11月13日、国土交通省は、今後の具体的な道路整備の姿を示した「道路の中期計画」(素案)を公表しました。
基幹ネットワークの整備や防災・減災対策、環状道路の整備による地球温暖化対策など、2008年度から17年度までの10年間で取り組む政策課題を提示し、その計画達成に要する予算を65兆円と想定しました。さらに、有料道路の料金割引、スマートICの整備など、道路関連施策に要する経費として、更に3兆円以上が必要だとしました。
今後、11月中にインターネットを通じて広く国民の声を集め、年内に「道路の中期計画」を決定します。
今回の素案は、4月~7月にかけて実施した国民アンケート調査(すべての都道府県知事、市町村長、有識者の意見含む)や、8~9月の意見募集の結果を踏まえてまとめたものです。
計画で取り組む主な政策課題としては次の5点を掲げました(金額は各項目で重複します)。
①国際競争力の確保(基幹ネットワークの整備)=24兆円
②地域の自立と活力の強化(生活幹線道路ネットワークの形成、慢性的な渋滞への対策)=33兆円
③安全・安心の確保(防災・減災対策、交通安全の向上、安全・安心で計画的な道路管理)=19兆円
④環境保全・生活環境の創造(地球温暖化対策、道路環境対策、生活環境の向上)=31兆円
⑤既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化(有料道路の料金割引、スマートICの整備)=3兆円
その上で、各政策課題ごとに優先順位を明確にして、「重点方針」と「講じる施策」を記述しています。
例えば、日立市が直面する「慢性的な渋滞」への対策では、全国の信号交差点19万箇所のうち、日常的に渋滞が発生している箇所(約9000箇所)の1/3にあたる3000箇所について優先的に整備を進めるとしています。講ずる施策としては、環状道路やバイパスの整備、交差点の立体化等交通容量拡大策の推進、路上工事の縮減や有料道路における弾力的な料金施策の推進、LRTの導入、交通結節点の改善、TDM施策等公共交通機関や徒歩・自転車への交通行動転換策の推進等を上げています。具体的な路線名等は上げられていませんが、日立バイパスの延伸や常磐道の利用料金の割引などが位置づけられるべきだと考えています。
参考:国道交通省の「道路の中期計画」(素案)の概要(pdf版)
この中期計画の内容は、次の通常国会で議論される道路特定財源の一般財源化の問題と深くリンクしています。国交省が示した道路の中期計画に必要な予算98兆円は、ガソリンにかかる揮発油税など道路特定財源は「暫定税率」を今後10年維持しても、余るどころか足らなくなってしまうという金額です。
政府・与党は道路事業費を上回る道路特定財源の余剰分は一般財源化する方針を、小泉内閣の時にすでに決めています。ガソリン高騰で、本来の二倍近い暫定税率の引き下げを求めるドライバーや自動車、石油業界の声は一段と強まっています。
暫定税率が打ち切りになれば、ガソリン一リットル当たり25円程度の値下げになるとの試算もあり、納税者に還元すべきとする主張も説得性を持っています。
道路特定財源を現在と同じように維持し、道路の整備を進めるためには、具体的な整備区間とその事業費をセットで示すなど、より具体性のある説明が必要です。
(写真上:建設が進む北関東高速道路、写真下:道路の中期計画に関する要望を冬柴鐵三国交相に行った井手よしひろ県議ら日立市関係者)