12月25日、井手よしひろ県議は愛媛県伊予市のウェルピア伊予で、伊予市の行政改革・政策推進室長尾雅典室長より、伊予市が厚生年金の施設であったウェルピアの購入に至った経緯や街づくりの中での同施設の位置づけなどを聴き取り調査しました。これには、伊予市議会の青野光議員(公明党)も同席しました。
伊予市は愛媛県のほぼ中央に位置し、県都松山市から約11キロほど離れています。平成17年4月1日に旧伊予市と中山町双海町の1市2町が対等合併して誕生しました。合併時の人口は4万1082人で、平成19年度の歳入予算総額は約156億円の小規模な自治体です。財政力指数は0.436と厳しい財政状況ではありますが、公債費比率は12.7と堅実な行政運営をしていました。
伊予市は合併に当たっての新市の将来像を「ひと・まち・自然が出会う郷(くに)」と定め、「伊豫國あじの郷(くに)づくり」をまちづくり計画の基本に据えました。その拠点施設として当時の「ウェルサンピア伊予」を位置づけ、市の都市総合文化施設として買収活用し、従来の宿泊や体力向上などの機能を継続するとともの、伊予市の文化継承、新たな文化の醸成、「伊豫國あじの郷」の情報受発信とすることになりました。
ウェルサンピア伊予を伊予市が取得するまでには、様々な議論が積み重ねられました。ウェルピア伊予を取得した主なポイントは、以下の8点に集約されます。
- 市民および利用者から5万2426人分の存続を求める署名が寄せられた。
- 市内唯一の公的な宿泊施設・研修機能を持つシンボル的な施設である。
- 市街化調整区にある広大な施設であり、民間事業者では購入や活用が難しい。
- 購入者がない場合は施設は廃止されるため広大な施設が廃墟となる恐れがある。
- 地域雇用が85名あり、年間約5億円の地域経済活動が行われている。
- 近隣に類似施設がないため、民業の圧迫にはならない。
- 市の財政状況を鑑みると15億円以下の購入が条件となる。
- 同様の施設を整備するとすると70億円以上の費用が必要となり、15億円以下での購入ならば、他用途の利用や転売しても十分費用対効果はプラスとなる
ウェルピア伊予の立地は、風光明媚な観光地ではなく、戸建ての大規模住宅団地と工業団地、それと農地に囲まれた場所です。RFOは全体の敷地13.2ヘクタールをⅠ区画とⅡ区画に分割して入札を進めました。Ⅰ区画は面積11.7ヘクタールで施設の大部分がこの区画に含まれます。用途地域が市街化調整区域であるために最低売却価格は7億8300万円に設定されました。このⅠ区画を伊予市が購入したわけです。反面、住宅団地に隣接するⅡ区画は市街化地域(第一種中高層住宅専用地域)であったために、1.6ヘクタールほどの土地にテニスコート4面、多目的グランド、ゲートボール場があるだけですが、最低売却価格が5億7900万円と設定され、未だに落札者が決まらない状況です。
自治体が購入して市民のための施設して活用するには申し分ない施設ですが、民間が利活用するには、非常に使いづらい施設です。伊予市は購入に当たって、最悪、施設経営が行き詰まった場合は更地に戻し、用途地域を変更して住宅地や工業用地として活用することも想定しているとのことです。
ウェルサンピア伊予の取得に至る経緯を簡単にまとめてみると、以下のようになります。
- 平成17年4月1日:1市2町が合併して伊予市が誕生。
- 平成17年10月1日:年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)にウェルサンピア伊予の保有権が移管され、平成22年度中の廃止または売却の方針が決定。
- 平成17年12月:RFOからウェルサンピア伊予に関する意向確認があり、この時点では、直接譲渡を受ける意志はないが、宿泊・会議など主要施設を現状のまま存続してほしい旨を回答。
- 平成18年1月17日:「ウェルサンピア伊予の既存存続を求める会」から、市の人口を超える5万2426人分の署名が提出され、RFO理事長宛に送付される。
- 平成18年10月:ウェルサンピア伊予を伊予市が取得することの是非についての検討が開始される。
- 平成19年2月:伊予市総合計画の実施計画に15億円の事業費を見積る。
- 平成19年3月:議会の議決を受けて平成20年度予算にウェルサンピア伊予の資産価値を明確にするための不動産鑑定予算を計上。
- 平成19年6月市議会:ウェルサンピア伊予の購入を前提に、活用策、投資メリット、適正価格などをコンサル委託するための補正予算を議決。
- 平成19年12月3日:市議会議員協議会で、ウェルサンピア伊予を伊予市が購入すことについて意志決定。
- 平成20年1月21日:臨時市議会を招集。ウェルサンピア伊予の一般競争入札に応札するための補正予算(財産取得費、契約保証金など4億円)と債務負担行為(将来の負担に対し支出の限度額を認めること、11億円)を全会一致で議決(売却は一般競争入札で行われるために、事前に応札価格を議会で予算化すると、他の入札参加者に伊予市の入札価格が判明してしまいます。そのために、最低限契約時に必要な金額と債務負担行為として最大伊予市としてはこれだけの金額で入札する意思のあることを表明したもです)
- 平成20年1月25日:7億8588万8000円で応札(最低入札価格7億8300万円)し、落札決定。
いずれにせよ、伊予市はウェルピア伊予の取得にあたって、売却の方針が決まって以来、慎重に検討を積み重ねてきました。その根本には地域住民にとって、何が一番大切なのかという視点が、市当局と議会中で健全な緊張関係となって、計画が進められてきたとの感想を持ちました。
翻って日立市においても、ウェルサンピア日立の売却問題は遠い先の課題ではありません。早ければ、来春早々にも結論を出さなくてはならない、待ったなしの問題となっていることを認識しなくてはいけません。
(2009/5/9更新)
2009年5月8日、サンピア日立の一般競争入札が行われ、日立市が3億4500万円で落札しました。詳しい経緯は、「サンピア日立、日立市が3億4500万円で落札」をご覧下さい。
井手よしひろ様
伊予市及び「ウェルピア伊予」の調査ご苦労様でした。ありがとうございます。取得経過など大変参考になります。
なお、次の点についてご教示いただけるとありがたいと思っております。
1 市と指定管理者との契約で、赤字の場合はどう するのか、わかりましたら教えて下さい。
2 「ウェルサンピア日立」の場合も、同様の施設 を整備すると、約25億円の費用が必要になると思 われます。10億円以下での購入ならば、最悪施設 の経営が行きづまった場合、他用途の利用や転売し ても十分費用対効果はプラスになると思われます が、いかがでしょうか。
日立市久慈町M.O