自由な時間が増える夏休みは、子どもがスマートフォン(スマホ)を利用する機会が多くなり、SNS(会員制交流サイト)を通じて犯罪に巻き込まれる危険性が高まります。そこで被害の現状を紹介するとともに、注意点について全国ICTカウンセラー協会の安川雅史代表理事の話しを、8月1日付の公明新聞の記事よりまとめました。
■子どものSNS被害、9割が中高生、大半は性犯罪/昨年、巻き込まれたのは1811人
警察庁によると、2018年にSNSを通じて犯罪被害に遭った18歳未満の子どもは1811人で、統計開始の08年に比べ2.3倍に膨らんでいます。このうちツイッターを通じて加害者と知り合うケースが最多で、約4割を占めました。
被害の大半は性犯罪。淫行などの青少年保護育成条例違反が749人(41.4%)で最も多く、自画撮りを含む児童ポルノ545人(30.1%)、児童買春399人(22.0%)と続きます。
こうした犯罪被害者の9割が中高生です。これまでにも、SNSで「19歳のイケメンモデル」を装った46歳の男に、約130人の女子生徒が裸の写真を送らされる事件がありました。その手口は、男が「かわいいね。裸の写真が見たいな」などと送り、女性の嫌われたくないという心理につけ込んだ犯罪です。また売春あっせんグループが家出中の女子高校生に、SNSで「仕事を紹介してあげる」などといって近づき、1年にわたり監禁し、売春をさせていた事例もありました。
■スマホの利用時間1日184分増加
一方、民間調査会社が18年に女子中高生約600人を対象に行った「夏休みとスマホの使い方に関する調査」によると、夏休みは子どもたちのスマホの利用時間が1日当たり「平均184.4分」増加することが判明しました。
さらに、「インターネットを通じて知り合いができたことがあるか」との質問には、約6割が「ある」と答えていますた。このうち約4割が「実際に会ったことがある」と回答。「インターネットでトラブルを経験した」人は約2割にも達しています。
■全国ICTカウンセラー協会 安川雅史代表理事に聞く
――夏休み期間、保護者が注意すべきことは。
安川雅史代表理事 この時期、子どもはネットとつながる時間が特に長くなる。最近、私に寄せられた相談のうち、小学生の息子が通信機能のあるゲーム機を利用して知り合った男性に連れ回された事例があった。これは大人が子どもを装って言葉巧みに近づき接触した典型的なケースだ。ネットの世界では、保護者が想像する以上に子どもをだまそうとする大人は多い。
また子どもがスマホのオンラインゲームにはまり請求額が40万円を超えた例もあった。スマホに限らず、タブレット、ゲーム機などネットにつながるもの全てで被害に遭う危険性が潜んでいる。
――中高生の被害が9割を占めています。
\\ 安川 10代の9割にネットのみの“友達”がいる時代になった。共通の話題があるとすぐに仲良くなり、相手に会ってみたくなることもある。しかし、安易に会わないことだ。子どもを狙う性犯罪者が集まるのもネットの世界だ。ネット上では性別、年齢を変えて誰にでもなりすませる。
また、ツイッターなどに住所や連絡先などの個人情報は書き込まないようにしてほしい。もし、個人情報を含む時は公開範囲を「友人」に制限するなどの自衛策も大切だ。有害サイトへの閲覧を制限する「フィルタリング」も有効なので賢く利用してもらいたい。これらのことを家庭で改めて徹底してもらいたい。
――フィルタリングを嫌がる子どもは少なくありません。
安川 「調べ物を検索できない」「LINEが使えない」などの子どもの言い分をうのみにするのは間違いだ。フィルタリングは年齢に合わせて制限のレベルを変更できる。だからこそ、スマホの利用について、保護者は子どもとよく話し合ってもらいたい。家庭でルールを決めておくことが大切だ。だが、保護者自身が常にスマホを片手に子どもと過ごしている場合もある。保護者がお手本を示してほしい。
■困った時はすぐ連絡を
困った時はすぐに相談窓口に連絡してほしい。
ネットトラブルやネットいじめなどの相談先として、「全国ICTカウンセラー協会」があるほか、「24時間子供SOSダイヤル」(文部科学省)や「子どもの人権110番」(法務省)は子どもに限らず、保護者も利用できる。「警察相談専用電話」や「性犯罪被害相談電話」もある。
このほか、10、20代の女性向けにLINE相談を受け付ける「BONDプロジェクト」などがある。
なお、利用できる時間帯はそれぞれ異なる。
主な相談窓口
- ■全国ICTカウンセラー協会 03・6403・4029
- 24時間子供SOSダイヤル 0120・0・78310
- 子どもの人権110番 0120・007・110
- 警察相談専用電話 #9110
- 性犯罪被害相談電話 #8103