4月以降、風疹の流行の中心となっている30代から50代の男性について予防接種が原則無料となり、厚生労働省は、この世代の人気漫画の主人公を通じて接種を呼びかけています。
厚労省は、この世代に人気の漫画で、昭和60年に「週刊少年ジャンプ」で連載が開始された「シティーハンター」の主人公・冴羽リョウが接種を受けるよう呼びかるポスターを作成しました。
風疹は、妊婦が感染すると赤ちゃんに障害が出るおそれがあり、感染拡大を防ぐために男性も十分な免疫を持つことが必要ですが、この世代の男性は、子どもの頃にワクチンの定期接種の機会がなく、流行の中心となっています。
このため、厚生労働省は、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性を対象に、予防接種をことしから約3年間にわたって原則無料で行います。
年齢に応じて段階的に市町村から送られるクーポン券を医療機関に持参すれば、免疫の検査や、免疫が不十分だった場合の予防接種を原則無料で受けられます。
■39~56歳男性に4月以降、順次クーポン配布/公明が推進
流行が続く風疹の拡大防止に向け、免疫力が低い39~56歳の男性を対象に、今年の4月以降、抗体検査と予防接種が無料で実施されます。これは公明党の強い主張により、対策費を盛り込んだ2018年度第2次補正予算が今月、国会で成立したため実現の運びとなりました。
■「拡大防止に追い風」/医療関係者は無料化を歓迎
「働き盛りの世代への無料のワクチン接種は、風疹の拡大防止へ大きな追い風になる」。こう語るのは、東京都墨田区にある「ファミリークリニック ひきふね」の梅舟仰胤院長です。風疹感染の影響を最も受けやすい妊婦のおなかの赤ちゃんを守る観点からも、春から始まる無料化の取り組みを歓迎しています。
このクリニックでは風疹が流行した昨年の夏以降、抗体検査や予防接種を受けようと来院するカップルが例年の倍近く増えました。その多くが、妊娠を希望する女性とその配偶者や同居者を対象に区が実施する助成制度を活用しています。梅舟院長は「行政の支援が受診の強い動機付けになっている」と話します。
■自治体は準備に着手
昨年は、東京都をはじめ首都圏を中心に風疹が流行、直近10年で2番目に多い2917人が感染しました。今年に入ってからも、すでに全国で367人の患者が確認されており、その勢いはとどまりません。
1万4344人が感染した2013年の大流行では、その前年から患者数が増加するという予兆があっただけに警戒が必要です。
今年の4月以降に実施する国の対策は、現在39~56歳(1962年4月2日~79年4月1日生まれ)の男性を対象に、21年度末までの3年間、原則無料で抗体検査と予防接種を実施します。19年度はまず今回の流行で感染の目立つ39~46歳の男性を対象とし、その後、順次行っていきます。医療機関の混乱やワクチン不足を避ける狙いもあります。
対象となる男性は、子どもの頃に予防接種を受ける機会がなく、風疹の抗体保有率が他の世代よりも10ポイント以上低い79.6%。厚生労働省は、21年度末までに90%以上への引き上げをめざします。
対象者には4月以降、居住する自治体から、抗体検査と予防接種を無料で受けられるクーポン(受診券)が届きます。
現在、多くの自治体が、対象者の絞り込みやクーポン作成に向けた準備を、すでに始めています。
■厚労省が職場健診での検査要請
無料化の対象となる男性の多くは、平日の日中は会社などで働いています。このため医療機関に足を運ぶ時間がない場合もあります。
厚労省は、こうした働き盛り世代を念頭に、休日・夜間の医療機関や職場で実施する定期健康診断、居住する市区町村以外でも抗体検査と予防接種が受けられるよう医師会や経営者団体に協力を要請するなど、体制整備を急いでいます。
特に、企業が行う健診は社員の受診率が8割以上と高いことから、働き掛けを強めています。
自治体や企業を中心に年間約90万人の健康診断を手掛ける全日本労働福祉協会は、昨年11月から健診項目の一つに風疹抗体検査を加え、顧客の要望に応じて実施しています。風疹の抗体検査は血液を採取して行います。全日本労働福祉協会「旗の台健診センター」の堀田芳郎事務局長は、「血中脂質など他の健診項目と一緒に検査できるので、体への負担はない。現在、企業からの問い合わせが急増している」と語っています。
■予防接種までの流れ
風疹ワクチンの無料接種を受けるまでの大まかな流れは次の通りです。
①4月以降、居住地の自治体からクーポンが届く。19年度は39~46歳の男性にクーポンが届く。ただし、47~56歳でも市区町村に連絡すればクーポンが発行される。
②クーポンを持参し、職場での健康診断や近隣の病院、住民を対象にした自治体の特定健診などで風疹抗体検査を受ける。検査方法は採血のみ。
③抗体検査の結果は3日から5日で分かり、郵送または医師との対面で通知される。
④「抗体あり」の場合は、予防接種の必要なし。
❹「抗体なし」の場合は、感染のリスクがある。抗体検査結果とクーポンを持参し、自宅や職場近くの医療機関で予防接種を受ける。