障害年金の申請方法が、10月1日から大きく変わりました。
永年の課題であった「初診日の確認方法」が改善されたのです。初診日とは、障害の原因となった病気やけがの診療を受けた日のことです。傷病による障害年金の申請者はこれまで、受給要件を満たしているか確認するため、初診日を明らかにできる医療機関の診断書などを、申請書に添付する必要がありました。
これが10月1日からは、初診日を証明する資料を添付しなくても、初診日を合理的に推定できる参考資料があれば、申請者本人が申し立てた日を初診日とすることが認められるように改善されのです。
この参考資料には、二つのケースが考えられます。
これまでも20歳前に初診日がある人の障害年金では認められていました。20歳以降に初診日がある人の障害年金についても、まず家族以外の隣人や友人、民生委員などの第三者が証明する資料があること。第三者証明と合わせて、診察券や入院記録など初診日の客観性があると認められる資料がある場合は、初診日を証明する資料がなくても、これらを添えれば認められることになりました。
もう一つは、初診日が一定期間内にあると確認され、この期間内に継続して障害年金を受け取るための保険料(厚生年金や国民年金)の納付要件を満たしていれば、本人の申し立てた日が初診日とされます。
慢性疾患や精神疾患の場合、初診日から10年以上経ってから障害が出てくるケースがあります。しかし、病院のカルテの保管期間は5年であるため、障害年金の申請者が最も古いカルテに基づいて医師の証明を得ようとしても困難な場合がありました。病院が廃院してしまった場合は、証明はほとんど不可能です。このため、初診日を証明できず、給付申請を受け付けられなかったとの相談をたくさんいただいています。
今年3月の参議院予算委員会で、公明党の荒木清寛議員は、古い書類を出さないと認定しない現状を「不当だ」として、扱いの改善を政府に強く求めました。山本香苗厚生労働副大臣(当時)も省内で改善に向けて奮闘しました。
その結果、医療機関の証明書がなくても、一定の条件を満たせば、本人が申し立てた日を初診日として認めるよう申請要件が改善されることとなりました。
障害年金の認定率格差の早期是正を
また、障害年金は、申請に対する支給・不支給の判定結果に都道府県間でばらつきがあることも問題視されています。
年金を受給する権利は本来、どこに住んでいても平等に保障されなければならないが、地域によっては4人に1人が申請を退けられている現状があります。受給できるはずの障害者が多数、対象外になっている可能性もあります。
審査に当たる医師(認定医)に個人差があり、精神、知的障害の程度で判断が分かれやすいことや、年金機構の出先機関ごとの取り扱いの不統一が原因とみられています。
今年1月に、平成22年度から平成24年度までの3年分の判定結果調査によると、申請したけれども認められなかった「不支給割合」は、最も高い大分県は24.4%、最も低い栃木県は4.0%であり、6倍以上の地域差が認められました。
茨城県は、23.2%で不支給割合は全国で2番目の高さでした。隣接する栃木県と比べて5.8倍もの差が見られました。
特に、精神障害・知的障害での判定のバラツキが目立つ結果となっています。不支給割合が低い10県は、「日常生活能力の程度」が、“2”と評価 されている場合は、5.3%が等級非該当であり、 “3”と評価されている場合は、2.2%が等級非該当でした。一方、不支給割合が高い10県は、“2”と評価されている場合は70.8%が等級非該当であり、“3”と評価されている場合は、36.2%が等級非該当でした。つまり、不支給割合が低い10県における精神障害・知的障害 の年金支給状況を見ると、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」が“2”相当であることが障害基礎年金を支給する目安(障害基礎年金2級相当)となっているのに対して、不支給割合が高い10県にお いては、「日常生活能力の程度」が概ね“3”相当が障害基礎年金を支給する目安となっていました。
こうした評価の見直しも喫緊の課題であり、具体的な対応が望まれます。
障害年金とは:
公的年金の加入制度に応じて障害基礎年金と障害厚生年金、障害共済年金があり、受給には障害の程度や保険料納付期間など要件を満たす必要がある。市区町村役場や年金事務所に申請する。障害基礎年金は20歳以上の人が対象で、65歳以降に負った障害では支給されない。未成年の時から障害がある人は20歳から受け取れる。等級は最重度の1級から3級に分かれ、障害厚生年金は3級でも受けられるが、障害基礎年金は1、2級でないと受けられない。支給額は障害基礎年金の1級で月8万500円、2級で月6万4400円。受給者は2013年3月現在、障害年金全体で約190万人。