「かんぽの宿」の譲渡問題は、オリックス不動産への一括売却が白紙撤回となり、弁護士などによる日本郵政の第三者検討委員会がスタートしました。売却契約までの不透明な経緯や入札手続きを考慮すれば、白紙撤回は当然です。今後は第三者の厳しい目でしっかりと検証してもらいたいものです。
この問題で最大の疑問は、日本郵政が「適正」と定めた売却価格です。建設費に約2400億円の巨費を投じながら約109億円で売却される契約になっていました。かんぽの宿事業は年間約40億円の赤字を出しています。したがって、この事業を再建または継続するために、マイナス査定したわけですが、その査定の経過が不透明であることは否定できません。
茨城県内には、2箇所のかんぽの宿があります。
一つは「かんぽの宿大洗」、もう一つが「かんぽの宿潮来」です。各々の収支状況と固定資産税評価額を、日本郵政から提供していただきました。さらに、日本郵政が一括売却の基本とした平成20年8月末の鑑定評価額を国会の質問主意書から掲載します。
やはり、固定資産税の評価額8億8800万円のかんぽの宿大洗の会社評価額が約1億2900万円、9億4800万円のかんぽの宿潮来が1200万円とは、庶民感覚では納得できません。
その上、売却後2年間は独断での施設譲渡を禁止するとした契約書に、条件付きで「容認」する旨のただし書きがあったことも明らかになっており、その不透明さは増すばかりです。
こうした中2月18日、衆院予算委員会では、公明党の大口善徳衆議院議員が質問に立ちました。大口氏は「かんぽの宿」の物品購入に関し、日本郵政株式会社が昨年10月に液晶テレビ3447台(約3億3838万円)などを購入した点を指摘し、「これは事実か。また、オリックス不動産への譲渡価格109億円にどのように反映されたのか」と質しました。
日本郵政側は購入した事実を認めましたが、鳩山邦夫総務相は「私は知らなかった。入札価格に大きな影響を与える金額だ。すべての点が不透明なので解明しなくてはならない」と述べ、調査する考えを示しました。
なぜ今、大型液晶テレビ購入やレストランの改修?
井手よしひろ県議は事実関係を確認するために、2月19日、かんぽの宿大洗を訪れました。大口議員が指摘した大型の液晶テレビは、確かにロビーに設置されています。最新型のシャープ亀山モデルです。一括売却を目前にしたこの時期に、3億円を超す投資を行う意味がどこにあったのか、不信感が募ります。
さらに驚くべき事実がありました。ロビー脇のレストラン「さざ波」の椅子やテーブルが総入れ替えされていました。かんぽの宿大洗のホームページによると「海を眺めながらゆっくりとお食事が楽しめます。 全92席、テーブル席72席、小上り席20席」とありますから、この改修費でだけでも相当額になるのではないでしょうか。(ただ、このレストランが直営かどうかの確認はしておりませんので、もしかしたらテナントなのかもしれません。しかし、テナントだとすれば収益を上げられるこのレストランが直営でないこと自体に大きな疑問を感じます)
井出先生
早速のコメント有り難うございます。
適正な入札が重要であること、私も同じ意見です。申し上げたかったのは、適正なプロセスを経て提示された価格であれば、大幅に固定資産税評価額を下回るものであってもそれが時価である、ということです。従って、「価格そのものが高い低い」という哲学論争よりも、「プロセスのどこに疑義があるのか」を客観的な材料に基づき究明していくことが必要であると考えているものです。
テレビ等の追加投資は、技に走りすぎのように見えます。二次入札時点で負債調整後の価格はオリックスがトップでしたので、おそらく実質的にはオリックスへの落札が略決まっていたのではないでしょうか?ただその時点では全体として簿価を下回るオファーであったため、簿価との関係を改善するために世田谷を外すと共に競争継続をちらつかせながら値上げを迫り、その中で交換条件として投資を入れ込んだ、などというのは有りそうなシナリオです。世田谷を外したのは本質的に正解だと思いますが、設備投資分オファープライスを上げさせるというのは単に見た目の問題なので、損をした訳ではないものの正直あまり筋が良くないですね(※この部分は個人的推測に過ぎませんので、その前提でお願いします)。
