国と県、支援負担巡り溝 住民は対策遅れに不安
朝日新聞(2005.4.11社会面)
茨城県神栖町の井戸水から高濃度のヒ素が検出され住民が苦しんでいる問題で、環境省と茨城県が10日、住民説明会を開いた。旧日本軍の毒ガスによる「戦後処理問題」とされてきたが、不法投棄とみられるコンクリート塊が見つかり、被害者支援について環境省は「国だけの責任ではなくなった」と主張。「原則として国の責任」とする茨城県との溝が浮き彫りになった。国の全額負担になっている支援策の変更につながる可能性もあり、住民は心配している。
環境省と茨城県の担当者はこの日、並んで座り、今月中旬から始まる汚染水の揚水調査について、住民に説明した。被害者対策について、環境省の担当者は「旧軍の行為が原因ということで被害者への支援策はすべて国が担当してきたが、状況が変わった。改めて整理すべき話だ」と主張した。
これに対し、茨城県側は「現段階では、不法投棄かどうか分からない状況だ。原因がはっきり分からなければ、次の段階には進めない」などとし、県に負担が及ぶことに警戒感を示した。
(中略)
現場は、80年代に砂利採掘のため掘られて、埋め戻された。その後、釣り堀の魚の保管場所として数年間使い、93年ごろ、業者が再び埋め戻したという。同省は業者に聞き取り調査したが「心当たりがない」との返事。2月、茨城県警に関係資料を提出し、事件性の有無について協議を開始した。
環境省は、被害住民を支援してきた。しかし、不法投棄が原因となれば、「捨てた人に責任を取ってもらう」(同省)。さらに処理などの管轄は都道府県に移る。
一方、茨城県は「コンクリートに含まれていたのが毒ガス原料なら、製造者の国の責任」と主張する。
6月にも、関係行政、捜査機関で検討し、被害者への負担、排出者の特定などの役割分担を決める。
茨城県神栖町で、ヒ素汚染が発覚したのは2003年の3月。ヒ素の成分が、旧日本軍がつくり廃棄した毒ガス兵器(通称:アカ弾)以外には考えられないため、井手よしひろ県議らは環境省に原因が特定できなくても、被害者を支援すべきと強く要望しました。そうした声が実を結び、国は異例の早さで、被害者の支援策を決定。嘔吐などの症状に苦しむ地域住民135人に医療手帳を交付して医療費を全額支給するとともに、30人に1人あたり30万~70万円を、調査研究の協力費として支給しました。
しかし、昨年12月より、原因物質が埋まっていると思われるところを掘削調査したところ、今年1月になって、汚染井戸から南東に約90メートルの場所の深さ2メートル付近で縦4メートル、横2メートル、厚さ10センチのコンクリート塊が見つかりました。このコンクリート塊から、水質基準の3万3千倍もの有機ヒ素化合物が検出されました。更に、このコンクリート塊には、1993年に販売された缶コーヒーの空き缶が埋まっており、近年、有機ヒ素が含まれたコンクリートを不法に投棄したと見られています。
不法投棄となると、所管は国ではなく県となり、健康被害への補償も排出者(コンクリート塊を投棄した者)の責任となるため、現在の被害者支援の枠組みが変更されるのではないかとの懸念が広まっています。
環境省「責任もって対応」 神栖ヒ素汚染
asahi.com : マイタウン茨城 – 朝日新聞地域情報(2005/4/12)
環境省の炭谷茂事務次官は4月11日、定例の記者会見で、神栖町で起きた井戸水のヒ素汚染問題について触れ、「地元の方々の健康と不安をぬぐうことが最優先の課題で、今後も国が責任を持って対応する」と述べ、従来の支援策に変更がないことを強調した。
炭谷次官は、ヒ素汚染問題には、健康被害への対策と原因解明の二つの課題があるとしたうえで、「健康対策については、環境省が責任を持って対応する」「原因解明は、県、町と協力して進めていく」と述べた。
不法投棄の可能性が浮上していることについては、「廃棄物処理法の管轄は都道府県だが、茨城県に押しつけるつもりはない」とし、「時効の壁があって刑事的に立件できるか分からないが、行政的に改善命令を出すなど法令をフルに使って対応する」と決意を述べた。
旧日本軍の遺棄したヒ素を含むコンクリート片に平成の空き缶が混じってたと言う超時空ミステリー。
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