8月31日、国土交通省は、東日本大震災により発生した液状化被害の実態調査の結果を公表しました。これによると、関東地方1都6県の96市区町村で液状化現象が発生していたことが分かりました。液状化について、国が実地調査した結果がまとめられたのはこの調査が初めてです。
液状化が発生したのは、茨城県36市町村、千葉県25市町、東京都11区などで、宅地や河川堤防、道路などが被害を受けました。特に東京湾岸部や茨城県や千葉県の利根川下流域など、埋め立て地であったり、元々は川や湿地だった地域は多くの発生が確認されました。 また、東京湾岸部を分析したところ、戦後に造られた埋め立て地の方が、江戸・明治期の埋め立て地よりも液状化を起こしやすい傾向にあることなどが判明しました。
東日本大震災で液状化被害が確認された市町村
都道府県 | 市区町村名 | 市区町村数 |
茨城県 | 水戸市、日立市、土浦市、古河市、石岡市、結城市、龍ヶ崎市、下妻市、常総市、常陸太田市、北茨城市、取手市、つくば市、ひたちなか市、鹿嶋市、潮来市、守谷市、那珂市、筑西市、坂東市稲敷市、かすみがうら市、神栖市、行方市、鉾田市、つくばみらい市、茨城町、大洗町、東海村、美浦村、阿見町、河内町、八千代町、五霞町、境町、利根町 | 36 |
栃木県 | 栃木市、真岡市、大田原市 | 3 |
群馬県 | 館林市、板倉町、邑楽町 | 3 |
埼玉県 | さいたま市、熊谷市、川口市、行田市、加須市、春日部市、羽生市越谷市、戸田市、鳩ヶ谷市、和光市、久喜市、八潮市、幸手市、吉川市、宮代町 | 16 |
千葉県 | 千葉市、銚子市、市川市、船橋市、木更津市、松戸市、野田市、成田市、東金市、旭市、習志野市、柏市、八千代市、我孫子市浦安市、袖ヶ浦市、印西市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、栄町、神崎町、東庄町、九十九里町 | 25 |
東京都 | 中央区、港区、墨田区、江東区、品川区、大田区、北区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区 | 11 |
神奈川県 | 横浜市、川崎市 | 2 |
総計 | 96 |
茨城県内での傾向については、県北地域については、震源に近く地震動が強いため、被害も大きい傾向があり、近年強い地震動が観測されたことがほとんどなく、液状化履歴があまりない地域と分析しました。また、県南・鹿行地域では、干拓地、旧河道跡、砂利採取跡の埋土で被害が大きく、噴砂量多い。鹿島灘の近辺では余震の方が本震よりも被害が大きかったと分析しています。
戸別地域の調査結果で、茨城県内で一番被害が集中している「潮来市日の出地区」を見てみると、以下のような特徴が記されています。
- 発生面積:大
- 被害程度:大
- 地形は干拓地及び盛土地(それも湖沼、湿地帯に盛土)、昭和6年より干拓を開始し、戦後昭和24年に完成。浪逆土地改良区として水田化。昭和44年に土地区画整理組合が設立され、住宅地化された。
- 過去1987年の千葉県東方沖地震に液状化の履歴あり
- 干拓地の大部分で激しい液状化、但し北西側の一部では被害ない部分ある
- 噴砂量多い
- 地盤は、沈下、傾斜して変形した
- 木造家屋も沈下15cm
調査票には、明治18年の測量図が掲載されており、当時は、霞ヶ浦(西浦)から流れる常陸利根川と北浦から流れる鰐川が合流する外浪逆浦の一部であった場所であることが分かります。昭和初期より干拓され、浪逆土地改良区として水田化されました。その後、昭和44年に土地区画整理事業として住宅地として整備されていきました。
参考:東北地方太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態調査結果について(文部科学省)
遅れる茨城県の液状化住宅への支援
ところで、東日本大震災の発生から半年を迎えようとしていいる現在、茨城県や潮来市などの自治体の支援策の立ち後れが顕著になっています。
国の支援は、被災者生活再建支援法に基づき、全壊と大規模半壊、半壊で住宅を解体する場合に最高300万円を給付します。しかし、液状化被害の多くは、一部損壊に判定されるため、ほとんど支援が受けられません。その上、液状化被害を受けた建物の補修費用は、傾きを直すだけで300万~500万円以上、地盤復旧に500万円以上かかるとされ、被災住宅の改修に手を付けられない住民が大部分です。
一方、液状化被害が大規模で発生した千葉県の浦安市では、市独自の液状化住宅の修繕費として100万円を補充する制度を6月に創設しました。千葉県では、県も100万円の補助制度を設けており、一部損壊の状態でも200万円の補助が自治体から受けられることになります。浦安市の独自支援策は、一戸建て住宅の全壊と大規模半壊のほか、半壊住宅の建て替え、地盤復旧に一律100万円を補助。地盤復旧を伴わない半壊住宅の補修には25万円を補助します。国や県の制度と併用できるため、最大400万円の補助を受けられることになります。浦安市は、東京ディズニーランドなどの固定資産税収入などで、豊かな財政状況で、市の「貯金」にあたる財政調整基金が震災前に約120億円あり、この基金を取り崩して液状化被害の支援を行うことにしています。
茨城県や潮来市の財政状況や震災の被災状況を見ると、地方自治体が独自の財政的支援を行うことは、ほぼ絶望的です。同じ被害を受けながら、住んでいる地域が違うことによって、受けられる支援に格差が生ずることは許されません。国は、震災復興基金などの造成により、液状化被害に手厚い支援を行うべきです。