こういった話も
◆高野孟:鳩山邦夫は旧郵政官僚の操り人形ではないのか? http://news.www.infoseek.co.jp/special/j-is/spiral0902_005.html
「3月の郵政民営化見直しの期限にタイミングを合わせて旧郵政官僚が西川の首を掻くことを狙って仕掛けた陰謀ではないのか」
番組終了後、菅は財部に「あれは陰謀ですよ」と明言した
参考
かんぽの宿 5つの論点 – Chikirinの日記
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090222
固定資産税評価額は固定資産税をかけるためのものであり、事業買収には関係ありません
今回は不動産売却ではなく事業譲渡(事業だから1円でも売却可能、ジャレコなどがそう)
税金垂れ流したグリーンピアや宮崎シーガイアで、固定資産税評価額が関係あったか?なかったはずです
だから、2例のように、建設費に○○かかったも関係ありません
逆に『建設費に本当にそれだけ使ったのか?中抜きがなかったのか?が疑問』です
こうした入札には、固定資産の評価額はほとんど加味されないんですか?でも、買ったらその評価で課税されるんですよね。そもそも、簡保の施設は、従業員を一人も首にしないで受け継ぐことが条件なのですよね。簡保の資産を守るという発想ではなく、郵政の悪癖をそのまま維持するということなのでしょうね。そのために、現郵政はいろいろなおまけを付けて、お友達のオリックスに売りたかったのかな、とも思います。
TETSUZO様
コメント感謝いたします。
「事業継続前提の事業用不動産の評価は、積算的な評価(固定資産税評価額もその一種)をースタートに赤字をマイナス査定するのではなく、今後の収益・キャッシュフロー見通しのみによって行われます。そこでは固定資産税評価額等は殆ど参考とされません。使用される今後の見通しが妥当か、またそこで織り込まれる収支改善を自ら実現した方が良いのか、入札価格を経由して取り込んだ方が良いのか、等の議論であれば建設的ですが、記事に記載されているレベルはあまりに初歩的に過ぎると考えます」とのご指摘、全くその通りです。
私も、年金施設の処分を行っているRFO関連物件にも係わっていますので、当然そのような評価法は心得ているつもりです。
しかし、こうした評価法は、個別の入札時には非常に参考になり、その金額が最低価格として提示されることにより、公正な入札の基礎となると理解しています。今回の日本郵政は、バルク方式の一括売却方式をとっています。当然、その入札に参加できる事業者は、資本力の大きなものに限られ、地方自治体などは無条件にはずされてしまいます。個別の事業継続を前提とした評価額を適正に積み重ねなくては、バルク方式の売却の信頼性を得ることは出来ません。
個別の評価額の妥当性は、私は問題視していません。その価格を基準にして、適正な入札が行われるような仕組み作りが求められているのです。
一つ申し述べさせていただければ、その評価を行った後に一定以上の設備投資を行うことは常識では考えられません。「テレビやレストランの改修経緯は確かにきちんと確認すべき点ですが、」程度の問題ではないのです。109億の売却予定額に、内緒で3億以上のオマケを付けることは、ゆゆしき問題です。
テレビやレストランの改修経緯は確かにきちんと確認すべき点ですが、物件価格の考え方については根本的に認識不足ではないでしょうか。
事業継続前提の事業用不動産の評価は、積算的な評価(固定資産税評価額もその一種)をースタートに赤字をマイナス査定するのではなく、今後の収益・キャッシュフロー見通しのみによって行われます。そこでは固定資産税評価額等は殆ど参考とされません。使用される今後の見通しが妥当か、またそこで織り込まれる収支改善を自ら実現した方が良いのか、入札価格を経由して取り込んだ方が良いのか、等の議論であれば建設的ですが、記事に記載されているレベルはあまりに初歩的に過ぎると考えます。
「庶民感覚」で理解しにくい面があるのは事実かもしれませんが、議員さんの立場としては、このようなケースでの通常のビジネス感覚についてきちんと情報収集し、理解した上で、公正に「庶民」」に伝える義務があるのではないでしょうか。