9月27日、環境省は福島第1原発事故によって拡散した放射性物質により汚染され放射性セシウムの濃度が8000Bq/kgをこえる指定廃棄物(ゴミ焼却灰、下水汚泥、農林水産物副産物など)の茨城県内最終処分場候補地を、高萩市上君田地区とすることを発表しました。地元高萩市を中心として、国の一方的な選考に不満と怒りの声が上がっています。なぜ、この地区が指定廃棄物の最終処分場に選ばれたかは、9月27日付けの環境省文書「茨城県における指定廃棄物の最終処分場候補地について」に詳細に説明されています。しかし、この資料はマスコミなどでは余り紹介されておらず、情報の市民への公開が徹底しているとは言えません。そこで、このブログではこの資料を改めて紹介すると共に、県内13箇所が選考過程で高萩市上君田に決まっていったかを検証してみたいと思います。
参考:茨城県における指定廃棄物の最終処分場候補地について
県内候補地には、北茨城市内3箇所、高萩市内3、日立市内2、常陸太田市内4、笠間市内1の計13箇所が選ばれました。最終現地調査は北茨城と高萩が1箇所ずつ行われ、最終的に高萩市上君田が選ばれました。
13箇所の候補地の評価結果の概要は以下の通りです。各評価項目については、現地確認を行い、妥当性を確認しました。その結果、評価点が高く、地形等の条件からみて施設整備が困難となる要因がない候補地a2、b2の2箇所で、現地踏査が行われました。
候補地記号 (市町村) |
評点 | 現 状 |
候補地a1 (北茨城市) |
37 | ・水道水源、公共施設、既存集落、農用地から離れており、社会的条件で高評価。 ・県立公園の特別地区に隣接し、生態系保全上の配慮が必要。 ・候補地が沢により分断されており、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地a2 (北茨城市) |
37 | ・植生自然度9(自然林)の範囲を含み、自然的条件で低評価。 ・水道水源、公共施設、既存集落、農用地から離れており、社会的条件で高評価。 ・県立公園の特別地区に隣接し、生態系保全上の配慮が必要。 ・候補地の東西に林道が通っており、南側は沢地形で施設の立地には向かないが、北側は緩斜面が連続しており、施設整備が可能である。 |
候補地a3 (北茨城市) |
36 | ・植生自然度9(自然林)の範囲を含み、自然的条件で低評価。 ・水道水源、公共施設、既存集落、農用地から離れており、社会的条件で高評価。 ・候補地が沢により分断されており、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地b1 (高萩市) |
28 | ・鳥獣保護区にも該当し地域指定条件で低評価。 ・崖地に近く、自然的条件で低評価。 ・既存集落、農用地から近く、社会的条件で低評価。 ・現地は深い谷となっており、起伏が激しく急で、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地b2 (高萩市) |
38 | ・水道水源、公共施設、既存集落、農用地から離れており、社会的条件で高評価。 ・候補地周辺も含め平坦な地形であり、林道によるアクセス性も良い。 ・河川や崖地から離れており、地形・地質条件は良好である。 ・連続した必要面積分の緩斜面を確保可能である。 |
候補地b3 (高萩市) |
32 | ・崖地に近く、自然的条件で低評価。 ・既存集落、農用地から近く、社会的条件でやや低評価。 ・現地は深い谷となっており、起伏が激しく急で、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地c1 (日立市) |
28 | ・巨樹から近く、自然的条件で低評価。 ・既存集落、農用地から近く、社会的条件で低評価。 ・候補地は山頂の尾根沿いに位置し、北側からのアクセスには民間牧場内を通過する必要がある。 ・南側からのアクセスは神社への登山道となっており、アクセス道路としての利用は困難。 |
候補地c2 (日立市) |
37 | ・農用地から近く、社会的条件でやや低評価。 ・現地は細い尾根状の地形となっており、起伏が激しく急で、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地d1 (常陸太田市) |
34 | ・水道水源、公共施設、既存集落、農用地から離れており、社会的条件で高評価。 ・候補地の北側に沢が入り込み、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地d2 (常陸太田市) |
28 | ・既存集落、農用地から近く、社会的条件で低評価。 ・現地は細い尾根状の地形となっており、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地d3 (常陸太田市) |
28 | ・既存集落、農用地から近く、社会的条件で低評価。 ・候補地内に沢が通っており、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地d4 (常陸太田市) |
35 | ・水道水源、公共施設、既存集落、農用地から離れており、社会的条件で高評価。 ・候補地の南側は急斜面となっており、連続した必要面積分の緩斜面を確保できず、施設整備は困難。 |
候補地m1 (笠間市) |
29 | ・既存集落、農用地から近く、社会的条件で低評価。 ・直近にゴルフ場が位置するほか、集落(直線距離300m)、ため池(車線距離150m) と近接し、地形的に連続しており、候補地として望ましくない。 |
高萩市上君田の評点が38と最高点でした。以下、北茨城市内の2箇所、日立市の1箇所が37点で、それに続きました。
指定廃棄物最終処分の選考にあっては、その透明性と公平性を確保するのが最重要な課題です。今回の決定は一旦白紙撤回し、情報公開を徹底した検討機関で再検討と住民への理解を得るべきと考えます。