豪雨災害が一段と頻発化・激甚化するという前提で、備えを急がなければなりません。
7月31日、国土交通省の有識者検討会(気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会)は、河川の治水計画に降雨量の将来予測を活用すべきとの提言をまとめました。
昨年の西日本豪雨に関し気象庁が、個別の豪雨災害では初めて温暖化が一因との見解を示したように、気候変動の影響は既に顕在化しています。
さらに今後、猛烈な台風の出現頻度の高まりや通過経路の北上、短時間豪雨の発生回数や降水量の増加、総降雨量の増大などによる深刻な事態も予測されているのです。
このため今回の提言は、治水に関して本格的な温暖化適応策の導入を訴えた。過去のデータに頼った被害想定では対策が追い付かなくなっている現状を踏まえたものであり、当然の備え方です。
検討会の試算によると、世界の平均気温が2度上昇した場合、北海道と九州北西部の降雨量は1.15倍に、その他の地域では1.1倍となる。降雨量が1.1倍に増えると、洪水が起きる頻度は2倍に膨れ上がるとされています。
こうした事態に備えるには、高規格堤防や遊水池・放水路の整備に加え、雨水貯留施設の充実、土地利用の規制・誘導といった対策を、地域の特徴に合わせて加速する必要があります。
国交省は提言を踏まえ、国が管理する河川の治水計画を見直し、堤防やダムの強化などを検討する方針です。自治体が管理する河川についても、国と同様に気候変動の影響を十分に考慮した対策を進めなければなりません。
各国も温暖化適応策に知恵を絞っている。例えばドイツのバイエルン州では気候変動の影響を踏まえ、15%割り増した流量をもとに、堤防の整備を計画しています。オランダでは2050年を見据え、将来の流量が増えた場合でも洪水による死亡リスクが極めて低い水準となるよう、堤防ごとに基準を設定しています。
温暖化への適応策は、治水に限らず、生態系や農林水産業、健康、インフラなど幅広い分野に及びます。国際社会が連携して温暖化防止に全力を挙げると同時に、あらゆる面で将来予測を生かした対策が求められていることも肝に銘じなくてはなりません。
参考:気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会:http://urx3.nu/SKVF
参考:気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言:http://urx3.nu/cv4A