日本のがん検診受診率は20~30%にとどまり、欧米の約80%に比べると大幅に低い現状があります。
なぜ、受診率が低いのか、先月、発表された内閣府の「がん対策に関する世論調査」によると、検診を受けない理由として、「受ける時間がない」(47.4%)が最も多く、「がんと分かるのが怖い」(36.2%)、「経済的に負担」(35.4%)と続いています。
しかし、受診率が上がれば早期発見・早期治療につながることは火を見るより明らかです。現在、がんで亡くなる人は年間約35万人。がんの罹患と死亡数の増加は主に高齢化が理由ですが、40代以降で死亡原因の第1位を占めるなど、働き盛り世代にとっても無関係ではありません。国民一人一人の積極的な意識向上と企業側の支援態勢が重要です。
政府が定めた「がん対策推進基本計画」は、検診受診率を50%に引き上げる目標を掲げ、企業が率先して検診の大切さを呼び掛ける「がん検診企業アクション」への協力を進めています。3月31日現在、984企業・団体が賛同し、受診率向上に取り組んでいます。
このうち、受診率を把握している162企業・団体の平均受診率は、73.7%と非常に高くなっています。こうした職場での検診率アップに先進的に取り組む企業は、まだ、一握りにすぎません。まだまだ、がん検診に配慮しない企業や社員の受診率を把握していない企業の方が多いのが実態です。
企業にとって、社員は会社の命運を左右する財産です。人材の健康管理に無関心でいると、貴重な戦力を失う恐れも出てきます。受診時間を就労扱いにするなど、受診しやすい環境づくりも必要です。
一方、公明党が主導した乳がん・子宮頸がん・大腸がんの無料クーポンが受診率押し上げに大きな効果を挙げてきました。今年度は制度導入から5年目で、見直し時期を迎えます。今夏までに厚労省の検討会が、がん検診のあり方の方針をまとめることになっています。検診の費用負担と受診率は密接な関係があるだけに、無料クーポンは是非とも継続すべきです。
受診率を高めるには、他の対策との連携も必要です。例えば、コール・リコール(個別受診勧奨)制度の導入です。無料クーポンなどで検診案内したにもかかわらず受診しない人に、手紙や電話などで、あらためて踏み込んだ案内をする制度です。イギリスでは、この制度の導入で40%だった受診率が80%を上回わります。
また、がん検診自体も今までのやり方が良いのか、不断の見直しが必要です。例えば、胃がん検診は永年にわたってレントゲン、バリウム検診が続けられています。しかし、この方式は被験者への負担が重く、早期がんの発見率は余りたくないと言われています。そこで、ピロリ菌ABCリスク検査を導入し、リスクの高い被験者を内視鏡で直接検査する方式を導入すれば、費用負担、身体的な負担も大きく改善されます。こうした思いきった施策の転換が迫られています。
2人に1人は、がんになる時代です。検診の正しい知識や普及啓発に、検診方法の見直しなど、官民一体で取り組みを強化すべきです。