今回、日立電鉄本社が廃線を決断した理由の最大のポイントは、「安全に対する投資が確保できない」というものでした。
日立電鉄が公表している「維持補修・緊急安全点検結果等による自社工事負担金」という資料によると、平成16年度から20年度にかけて必要とされる「安全を守るための費用」が詳細に掲載されています。
<参考資料>維持補修・緊急安全点検結果等による自社工事負担金(日立電鉄提供:PDF1.6M)
しかし、私のような素人が見てもこの資料には、いくつかの疑問点があります。
(例-1:コンクリート枕木化)
平成16年度から毎年1900本の木製枕木をコンクリート製に変換することにして、9900万円の予算を見積もっています。しかし、平成10から14年度までの5カ年の平均実績は、1081本です。これを平成14年度の単価で計算していると、約5800万円で済むことになります。
(例-2:自動券売機更新)
8つの駅で自動券売機を更新することになっています。廃線になるより、このままで良いというのが利用者の実感です。6400万円の経費計上は疑問です。
(例-3:変電所増設)
平成20年に変電所の増設が見込まれています。予算額は1億2000万円です。この増設は車両の冷房化が目的です。明らかに、廃線の理由に冷房化工事まで含むのは経費推計の水増しともいえます。
県は、3月4日に行われた県議会一般質問で、地元武藤県議の質問に答えて「今後の経営見通しは、修繕費や設備投資が過去平均の1.5倍以上と見積もられているなど厳しめのものとなっておりますが、その精査や一定の経費節減等を勘案した場合、会社の見方とは別の必要な支援額が少ない試算をすることも考えられます」との見解を示しました。
廃線の是非や、利用者の増加策、支援のあり方などを行政や市民が同じ場で検討をする「場」を設けるべきです。日立電鉄は、その検討のたたき台となる出来るだけ詳細なデーターを、インターネット等で広く一般に公開し、存続へ向けての市民の知恵を結集する努力を行ってはなりません。それなくしては、「はじめに廃線ありき、数字は後から作った」との批判を免れません。
県議会一般質問における企画部長の答弁(2004/3/4)
一方、先に会社が提示した今後の経営見通しは、修繕費や設備投資が過去平均の1.5倍以上と見積もられているなど厳しめのものとなっておりますが、その精査や一定の経費節減等を勘案した場合、会社の見方とは別の必要な支援額が少ない試算をすることも考えられます。
この鉄道の存続を図るためには、これらの試算を前提としつつ、利用者への影響や鉄道による地域全体への様々な便益を踏まえ、存廃問題を地域の将来に関わる問題ととらえ、まずは地元市が、地域で支えるとの判断を行うとともに、市民による利用を促進していく必要があります。
現段階では、地域を挙げた議論や市民意向の把握等が必ずしも十分でなく、県としましては、地域における検討に資するよう様々な情報提供を行いますとともに、地元市が支扱と市民による利用促進策を決めた傷合には、会社の意向も踏まえつつ、市とも十分に相談してその対応を検討してまいります。