高萩市のごみ処理場問題がやっと前へ進み始めました。県内で唯一、自前のゴミ処理施設を持たない高萩市。今回提案されているのは、可燃ごみを炭化させ、燃料として資源化することのできる炭化方式で、平成22年4月の稼動を目指し、施設整備を進めることとしています。
炭化方式は、生ごみや紙ごみ等の可燃ごみを無酸素状態で蒸し焼きにし、生成された炭化物を燃料として資源化する方式です。炭化方式は、①建設費及び維持管理費のコストが安い、②環境にやさしい処分法である、③処理施設の安定的な稼動が見込まれる、④国の循環型社会形成推進交付金が活用できる、などのメリットがあると高萩市では説明しています。
12月議会には、生活環境影響調査(環境アセスメント)を業務委託するための費用640万円とごみ処理施設予定地を土地開発公社から取得するための約8500万円の補正予算が提出されました。議会では、様々な思惑が渦巻く中、僅差での可決となりました。自前の処理施設を持たないことへの危機感が全くない市議会議員がいることに、唖然とさせられます。未だに、広域処理などといって、実現の可能性のほとんどない提案を繰り返す人もいることに怒りさえ感じます。
このゴミ処理問題が、来年11月の市議選の最大の争点になることは確実です。高萩市民は、市議のゴミ問題に対する対応をしっかりと監視していくべきです。
参考:高萩市の新たなごみ処理施設の整備に向けて(高萩市役所)
高萩、ごみ処理施設建設に踏み出す
朝日新聞(2006年12月21日)
ごみ焼却施設がダイオキシン規制で02年に使用中止になり、家庭ごみが「自前処理」できなくなっていた高萩市。96年春以来、新しい処理施設の建設計画が打ち出されては頓挫し続けてきた。市議会定例会最終日の12月20日、ごみ処理施設建設のための調査費などが盛り込まれた06年度補正予算案が賛成多数で可決され、自前の処理施設建設にようやく一歩を踏み出した。
可決された補正予算案は、生活環境影響調査を業務委託するための費用640万円、ごみ処理施設予定地を市土地開発公社から取得するための約8500万円。
長年、市議会でもめてきた問題だけに、この日の採決も賛成9人、反対6人の小差。「北茨城市との広域化」や「民間委託」などの意見もあり、採決前に反対討論をしながら、採決時に退席する議員もいた。可決を受けて、草間吉夫市長は議会終了後、「やっとスタートラインに立てた」と話した。
同市のごみ処理施設を巡る問題が、クローズアップされたのは96年春。当時の大久保清市長(故人)が、和野地区に施設を建設すると表明したのが始まりだった。
背景には、同市赤浜の北部衛生センターにあったごみ焼却施設がすでに耐用年数を越えていたことがある。この頃のごみ処理は旧十王町との事務組合で行っており、組合長だった以前の市長と地元住民の間に「施設の設置期間は耐用年数以内」との同意もあった。
その後も市内のいくつもの場所の名前が建設候補地として挙がったが、出ては消え、出ては消えの繰り返し。岩倉幹良・前市長時代には、撤退した日本加工製紙工場跡地に、民間業者による可燃ごみ施設の建設計画が急浮上したが、住民らの反対で中止になった。
02年11月、ごみ焼却施設はダイオキシン規制で使用中止に。翌月からは日立市に家庭ごみの処理を委託していたが、委託期間も今年11月で終了。県内で唯一の民間委託処理に切り替えたものの、「行政の責任」(草間市長)として処理施設建設を目指してきた。
2010年の稼働を目指すごみ処理施設は、リサイクル施設と、可燃ごみを燃料などに再利用する炭化施設との併用を計画。国の塵芥(じん・かい)処理施設解体経費の助成制度活用や安全管理面などから、赤浜の北部衛生センターが候補に挙がっている。
市はこの秋に3度、赤浜地区の住民に対する説明会を開いたが、同意を得たわけではない。「話し合いの場さえなかったこれまでと違い、草間市長の姿勢には誠意を感じる」との声も一部にあるが、地元も賛成、反対で割れている。
草間市長は生活環境影響調査の実施時期などについて、「今後も引き続き、住民の方々との話し合いを持ちながら決めていきたい」と話す。自前施設の建設に向け、解決すべき課題はまだ多い。
《高萩市のごみ処理問題》 02年11月まで北部衛生センターで焼却していたごみ処理をめぐり、自前の施設建設や民間委託、隣接自治体との広域化など様々な意見が出され、長年、市議会などで結論が出なかった。今月から家庭系可燃ごみの処理を民間に委託。県廃棄物対策課によると、家庭ごみの民間委託は、「県内で高萩市だけ」という。