9月28日、成年後見制度の普及と啓発を図る市民団体「市民後見人の会ひたち」(代表・薄井五月さん)の設立総会が、日立市シビックセンターで開催されました。
井手よしひろ県議は来賓として挨拶。この日掲載された読売新聞の記事を引用しながら、地域における市民後見のあり方について訴えました。
知的障害者の財産「無断で寄付」 成年後見人の管理「不適切」 宇都宮家裁
読売新聞(2012.08.28)
◆親族らの権限剥奪
栃木県南西部の知的障害者施設で、入所者の成年後見人を務める親族ら約50人に不適切な財産管理があったとして、宇都宮家裁が1人を解任し、他の親族についても財産管理の権限を弁護士に移す措置を取ったことがわかった。施設側に寄付するため、家裁に報告せずに入所者の財産から計約1億5000万円を集めたことが問題視された。ただ、親族に理解を示す声もあり、後見人の裁量の範囲を巡って議論を呼びそうだ。
入所者の保護者会によると、障害者自立支援法が2006年4月に施行されるのを機に、入所者約50人の親族らが05~06年、集団で成年後見制度の利用を家裁に申し立て、後見人に選任された。
問題の資金集めは09年。施設が床暖房などを設置するのに使ってもらおうと、保護者会は入所者1人当たり250万円(計約1億5000万円)を募った。この際、親族の多くは、障害年金などの入所者の財産から拠出したという。
保護者会は、集めた資金から7000万円を施設側に寄付し、エアコンの付け替え費用約1400万円を業者に支払った。また、6300万円を原則的に認められない投資信託の購入に充てたが、家裁には報告していなかった。
今年に入って保護者会から報告を受けた家裁は4~5月、事前相談なく入所者の財産を集めたのは問題だとして、取りまとめ役だった保護者会会長の男性(75)を後見人から解任し、新たに弁護士を後見人に選任。他の親族も財産管理の権限を弁護士約10人に移し、管理状況を調べている。投資信託は精算して入所者に返還される予定だが、元本割れの可能性もある。
一度に約50人もの後見人の不手際が指摘されるのは異例で、解任された男性は取材に、「私が死ねば残される子どものためを思い、施設側への寄付を決めた。家裁に報告しなかったことは反省している」と釈明。施設側は「入所者の財産から寄付されていたとは知らなかった」としている。
社会福祉法人「全日本手をつなぐ育成会」の細川瑞子・中央相談室長の話「子どものためにその財産を使おうとした親の心情はわかる。弁護士に権限を移した結果、ただ蓄えるだけの財産管理になっても意味がない。最も障害者のためになるよう柔軟に支出できる仕組みが必要だ」
◆裁量範囲の拡大 検討を(解説)
家裁が成年後見人の1人を解任した背景には、親族後見人(保佐人、補助人含む)による財産の着服が相次いでいる実態がある。
着服などの不正は今年3月までの1年10か月間で538件、被害額は53億円近くに上り、裁判所は、財産の大半を信託銀行に預ける「後見制度支援信託」を導入するなど不正防止に躍起だ。
ただ、こうした不正は、認知症を患った高齢者の親族が「同居家族の財産は自由に処分できる」などと安易に考えて起こしたケースが多い。これに対し、今回のような知的障害者の後見人は、実の親がほとんどだ。自分の死後を案じて、わが子のために財産を施設側に寄付したり、運用したいと考えたりすることは十分に理解できる。
今回、財産管理の権限を失った後見人の中には「成年後見制度を利用しなければよかった」と話す人もいる。制度の信頼性を高めるためにも、知的障害者のための支出であれば事後報告でも可とするなど、後見人の裁量範囲を広げることや、「親亡き後」に備えて市民後見人などが複数で対応することなどの検討が求められる。