11月10日、茨城県議会農林水産委員会の県北調査が行われ、常陸大宮市内の耕作放棄地の再生への取り組みや森林湖沼環境税を活用した間伐事業の現場を実際に調査しました。井手よしひろ県議も、この県内調査に同行しました。
まず一行は、常陸大宮市那賀地区の視察。この地区では、JA茨城みどり枝物生産部会が、約833アールの耕作放棄地の再生作業に取り組んでいます。かつて水府タバコの有数の産地として盛況を呈したこの地域も、耕作者の高齢化や不在地主化などで荒廃し、灌木や竹林、セイタカアワダチソウなどの雑草が生い茂っていました。この耕作放棄地を平成12年から再生し、花桃などの枝物の植栽に取り組みはじめました。
今年から、市の「耕作放棄地再生利用緊急対策」の助成を受けています。耕作放棄地を再生するごとに、10アール当たり最大5万円の支援が受けられるため、耕作放棄地の解消に効果が期待されています。
「耕作放棄地再生利用緊急対策」は2009年度から5年間、耕作放棄地を賃借などにより再生・利用する取り組みや、これに付帯する施設などの整備、農地利用調整、営農開始後のフォローアップに至るまで地域の取り組みを総合的・包括的に支援する施策です。
引き続き、常陸大宮市の長倉地区と小田野地区で間伐作業を実際に視察しました。
木材価格の低迷による林業採算性の悪化などから、間伐などの森林管理が適正に行われないために森林の荒廃が進んでいます。これは単に産業としての林業だけの問題ではなく、水源の涵養や治水への問題などへの深刻な影響が起こっています。
茨城県では、平成20年度から「森林湖沼環境税」を導入し、県民から貴重な浄財を募り、森林や湖沼の再生を図っています。平成20年度は、県内で1242ヘクタールの森林が間伐整備され、間伐作業員として118人の雇用が生まれました。
今回、視察した箇所はこの森林湖沼環境税を財源として行われている「森林機能緊急回復整備事業」の現場です。長倉地区では、作業員のチェンソーによる間伐作業を視察しました。また、小田野地区ではプロセッサー、フォワーダなどの高性能林業機械を使用した間伐の実際を具に調査しました。
(写真上:耕作放棄地の現状と再生された花桃の植栽地、写真下:イワフジ工業製プロセッサーの前で井手県議)
高性能林業機械とは、車両系建設機械といわれる油圧ショベルやブルドーザーなどを改造したり、部品等を取り替えて林業で使用するために開発された機械のことを言います。
もともと北欧では、平坦で大木が多く車両系建設機械やトラクタなどの機械が入りやすい地域性から、早くから高性能林業機械の開発に取り組み、日本の林業に比べて非常に効率の良い作業が行われてきました。
日本の林業界では、材価の低迷、林業労働者の減少・高齢化など厳しい林業の現状を改善するため、北欧の高性能林業機械のノウハウを取り入れながら、林野庁・森林総合研究所・林業機械化協会・各車両系建設機械メーカー等が共同で開発を進め、高性能林業機械は「林業界の救世主」として大きな期待が寄せられてきました。
初めて市場に出た昭和63年には全国で23台でしたが、平成18年度には約3,200台が林業の現場で使用されるようになり、最近では女性のオペレータも珍しくなくなるなど、林業の労働力の低減化には目を見張るものがあります。
高性能林業機械は、「伐採」と「玉切り」など「2つ以上の仕事を一つの工程の中でできる機械」と位置づけられており、プロセッサ、ハーベスタ、フォワーダ、タワーヤーダなどが該当します。