
民主党は、高速道路を無料化することによって、1.生活コスト・企業活動コストが下がる、2.地域間交流が活発になり経済が活性化すると主張し、無料化に伴う経済波及効果は、「最大で7.8兆円に上る」と説明しています。本当に高速道路の無料化は、国民にとってプラスになるのでしょうか。

これは、至極当然な指摘です。鳩山首相は高速無料化の一方で、二酸化炭素など温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減すると主張しています。環境対策の重要性は理解できますが、看板政策と大きく矛盾するのであれば、当然、丁寧な説明が必要です。しかし、全く説明がない現状では、関係者の不安は高まるばかりです。
また、要望書では上限1000円の土日祝日の料金引き下げで、既にフェリー、バス、鉄道などの公共交通機関に影響が出ている点にも言及。無料化を地方から段階実施した場合、「地域の足として(JR各社が)担うべき社会的役割が果たせなくなることを危惧する」と訴えています。
上限1000円の料金引き下げは、100年に一度とも言われる経済危機を打開するための緊急避難的な暫定措置です。しかし、これを無料にし、恒久化するとなると、話は違います。廃止に追い込まれるローカル鉄道などが出たならば、車に乗らない高齢者などには大きな打撃となります。無料化でさらなる渋滞増となれば、物流や観光業にも影響が出ることが考えられます。
高速道路の料金収入は年間約2兆4000億円あまり。このうち維持・管理費が約5000億円、残り約1兆9000億円が、今までの高速道路の建設費の借金、約31兆円の返済に使われています。
これに対し、民主党は高速道路会社の借金を国に付け替えることで高速料金を段階的に無料にする方針です。高速道路は再び国有となります。料金収入がなくなるため、過去の借金は国が税金で支払うことになり、現在45年で返済する計画ですが、それを60年に延長して毎年1兆3000億円ずつ、国民の血税で返済することになります。これでは、利用者が料金を負担するという「受益と負担」の関係が崩れ、高速道路を使わない国民も、一律に莫大な負担を背負わされることになってしまいます。
また、このスキムでは現在、計画中の新規の高速道路整備に使う費用は、一体どこから捻出するのか説明は全くありません。高速道路は、完成後の料金収入を当てにして建設されるものですから、それがなくなれば、新たな高速道路建設は頓挫すると考えた方がよいのかもしれません。茨城県では、東関東道水戸線や圏央道などどうしても早期完成を急がなくてはならない重要な路線があります。北関東道も、平成23年度までにひたちなか市から高崎市までの全区間の完成が待ち望まれていますが、その完成時期にも深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。
また、高速道路が無料化されると当然、その通行量は増大するわけです。高速道のインターチェンジ周辺の渋滞が大きな問題となります。その典型的な事例が、常磐道の日立中央インターです。国道6号線のバイパスとして常磐道が機能すれば、日立中央インターの交通量は飛躍的に増加することが想定されます。日立中央インターは、県の道路公社が管理する日立有料道路で一般道に接続しておりますが、その処理能力は通行量と比べ限界があり、大規模な渋滞の発生が危惧されます。こうした周辺道路は、地方自治体の管理する道路である場合も多く、その整備財源の捻出も課題となります。
読売新聞社が10月2~4日に実施した世論調査でも、高速無料化については反対が69%でした。各紙の調査でも軒並み反対が賛成を上回っています。
説明不十分なまま、「マニフェストに掲げたから」というだけで理解が得られるものではありません。
政府は来年度予算編成に関して、歳入不足を補うため赤字国債を増発する方針を固めたといわれたいます。10年度税収は09年度当初見通しの約46兆円を割り込むのは確実で、不足分は赤字国債で賄わざるを得ないとの判断です。鳩山首相は就任前から、一貫して国債増発を否定してきましたが、厳しい現実に直面して路線変更を迫られたということでしょうか。
国民の過半数がその効果を疑問視している高速道路無料化は、全く意味のない政策であり、もし新政権が実行に移せば、江戸時代の生類哀れみの令のごとく、後世の人々によって末永く笑い話として伝えられる「21世紀の最悪の愚策」であります。
橋本知事は高速道路無料化を、地域経済の波及効果や地球温暖化対策、鉄道や航空業界などへの影響など総合的な見地から見て、どのように評価されるか、又本県にどのような影響が出ると懸念されているかお伺いいたします。
(2010/2/3更新)
2月2日、国土交通省は「平成22年度高速道路無料化社会実験計画(案)」を公表しました。
それによると、茨城県内では「東水戸道路」ひたちなかIC~水戸南IC間10キロ区間が無料化されることになります。しかしこれは、県の常陸那珂有料道路との整合性が大きな問題となります。
常陸那珂有料道路は、ひたちなかIC(東水戸道路と直結)からひたち海浜公園ICに至る延長約2.9kmの自動車専用道路です。地域高規格道路水戸外環状道路の一部で、茨城県道57号常陸那珂港南線に指定されており、茨城県道路公社が一般有料道路として管理しています。したがって、常磐道友部ジャンクションから国営ひたち海浜公園方向に通行すると、北関東道区間(~水戸南IC)は有料=東水戸道路区間(水戸南IC~ひたちなかIC)は無料化=常陸那珂有料道路(ひたちなかIC~ひたち海浜公園IC)は有料という、大変複雑な料金体系になる可能性があります。今後、県の有料道路に関しては、その対応が検討されることになりますが、常識的に言えば、地元自治体(道路管理者)との協議を経て実験区間を決定するのが道理ではないでしょうか?
