国連環境計画(UNEP)が具体的計画を発表
7月23日、イラクにかかわる久々の明るいニュースで寄せられました。国連環境計画(UNEP)が、イラク南東部に広がるメソポタミア湿原の復元事業計画を発表しました。この決定を、心から歓迎するとともに、これを機に復興への動きが加速することを期待したいと思います。
メソポタミア湿原は、聖書の「エデンの園」があったとされる地域で、古代エジプトで霊鳥として崇められたコシグロトキなどが生息する野生生物の宝庫としても知られてきました。エジプト文明と並ぶ世界最古のアッシリア文明およびバビロニア文明の発祥の地でもあります。ビール発祥の地としても忘れられません。
ところが、1970年代ごろから周辺のダム建設で湿地が次第に失われ、1991年の湾岸戦争後には旧フセイン政権が「地域住民が反政府的だ」との理由で水の流れを変える排水設備をつくったことから環境破壊が加速しました。
コシグロトキの生息地が失われるなど、四国よりも広い約2万平方キロの総面積を誇っていた湿地帯は2001年までに9割が消失し、2008年までにはすべてが消滅するとみられています。
その復元に国連が動き出すことになりました。文明史的な意義を含んだ大事業に他なりません。
しかも事業は、日本政府がイラク復興信託基金に拠出した資金のうち1100万ドル(約12億円)を活用して進めらます。人類の遺産ともいうべきメソポタミア湿原の回復に日本が先頭を切って支援することになり、これ以上の国際貢献はありません。
事業の具体的な中身は、(1)太陽エネルギーなどを利用した浄水システムの構築(2)天然ろ過装置として機能する葦などの植生保全(3)浄水・下水処理などにかかわるイラク人専門技術者の育成――などで、これにより湿地帯の回復を図り、周辺住民約8万5000人に安全で清潔な飲料水を供給しようという計画です。
実施機関には大阪に本部を置くUNEP国際環境技術センターが予定されています。
この事業が持つ意義は環境保全の域だけにとどまりません。
まず第一に、国連の旗頭のもとにフランスやドイツがこの事業に参加するようになれば、イラク戦争以来の米欧間のきしみが消え、イラク復興問題にかかわる国際協調体制が修復される可能性があります。
第二に、壊滅状態にあるイラク経済の復興への期待があります。湿原復元事業は世界最大級の環境回復事業であると同時に、巨大な公共土木事業です。事業が本格化すればイラク安定の上で欠かせない雇用創出に絶大な効果が期待できます。
公明党はメソポタミア湿原の復元を人道復興支援の一環として強力に推進してきました。今回のUNEPの決定を受けて、さっそく公明党イラク人道復興プロジェクトチームの会合を開き、この事業を積極的に支援していく方針も確認されました。今回の臨時国会では、(1)仏独両国への、復元事業への参加の呼び掛け(2)国際会議の日本開催――などを政府に求めました。
引き続き日本はイラクの復興事業の先頭に
このように湿原復元への扉は日本のリードで開かれました。引き続き、日本がリーダーシップを発揮していくことが重要であり、そのために公明党は今後も、政府と密接に連携を取りながら支援の強化に努める覚悟です。
(この記事は公明新聞の記事をもとにまとめました)
<リンク>国連環境計画(UNEP)はイラク湿原復元プロジェクトに着手(UNEP国際環境技術センターのHPより)