原発再稼動に関する民主党政権の暴走が止まりません。4月6日、野田総理大臣は、藤村官房長官、枝野経済産業大臣、細野原発事故担当大臣の4閣僚による会議を開き、関西電力大飯原子力発電所の運転再開の前提となる新たな安全基準を決定しました。
この決定を受けて、枝野経済産業大臣は、関西電力に対し、安全対策の工程表を作成するよう指示することにしています。
6日夜のテレビ各局の報道によると、野田総理大臣は「再稼働の安全性についての判断基準案の議論を行いたい。枝野大臣から修正案の報告を受け、さらなる検討を含めて、4大臣として判断基準の結論を得たい」と発言、僅か3日間の余りの議論で、原発の運転再開の前提となる新たな安全基準を決めてしまいました。
新基準には、福島第一原発を襲ったような地震や津波が来ても、全電源喪失という事態を防ぐための対策が取られていることや、ストレステストで一層の取り組みを求められたことなどについて、電力会社が実施計画を示すことなどが盛り込まれています。しかし、これらは全く形式的なもので、ストレステストの内容と原発事業者が提出した机上の計画にめくら判を押すことに他なりません。
この日決定された新基準はポイントは以下の3点です。、
- 地震や津波によってすべての電源が失われても、その後の事故の拡大を防ぐ対策が取られていること。
- 「ストレステスト」の1次評価の結果、福島第一原発を襲ったような地震や津波が来ても原子炉でメルトダウンが起きない対策を国が確認していること。
- さらにストレステストで一層の取り組みが求められた問題や、事故の検証結果から得られた教訓のうち、実施までに長期間かかる30項目の抜本的な対策について、電力会社が今後の実施計画を示すこと。
一読して第2項目や第3項目には全く実態がないことが分かります。2つ目の項目はすでに結果が公表されているストレステスト(第1次評価)そのものです。国の原子力安全・保安院が「福島第一原発を襲ったような地震や津波が来ても対策が取られている」と評価し、原子力安全委員会も一定の評価を示しています。3つ目の項目には、今後4~5年間を掛けて関西電力が免震重要棟のような施設や、ディーゼル発電機を分散して配置すること、フィルター付ベント設備、防潮堤の嵩上げ工事などを行うとしていることが含まれますが、今回の基準では、工程表を示せばよく、長期間かかる対策は事実上、実施の先送りを認める内容となっています。
原子力安全委員会が必要だとしたストレステストの2次評価についても、全く盛り込まれませんでした。
こんな付け焼き刃の新基準で、民主党政権は原発再稼動に一瀉千里に突き進んでいくのでしょうか。この新基準を当てはめれば、ストレステストさえ通過すれば、東海第二発電所もすぐに再稼動できることになってしまいます。ナンセンスとしか言いようがありません。
これを受けて、東海村の村上達也村長は、井手よしひろ県議に対して「何たることでしょう。(4月)3日には結論先延ばしし、4日には(枝野大臣と直接意見交換した)小生に結論を急がないといい、5日には暫定基準を了承し、原発の安全確保、国民の命は二の次でただ再稼動ありきではありませんか。この国には原発を保有する資格なしと、思うばかりです。私は全村避難しなければならないものはノーサンキュウと、改めて思うばかりです」(括弧内の内容は管理者が補足しました)と語りました。
また、橋本昌茨城県知事も、「前々から求められていたのに、なぜ急に今なのか。各自治体できちんとチェックできる時間を取らなかった点は大変疑問。唐突というか付け焼刃な感じ」と批判しています。