参考:鳩山政権の高速道路無料化は“盲腸路線”限定!?
「31兆円ある借金を、国民全体の負債に付け替えること自体が、モラルハザード」 ← これはわかりやすいロジックですが、国と地方の借金が800兆円とも言われる昨今、財政赤字削減全体の枠組みで議論すべきテーマと思います。
猪瀬氏の著作の中で道路公団民営化の抵抗勢力のように描かれたこともある冬柴元国交相のパフォーマンスなどを思い出すにつけ、「公明党の財政赤字削減のトータルプランが見えない」と感じてきました。不正やムダを排する姿勢は注目に値するものでしたが、「旧自民党政治の枠組みを認めた上でダメなところを微調整するだけではどうしようもない」というのが今回の自公大敗の底流にあった民意ではないのでしょうか?
北関東道及び圏央道と、東関道水戸線とはかなり優先度に差があるように私は思います。また、仮に「首都圏内で最優先」だとしても、「全国的にも最優先」とは限らないのでは? どういう評価に基づくのでしょう? その評価は何が前提なんでしょう?
県会議員としてではなく、公明党の見解を知りたいと思って書いています。
働くキリギリス 様
貴重な議意見、いつもありがとうございます。
高速道路の無料化は、社会実験を進めながら進めようと、全国一律に進めようと、今世紀最大の愚策だと考えています。
確かに採算性の悪い道路を作ることは許されません。
しかし、実際に31兆円ある借金を、国民全体の負債に付け替えること自体が、モラルハザードだと思います。
一部無料化し、他の路線は有料化のまま、これではどうしても政策に整合性が出ません。
高速道の建設を慎重に行うことは大賛成です。建設費の圧縮も大いに努力すべきです。補正予算の4車線化、執行停止も私は賛成です。
しかし、最低限必要な高速道路の整備はやはり必要です。
高速道路整備は、ネットワークを完成させること、現在のようなミッシングリンクの状況は、一刻も早く解消させないと、その効率性は上がりません。
北関東道、圏央道、東関道水戸線は首都圏でも最優先の道路であると考えています。
高速道路無料化を無原則に全国一律で進めるのなら、「21世紀の最悪の愚策」と言えるかもしれませんが、今後社会実験も行いつつ、効果が見込まれるところから順に実施し、悪影響が出るところは無料化しないのなら、腐りきった自民党政治の産物の改革手段の一つとしてチャレンジする価値はあると思います。公明党は、福祉や教育の面で、民主党も刮目するような大胆な改革案を創り出すことに精力を使ってはどうでしょうか?
高速道路無料化・道路特定財源・一般道路整備、さらには国土交通省の施策は、全部をセットにした大きな枠組みで全体像を示すべきでしょう。小泉氏の道路公団民営化のプロセスにおいても公明党が目指す全体像はよくわかりませんでした。「最悪の愚策」よりましな全体像をお持ちなのでしょうか?
また、茨城県の高速道路インフラのうち、東関東道水戸線は、投資対効果はかなり悪く、緊急性も低いと思いますが、いかがでしょう? データをお持ちなら紹介ください。見通しの暗い茨城空港有りきのご意見なら論外・幻滅です。あそこは、広く平らな地域なんだから、一般道の整備で十分対応でき、予算もトータルとしては節約できるのではないかと思います。先日危機的な県財政の状況をレポートされていた姿勢とは、整合性が感じられませんでした。