都市部の若者を過疎地の自治体が募集し、地域活動に従事してもらう「地域おこし協力隊」制度が全国に広がっています。隊員数は年々増え、スタートした2009年度は全国で89人でしたが、昨年度は約1000人にまで拡大しました。安倍晋三首相は今年6月、この制度の状況を視察した島根県で、隊員数を今後3年間で3000人に増やす方針を打ち出している。
応募者は地方での暮らしや地域貢献を望む人たちが多くいます。地方では少子高齢化の進行や人口流出が深刻です。若者の定住促進策の有効な手だての一つとして、受け入れる自治体をもっと増やしていくべきです。
協力隊は他地域に暮らす人材を活用した地域活性化策として、総務省が創設しました。募集は過疎や離島地域などの自治体が行い、採用されたメンバーは住民票を移して移住地に住みます。任期は最長3年で、自治体には募集に必要な経費のほか、隊員1人につき最大400万円の財政支援があります。
活動内容は地域によって異なりますが、伝統芸能や祭りの復活、地域ブランドの開発・販売、空き店舗を活用した商店街の活性化、耕作放棄地の再生など多岐にわたっています。
総務省が今年公表したアンケート結果によると、昨年6月末までに任期を終えた隊員のうち約6割が、活動していた市町村か近隣地域に定住しています。任期後も地元に残ってもらうことは、制度の最終目的でもあるので、この動きをおおいに歓迎したいと思います。
一方で、受け入れ地域に定住しない人の中には、活動経験を生かして他地域の市町村で活躍する人もいますが、移住地になじめないまま離れる人もいるようです。自治体は地元の魅力を十分に伝え、定住に結び付けていく努力を重ねるべきです。また、協力隊の提案を地元のコミュニティーや行政もしっかり対応する受け皿を整備すべきです。
例えば、定住支援のコーディネーター(調整役)の配置や、隊員からの生活上の相談などに応じる「ワンストップ窓口」の設置を検討しる必要があります。また、周辺自治体とも連携して、隊員同士が問題意識や今後の進路について情報交換したり、話し合える場を設けてもどうでしょうか。
自治体は、隊員が無理なく地域に溶け込み、定住の流れが加速するよう、その絶対数を増やすとともに、受け入れ態勢を強化していくべきです。
地域に爽やかな風:常陸太田市で活躍する地域おこし協力隊
茨城県では、常陸太田市で活躍した地域おこし協力隊「ルリエ(Relier)」の活動が有名です。茨城県内では初めての取り組みとして導入されました。
ルリエの中心者は、長島由佳さん。長島さんは、2011年4月に活動開始。活動の中心となった里美地区は、豊富な農産物ともおいしい湧き水に恵まれ、”日本の原風景”ともいえそうな自然豊かな里山です。そこで出会った4人の女性メンバーと、フランス語で「つなぐ」「結ぶ」を意味する「ルリエ」というチームを組みました。
ルリエの主な活動は、1.地域資源の発掘・見直し(よそ者目線からみた地域の資源探し)。2.情報発信(webページやブログ、ニュースレターで地域の情報を発信)。3.特産品開発、販路開拓・拡大(地域で見つけた、発掘した特産品をより多くの人に手に取ってもらえるようにアイデアを出す)4.交流人口拡大(イベントを行ったり、市内外の人の交流を増やす)。5.地域経済活性化(地域内での経済活動がもっと活発になる仕組みづくりを行う)。6.地域コミュニティ協力・再結成・結成(新しい仲間作りや今まであるグループの再編を行う)。など、多岐にわたっています。
例えば、地元の“食”に注目。この地元料理に、都会の新しい感覚を加味させて、地元のデザイナーとコラボし制作された卓上レシピや里美自慢の水を使用し商品化した里美珈琲を提案しました。地元の酪農家さんや職人さんに協力してもらい、里美地区を学びのフィールドにするインターンシッププログラムをつくったり、ご近所に住む人の夢を応援するためのコミュニケーションの場「one day cafe 里美の休日」をオープンするなど、さまざまな活動に取り組みました。
そして完成させたのが、里美の食の粋を集めた「里美御前」です。これを目玉に期間限定のレストランをオープンしたところ、県内多くの方が足を運んでくれました。
地域おこし協力隊「ルリエ(Relier)」は、地域に若い女性の風を吹き込んでくれています。
参考:―茨城県常陸太田市魅力発信WEB―つなぎあい