再生医療 実用化に向け厚い支援を
10月8日、2012年のノーベル生理学・医学賞が京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授に贈られることが決まりました。この研究は、再生医療に大きな可能性をもたらすもので、難病克服など夢が大きく膨らむ素晴らしい成果です。山中教授の偉業と関係グループの努力に敬意を評します。
その山中教授がノーベル賞受賞後、真っ先に講演を行ったのは、他でもない公明党の「再生医療推進プロジェクトチーム」の会合においてでした。公明党の再生医療推進プロジェクトチーム(PT、渡辺孝男座長=参院議員)は10月18日、衆院第2議員会館にiPS細胞の研究・開発で今年のノーベル医学・生理学賞受賞が決まった京都大学の山中伸弥教授を招き、iPS細胞の可能性と今後の課題に関する講演を伺いました。
席上、山中教授は「私自身、研究時間を確保するため、約束していた講演等もほとんど断らせていただいている状況だが、きょうは何があってもここに来たいと思っていた」と、公明党への期待の大きさをことばにしました。
「2007年、ヒトiPS細胞樹立の時、政府の迅速な支援によってここまでくることができた」「今年、造血幹細胞移植提供推進法を成立させていただいた」と講演の冒頭では、山中教授の丁寧な感謝の言葉がありました。そして、山中教授はこれまでの研究で、iPS細胞から神経細胞や心筋細胞などを作製し、パーキンソン病や心疾患、脊髄損傷などに対する臨床研究が近く始められる見通しを示しました。
また、白血病などの治療に有効な、さい帯血からは良質なiPS細胞が作られると説明。多くの人が使えるiPS細胞をあらかじめ用意しておく「iPS細胞ストック」の実現へ、さい帯血が持つ可能性に言及。さい帯血が保存から10年で廃棄されることを指摘し、「さい帯血という宝の山を、iPS細胞という違う形で患者のために使わせてもらいたい」と、公明党が推進した臍帯血バンクの重要性も強調されました。
公明党は自公政権下、山中教授の研究を力強くバックアップしてきました。
山中教授が、受賞の決め手となった論文が出されたのは2006年8月。ヒトiPS細胞の樹立は2007年ですが、国として「再生医療研究」に予算がつけられたのは2003年。その後6年間で3億円(年5000万円)というものでした。しかし、この助成金は2008年度で終了。世界から山中教授に「是非、我が国に来てください。研究費も出します」と、いわば引き抜きが始まっていた時でした。自公政権では、「経済財政諮問会議」と「総合科学技術会議」を戦略の2本柱としており、「総合科学技術会議」は、日本の未来のために「選択と集中」――まさに先端技術開発に力を入れようとしており、私たち公明党はその推進力となっていました。
2008年、「2003年度~2008年度の6年間で3億円」だったものを、この年から一気に毎年45億円以上。さらにiPS研究所をつくることを決定。さらに2009年には、山中教授のチームに今後5年間で100億円規模を、それに加えることを決めました。自公政権時代に財政難にもかかわらず、この科学技術振興費だけは常に増やし続けてきたというのが実状です。
しかし、2009年9月、民主党政権となり、科学技術予算は容赦なく事業仕分けの対象となってしまいます。あの、スーパーコンピューターで「2番ではダメですか」という言葉を想起する人も多いと思います。山中教授のプロジェクトも100億円規模が50億円に削られるという残念な結果となりました。それだけではなく自公政権(麻生)の時の2009年度補正予算で「最先端研究開発プログラム」を創設して集中的に力を入れ、山中教授の研究チームも含む2700億円の予算としましたが、それを民主党政権では1000億円に大幅減額してしまったのです。
2003年 iPS細胞の研究として6年間で3億円の予算確保(~08年)
2006年 iPS細胞の研究結果を公表
世界会各国より承知依頼が殺到するが、日本国内で研究が続けられるよう、自公政権として予算確保に尽力。
※自公政権では「経済財政諮問会議」と「総合科学技術会議」が内閣のエンジンとして政権運営を支援。iPS細胞の研究についても、こうした会議体を活用しつつ、政治主導で予算確保を実現した。
2008年 iPS細胞の研究に対し、今後毎年45億円以上の予算を確保
2009年 08年から確保された予算(45億円以上)に加えて、研究のために、09年からの5年間で合計2700億円の予算を確保。そのうち、山中教授のチームには90億円が確保された。
- 山中教授のチームへの予算90億円を50億円に削減
- 最先端研究開発支援プログラム2700億円を1000億円に削減
- 次世代スパコンプロジェクト:次年度予算は見送りに限りなく近い縮減
- 大型放射光施設(Spring-8):3分の1から2分の1程度予算の縮減
- 深海地球ドリリング計画推進:1割から2割の予算要求の縮減
- 競争的資金(先端研究):整理して縮減
- 競争的資金(若手研究者育成):予算要求の縮減
再生医療実用には、規制緩和や法制度の整備が不可欠
また、予算の確保とともに重要な課題は、規制緩和や制度の現実的な見直しという問題です。
日本の再生医療は、iPS細胞の研究では世界でトップレベルに位置しているものの、培養皮膚などの再生医療製品の実用化件数は、欧米や韓国に比べて著しく少ないのが現状です。これは実用化に対する規制の違いが影響しているのです。
欧米や韓国は、再生医療製品への優先審査制度など柔軟な規制を設けていますが、日本では行われていません。そのため、例えば培養皮膚の場合、再生医療製品の治験申請から製造販売承認までにかかる期間が、韓国では1年9カ月で済んだのに対し、日本では約7年もかかったケースもあります。
安全性は厳しく確保されなければならないが、研究者などからは、再生医療の実用化を促す規制緩和や新たな法整備を求める声が上がっており、対応が急がれています。
山中教授が強調したさい帯血バンクの活用も、喫緊の課題です。
さい帯血移植の保険適用などを公明党とともに推進し、今回の山中教授招聘にも尽力したNPO法人さい帯血国際患者支援の会の有田美智世理事長は、「さい帯血を有効利用できる知恵を出してほしい。それが山中教授の研究をさらに発展させられるかどうかの分かれ道だ」と主張。治療に役立つiPS細胞ストックの実現の重要性を語りました。
公明党は、党をあげて再生医療研究支援に最大限の努力を傾注するとともに、規制緩和や法制度の充実に全力をあげてまいります。