ウィメンズネット「らいず」がアンケート調査を実施
DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)に悩む女性や子ども達を支援するボランティア団体ウィメンズネット「らいず」(三富和代代表)は、県内の家庭内暴力の実態調査の結果を公表しました。
調査は2004年9月20日~10月20日、茨城県内の18歳以上の男女1450人に、自記式の調査票を配布し、1086名から回答を得ました。
貴重なアンケート調査結果の中でも、特に注目したいのが、子どものときに受けた暴力や目撃体験が、大人になって自身がDVを引き起こす要因となっている「世代間連鎖」が、統計上も裏付けられたことです。
17歳以下の時に親からされた行為と、自分が配偶者やパートナーにしたことがある行為を、①平手で打つ、②げんこつで殴る、足蹴りする、③物を投げつけるの3つについてクロス集計しました。その結果、子どもの頃に攻撃された経験がある人の方が、同様の行為をパートナーに行う比率が高い傾向が見られました。
子どものころ受けた暴力とパートナーにしたことのある暴力の相関係数
父親が自分に行った暴力的行為 | ||||
平手で打つ | げんこつ・足蹴り | 物を投げる | ||
本 人 |
平手で打つ | 0.165 | 0.183 | 0.136 |
げんこつ・足蹴り | 0.107 | 0.179 | 0.138 | |
物を投げる | 0.162 | 0.217 | 0.214 |
更に、子どものころ見た経験と自身が行ってしまった行為をクロス集計してみると、子どものころ目にした行為を行う相関係数が高いことが実証されました。その上、その値は本人が受けた暴力行為との関連よりも相対的に相関係数が高いことから、体験より目撃した暴力的行為の方が影響が高いことが判明しました。(例えば、平手で打たれた体験の相関係数は0.165、それに対して平手で打つ行為を目撃した体験の相関係数は0.289となっています)
子どものころ目撃した暴力とパートナーにしたことのある暴力の相関係数
父親が母親に行った暴力的行為 | |||||||||||
平手で打つ | げんこつ | 殴る蹴る | 物を投げる | 言葉での脅し | 無視 | 付き合い制限 | 命令口調 | 生活費 | 屈辱行為 | ||
本 人 |
平手で打つ | 0.289 | 0.256 | 0.157 | 0.183 | 0.140 | 0.013 | 0.118 | 0.110 | 0.157 | 0.062 |
げんこつ | 0.073 | 0.142 | -0.034 | 0.101 | 0.043 | 0.084 | 0.113 | 0.100 | 0.088 | 0.039 | |
殴る蹴る | 0.100 | 0.045 | -0.013 | 0.076 | 0.178 | 0.007 | 0.041 | 0.061 | 0.276 | 0.154 | |
物を投げる | 0.246 | 0.212 | 0.146 | 0.277 | 0.036 | -0.024 | 0.053 | 0.042 | 0.075 | 0.036 | |
言葉での脅し | 0.050 | 0.071 | 0.034 | 0.129 | 0.001 | 0.049 | 0.138 | 0.083 | 0.065 | 0.003 | |
無視 | 0.203 | 0.191 | 0.016 | 0.204 | 0.040 | 0.236 | 0.104 | 0.216 | 0.206 | 0.062 | |
付き合い制限 | 0.159 | 0.155 | 0.209 | 0.299 | 0.014 | -0.001 | 0.180 | 0.167 | 0.223 | 0.117 | |
命令口調 | 0.252 | 0.219 | 0.097 | 0.290 | 0.113 | 0.159 | 0.184 | 0.322 | 0.189 | 0.089 | |
生活費 | 0.284 | 0.247 | 0.277 | 0.178 | 0.049 | -0.013 | 0.028 | 0.263 | 0.354 | 0.071 | |
屈辱行為 | 0.096 | 0.044 | -0.015 | -0.037 | 0.022 | 0.020 | 0.026 | 0.015 | 0.075 | -0.019 |
(相関係数とは、相関の度合いを数値で表したもの。+1から-1までの間の値をとる。相関係数が+1であれば、完全な相関関係がある。0ならば相関関係がまったくない。-1なら正反対の相関関係があることを示します)
こうした結果からウィメンズネット「らいず」は、家庭の中でのDVを目撃することは、子ども時代に自分自身が虐待を受けることと同じ重さで、子どもの未来に深く影響を及ぼすことを警告しています。
なお、調査内容の詳細については、ウィメンズネット「らいず」にお問い合わせ下さい。
ウィメンズネット「らいず」
水戸市備前町2-5-415
029-221-7242
http://www.rise.hwst.net/
DV被害者が、経済的に不利にならないような法整備も必要でしょう
「モラル・ハラスメントからみた離婚法の現状と課題」
http://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/moral_harassment.html
日本の民法は、主にフランス法をモデルとして(家族法においては、その弱者保護機能を徹底的にそぎ落として)作られた。
被害者の経済的な心配ひとつとっても、フランスと日本では、以下のように、あまりにも異なっている。フランスであれば弁護士は、離婚しても公的援助やパートタイムの収入で生きていけるからと励ますよりも、まずは加害者が負担する養育費と、被害者の離婚後の生活を支える高額の離婚給付を、法に従って計算してみせるだろう。日本の財産分与ではせいぜい取れて現存財産の半額が基本であるが、「補償給付」と訳されるフランスの離婚給付は、約8割の夫たちにとっては、全財産を充てても足りずに長期の分割払いを余儀なくされるほど高額なものである。なぜなら、補償給付は、「離婚後のふたりの経済的状況が均衡するに足る金額」と定義づけられた給付だからである。フランスのような離婚法であれば、妻は、離婚後の困窮や子どもへの教育の心配から離婚をあきらめることはなくなるであろう。