今回の熊本地震災害については、仮設住宅に入居する際の条件が、国からの指示で正式に緩和されています。
今までは、「災害救助法」の解釈に従って、自宅の被害の程度が、「り災証明書」の判定区分でいう「全壊」または「大規模半壊」の場合に限られていました。(現実には市町村の判断で半壊や一部損壊でも、被災した住居に住み続けられない場合は、仮設住宅への入居を認めていました)
しかし、今回、内閣府(防災担当)は、「半壊」であっても「住み続けることが困難」で、「解体や撤去せざるをえない場合」には入居対象とすることを明確に熊本県に対して文書を発信しました。
もともと「大規模半壊」と「半壊」の区別は、非常に微妙なものがあります。判断がとても難しい場合も多くあります。しかし、そのどちらになるかによって、「天国」と「地獄」ほどに支援の大きさに差が生じてしまいます。
そして、今回の熊本地震の特徴として、建物そのものは、それほど損傷していないけれども、「地盤が沈下して傾く」など「住み続けることが困難」な事例が多数存在することがあります。
その場合、「住み続けることが困難」であるという状況が、全壊や大規模半壊と判定された場合と同じなのであれば、「半壊」であっても、「住むところを確保」する必要性も同じだという判断になり、仮設住宅に住むことができるという判断に至りました。
そもそも、「り災証明書」にいう、全壊、大規模半壊、半壊の区別は、「このまま家に住み続けられるかどうか」という目的で判定されたものではないのです。
「住むところがない」被災者のために「仮設住宅」は建設されるのですから、仮設住宅の入居条件も、「住むところがあるかないか」で決めるべきであって、「り災証明書」の区分で決めてきたこと自体が間違っていたとも言えます。
今回、被災者の実情に合わせて、「災害救助法」を弾力的に解釈運用した点は、高く評価されるべきです。
しかし、このせっかくの国の判断を無にしてしまうような自治体の運用の状況が明らかになっています。
最大の被災者を抱える熊本市では、半壊世帯に対して「自宅の解体・撤去を完了すること」を仮設住宅の入居条件としていることです。
熊本市は、半壊世帯が仮設住宅への入居を申請する際、被災住宅の「解体・撤去の誓約書」を求めています。
そもそも、全壊や大規模半壊の場合であっても、「自宅の解体・撤去」は仮設住宅の入居条件とはなっていません。解体撤去をせずとも、修理が完了するまで仮設住宅に入居することは認められるはずです。
「仮設住宅に入りたければ、自宅を解体・撤去してからにしろ!」と言っているようなものです。家屋の解体・撤去の流れが助長されることは、コミュニティの分断のおそれ等、復興の過程に大きなキズを残すことになるかもしれないという心配があります。
益城町のように、解体・撤去を町の予算でお行う場合は別として、多額の費用がかさむ解体・撤去を仮説入居の条件とすることは、明らかに間違いです。熊本市にこの誓約書の撤回を強く求めるものです。
参考:内閣府の半壊世帯でも仮設住宅に入居できるとの通達
http://www.ancl.biz/pdf/280524naikakufu-kasetsu.PDF
参考:熊本市の撤去・解体誓約書
https://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=12938&sub_id=1&flid=85209