9月21日に開催された第10回公明党全国大会を巡って、読売新聞と毎日新聞の社説を読み比べてみたいと思います。
公明党は、党綱領に中道主義を明記した唯一の政党です。「中道」とは、政治理念としては「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」であり、その中には、反戦平和、社会的公正といった意味が込められています。そして政治路線としては、政治における“座標軸”の役割を果たすことをめざし、具体的には(1)政治の左右への揺れや偏ぱを正し、政治の安定に寄与する(2)不毛な対立を避け、合意形成に貢献する(3)時代の変化に応じた新しい政策提言を行う―の三つの役割を果たすことにあります。
今回の集団的自衛権を回る自民党との協議、新しい安全保障法制整備に関する閣議決定に至る過程で示した公明党の対応は、この政治路線の今日的かつ現実的な対応でした。
そのキーワードは「合意形成」と政治の新しい進路を切り開くことです。国家や国民にとって何がプラスになるのか。世界の中の日本としてどう貢献していくべきか。そのために、いかにして幅広い国民合意を形成していくのか。ポピュリズム(大衆迎合)を排しつつ、「合意形成の政治」の推進に向けて、不断に自己改革・錬磨に努める。そこにこそ新たな時代の新たな衆望を担う中道政治の前進があることを、全国大会では新たに強調しました。
その意味で、22日付の読売新聞は「公明党大会 政権の合意形成へ役割果たせ」との社説は、こうした公明党の「中道主義政党」としての本質を、的確に評価したものと言えます。
公明党大会 政権の合意形成へ役割果たせ
読売新聞社説(2014/9/22)
政治の安定と重要政策の遂行に向けて、公明党は連立政権の合意形成に引き続き努力し、役割を果たしてもらいたい。
公明党が第10回全国大会を開き、山口代表の4選と新役員人事を正式決定した。井上義久幹事長、石井啓一政調会長は留任し、国会対策委員長には大口善徳国対委員長代理が昇格した。
山口代表はあいさつで、安倍改造内閣について「連立与党としてしっかり支え、国民のための政策実現に不退転の決意で邁進まいしんする」と語った。来賓の安倍首相も、「与党と協力して結果を出したい」と述べ、結束を呼びかけた。
山口、井上両氏は2009年9月の就任以来、3年余の野党時代を含め、自民党との連携・協力関係を維持してきた。
小渕内閣で自公両党が連立してから、来月で15年を迎える。主張が異なる政策についても、双方が協議を重ねて歩み寄り、合意を形成してきたことは、政治の安定に貢献したと評価できる。
安倍政権は今、経済再生、地方創生、震災復興、社会保障制度改革など、多くの政策課題に直面している。これらを着実に前進させるため、公明党には、一段と建設的な取り組みが求められる。
安全保障政策でも、安倍政権は今年4月、武器輸出3原則に代わる防衛装備移転3原則を、7月には集団的自衛権の行使を限定容認する政府見解を決定した。いずれも歴史的な意義を持つものだ。
50年前の結党以来、「平和の党」を標榜する公明党には、特に集団的自衛権の憲法解釈変更について慎重・反対論が強かった。
だが、山口執行部は、地方組織代表を交えた会議を何度も開き、粘り強く説明と説得を繰り返して党内の意見をまとめた。政権与党として責任ある対応だった。
党大会での井上幹事長報告は、公明党の中道路線の「今日的意義」として「政治の左右への揺れや偏りを正す」「時代の変化に応じた新しい政策提言」などを挙げた。集団的自衛権をめぐる対応はその実例だとも指摘した。
今後は、新政府見解に基づく安全保障法制の整備が課題となる。日米同盟の抑止力を強化し、自衛隊が実効性ある活動をできる法制となるよう、公明党には、一層の前向きな対応を期待したい。
山口代表は、消費税率を10%に引き上げる際の軽減税率の導入を目指す方針を改めて強調した。
公明党は与党内で、軽減税率の具体的な制度設計の議論を主導することが重要である。
一方、毎日新聞の社説「公明党大会 守るべき一線を示せ」は、非常に表面的な議論に終始し、大新聞の社説としては薄っぺらなものです。第一、党全国大会の開催される前に書かれた社説は、事実を慎重に分析し、真剣に検討して書かれた社説とは言いがたいものです。
特に結論部分には大いに異論を挟まざるを得ません。公明党は一部の国会議員によって支えられている一部の政党とは性格が全く違います。全国3000名の地方議員と40万人の党員に支えられたネットワーク政党であることを、毎日新聞は理解していません。この一点の正しい理解なしに公明党を語ることはできないのです。
公明党大会 守るべき一線を示せ
毎日新聞社説(2014/9/21)
(前半略)だが、連立政権で公明党が主体性を発揮する道は今後も険しいと言わざるを得ない。改憲に基本的に慎重で中韓両国との協調を重視し、経済弱者政策に比重を置く党の路線はもともと首相と落差がある。加えて国会で自民党の1強構図が強まっているのは、第三極勢など野党も課題別に自民党に同調する傾向が加速しているためだ。「連立ありき」の対応では「公明党は自民党にどこまでもついていく『げたの雪』」との批判に対抗できないのではないか。
憲法、安全保障、経済対策など譲れない政策目標、守るべき一線を明確にしてほしい。集団的自衛権行使も「極めて限定的」と強調するのであれば、それを安保法制整備で実証できるかが問われる。無原則に政策まで自民党と一体化するのでは支持団体の創価学会の理解も得られまい。
気になるのは、近年の公明党議員は法曹、官界出身者ら政策通の議員が多い一方で、線の細さも感じられることだ。綱領で掲げる生命、生活、生存を柱とする人間主義、中道主義の中身は何か。与党なら具体的成果として示さねばならない。