険高まる
東日本大震災の被災地で、「脳卒中」が多発する危険性が高まっているとの警告が、医療関係者から出されています。
8月4日、日本脳卒中学会(理事長=小川彰・岩手医科大学学長)は東北地方で高血圧の人が増えていることから、脳卒中の発症が「近々圧倒的に増加する」危険があるとして、政府に速やかな「被災者の生活・健康環境の改善」と「強力で有効な脳卒中予防体制の整備」を求める声明を発表し、首相官邸に提出しました。
大震災の発生から5カ月が経過しようとしているが、被災者の生活・健康環境は改善されているとは言い難いものがあります。
政府は脳卒中の発症を防ぐために、被災者の環境改善や予防体制の構築を急ぐべきです。
岩手医科大が震災後の3月から6月に行った調査によれば、岩手県沿岸部の避難所などで生活する1400人余りの40歳以上の住民のうち、約6割が高血圧だったといわれています。原因は、避難所生活でカップ麺など塩分の多い非常食中心の食事を強いられていることや、運動不足、ストレスなどが指摘されています。
血圧を下げる薬を飲んでも効果が表れない被災者もいるとされ、事態は深刻です。
公明党の渡辺孝男参院議員が、8月5日の参院決算委員会で、この声明を取り上げ、被災地での脳卒中対策の強化を促しました。細川厚生労働相は「脳卒中対策にしっかりと力を入れていきたい」と答弁しましたが、具体的な対応策を早急に実施する必要があります。
脳卒中は、わが国の死因の第3位で、介護が必要になる原因としては第1位です。発症すれば何らかの後遺症が残ることが多い疾病です。
それだけに予防と早期治療が重要です。血管が詰まる脳梗塞に対しては、血の塊(血栓)を溶かすt―PA療法という効果の高い治療法もあります。
脳卒中対策では、まず予防、そして専門的な治療ができる医療機関の拡充、救急搬送体制の整備、リハビリや介護など、切れ目のない対策が必要です。こうした取り組みを促進させる「脳卒中対策基本法」(仮称)も早期に制定すべきです。
さらに、被災地に関しては圧倒的に不足している医師や看護師、保健師などを、優先的に派遣する制度を充実させ、脳卒中対策や放射線被曝対策、そして精神的な病への対策などを重点的に行う必要があります。
公債特例法の成立が確実になった今、国会は、被災地の住民の健康面での対策を、全面的に見直し強化するべきです。