3月24日、東海村議会は本会議を開き、東海第2原発の再稼働に関わる安全審査を早急に行うよう原子力規制委員会などに求める意見書を賛成多数で可決しました。
2014年5月、日本原子力発電(原電)は、原子力規制委員会に対する東海第2原発再稼働のための新規制基準適合審査の申請書を提出しました。それから2年近くになる現在、規制委員会の議論は余り進んでいません。規制委員会の議論の中心は、九州電力川内1、2号機や関西電力高浜3、4号機など、新規制基準施行直後に申請が相次いだ加圧水型の審査を優先しているためです。新基準ではフィルター付きベント設置などの対応が求められる沸騰水型の審査は、東海第2原発を含めて議論が遅れています。
東海第2原発は2018年11月に稼動から40年の節目を迎えます。原則40年で廃炉という国の新しい方針でいけば、たとえ再稼働できたとしても、その期間は非常に限定的です。規制委員会が安全審査に時間を掛ければ、時間切れで廃炉という事態も想定されます。
原発に関係する事業者を中心に、東海村内には東海第2原発の早期の再稼働、20年の稼動延長を求める声も少なくありません。3月24日付けの毎日新聞には、次のような記事が掲載されました。
がんばっペン:安全審査を巡る請願/茨城
2016年3月24日付け毎日新聞茨城版
「今後の村の経済を考えたとき、これまで通り原子力に依存すべきなのか、距離を置いて新たな道を歩むべきなのか」――。18日の村議会原子力問題調査特別委員会で、東海村の照沼政直・商工会長は苦悩を打ち明けた。
東海村は日本初の商業用原発である東海原発(廃炉作業中)が立地するなど、日本の「原子力発祥の地」。村の雇用も予算もそれぞれ3分の1を原子力産業から得ており、原子力と共存してきた。
しかし、東京電力福島第1原発事故で状況は一変。東海第2は稼働せず、タクシー業や宿泊業などを中心に客は事故前の3~6割にとどまるという。
何より不安なのは原発との距離感が定まらないことだ。原発依存を続けるなら、再稼働を待つ覚悟が必要だし、距離を置くなら事業内容の転換を迫られることがあるかもしれない。東海第2の安全審査を早急に進めるよう国に訴える請願を、照沼会長が村議会に提出したのはこうした事情からだ。その請願は22日、特別委員会で採択された。
主張は理解できる。だが、最も優先すべきは安全だ。特に東海第2は事故を起こした福島第1と同じ型。慎重に慎重を重ねて審査を進める必要があると思う。
3月23日、この商工会の請願は、原子力特別委員会で賛成多数で認められました。しかし、委員会採決より丸1日経たなければ本会議で採決しないという議会運営上の慣例によって、3月議会本会議での採択は見送られました。
これに対して、1月の村議選で過半数を確保している原発推進派議員は、急きょ24日の本会議に「早期審査を求める意見書」を提出しました。採決の結果は、賛成12、反対5、退席2で賛成多数で採択されました。公明党の2村議は退席しました。
意見書は村議会最大会派「新政とうかい」の大内則夫村議が、同じ会派の2人の賛成で提出。「審査の遅れにより、東海第2原発に直接的・間接的に関わりを持つ多くの業種で影響が出ており、経営的に大変厳しい状況にある」と述べています。
この意見書に対して4人が反対討論。「請願の審査が始まる前に意見書が作られたのは原子力特別委員会を軽視している」「法律で高い独立が保障されている規制委員会に一村の議会が圧力をかけるのはいかがか」「論理が乱暴で全国に恥をさらすことになる」などと主張しました。
これに対して、大内村議は「請願と意見書は別物。請願には意見書がなかったので用意した」「再稼働を求めているのではなく、村の方向性を議論したり、商工業者の窮状を推し量って現状を訴えた」などと答えました。
採決を退席した公明党の岡崎悟村議は、「経済的な理由で請願を提出したのは理解できるが、審査の進捗を静かに見守るべきだ」とマスコミの取材に答えました。
東海村議会は100万県民の生命を守る責任がある!
今回の東海村議会の意見書採択は、拙速な議論に終始し、大変残念な結果になっていまいました。原発の再稼働という重要な問題に、専門的見地から高い独自性を持って審議する原子力規制委員会の審議に、単に経済的見地のみから早期結論を促すという意見書は、私は全く理解できません。まして、本来であれば、商工会の請願の採決を経て、意見書を審議するというのが地方議会の常識的な判断のはずです。請願審議を飛び越して、意見書を提出するというのは前代未聞の椿事(珍事)であると言わざるを得ません。
東海村議会には一部住民の利益のみならず、村民全体の利益を考えた判断が望まれます。まして、東海第2原発の30キロ圏には100万人近くの住民がいることを深く理解すべきです。