携帯電話で遊べる“無料ゲーム”で高額請求が相次いでいるというトラブルが起きています。
国民生活センターの発表によると、2009年度に同センターに寄せられた携帯電話やパソコンのオンラインゲームに関する相談は654件で、そのうち約4割にあたる273件が“無料”のオンラインゲームに関するものでした。
アバターの購入には要注意
国民生活センターに寄せられて相談例によると、アバター購入には十分な注意が必要です。
【事例1】小学生の息子が無料ゲームをするために、私の携帯電話を貸して遊ばせた。テレビで「無料」とCMをしていたし、息子も友人から無料ゲームだと紹介されたと聞いたので、お金がかからないと安心して利用させていた。しかし実際には、アバターのコンテンツ料として1 回5000円かかり、2ヶ月で約6万円もの請求書が届き驚いた。自分の分身として画面上に登場するキャラクター(アバター)をつくる際に、髪型や服装、装飾品、背景などのアイテムを選んで、オリジナルのキャラクターを作成できるようになっています。ゲーム自体は確かに無料ですが、このアバターを作るために高額なコンテンツ料が発生する場合があります。
(相談受付年月:2009年9月、相談者:愛媛県、30歳代、女性)
ゲームが進むと有料になる仕組み

これは、たとえば釣りゲームなどで、最初は確かに無料なのですが、ゲームを進めるうちに大物にチャレンジするようになり、そのためにより良い竿や餌などが必要になってくるためです。
大きな魚や珍しい魚は有料の竿などを買わなければ釣れないため、夢中になると、ついそれらをどんどん買ってしまうことになるようです。
もちろん購入の前にはそれが有料であることが表示されますから、道具などを買うのは自己責任なのですが、子どもの場合、購入に現実のお金がかかることが理解できていない場合もあり、保護者のところに高額な請求が来て始めて気がつくということがあるようです。
電話会社が集金を代行
携帯電話の有料課金サービスというのは、ゲームなどを提供する業者への支払いはすべて携帯電話会社が代行して通信料と合わせて集金し、業者に払う仕組みになっています。携帯電話のほとんどの利用者は銀行口座やカードからの引き落としを利用していますから、きちんとチェックしていなければ知らないうちに高額の利用料が支払われてしまうということになります。
多くの携帯アプリ(ソフト)は月額何百円単位の定額ですが、問題になっている無料ゲームのように、いろいろなアイテムを買えばどんどん支払いが高額になる場合があります。そのため、携帯電話会社側で有料課金の上限設定サービスを用意しているところもあります。たとえばNTTドコモは、月間最大10万円で、1万ずつ任意に上限額が設定でき、KDDI(au)は、未成年の場合は月間1万円、成人の場合は月間3万円(10月20日以降は5万円)と設定されています。
ゲームを提供していた企業は、国民生活センターなどの指摘を受けて、今後は未成年ユーザーについては、親権者の同意がないまま高額の有料課金サービスを利用することを防ぐため、月間での課金利用金額の上限を3万円とし、さらに16歳未満のユーザーについては上限を1万円とすると発表しました。またテレビコマーシャルの表現も見直すとしており、一部のコンテンツが有料であることがわかりやすいように、表記サイズやコントラストなどを変えるとしています。
パケット通信料が定額制でない場合
もうひとつの問題は、無料ゲームは遊んでいる時に通信料がかかるということです。携帯電話でゲームをすればパケット通信料がかかるということは多くの人には常識ですが、なかにはそのことを知らない人もいます。携帯電話会社では、パケット通信をある程度以上使ってもそれ以上お金がかからない「パケ放題」などの定額制料金プランを用意していますが、このような定額制料金の契約をしないでゲームなどをすると、通信料は高額なものになってしまいます。
電話会社から高額な請求が届いたという相談の中には、このようなケースもあり、自分はゲームもメールもほとんどやらないからと、パケット定額制の料金プランを契約していなかったのに、子どもがその携帯を使ってゲームをして料金がふくらんでしまったというケースもあるようです。
世の中は、携帯電話の通信料の仕組みや課金システムに詳しい人ばかりではありません。携帯電話を契約する時でも、よくわからないまま担当者の勧めるままに契約している人も多いことでしょう。安心のために子どもに携帯を持たせている親御さんも多いと思いますが、無料とうたっていても利用料、通信料がかかることがあるということを認識し、子どもが利用する場合には保護者がしっかりとチェックすることが重要です。
参考:「無料」のはずが高額請求、子どもに多いオンラインゲームのトラブル(独立行政法人国民生活センター)
有料アイテム、157億円市場に
読売新聞(2009/10/10)
「無料」携帯ゲームで高額請求…10万円の請求も
「無料で遊べる」とうたう大手携帯ゲームサイトから高額な情報料を請求され、トラブルになるケースが相次いでいる。
5歳の子どもが親の携帯電話で遊ぶうち、10万円もの高額アイテムを購入してしまった事例も。親は電話料金に上乗せされた請求を見て初めて気付くことが多いという。国民生活センターは携帯電話会社などに対し、高額請求の場合は一時的に請求を止めて調べるなどの改善策を求めた。
山形県内の主婦(37)が、ソフトバンクモバイルからの請求金額が急増したことに気づいたのは今年5月。明細には「情報コンテンツ料 4万5150円」とある。小学3年生の長男(9)に聞くと、大手サイト「グリー」で自分の分身(アバター)を飾るアイテムを買っていたという。
ゲームは原則無料だが、アバターを飾ったり、ゲームを有利に進めたりするための特別アイテムは有料で、1点5250円するものもある。テレビコマーシャルでは「無料で遊び放題」などとうたい、有料サービスがあることは読み取れないほど小さくしか表示されていない。
購入方法は、携帯画面上の「購入」ボタンを押すだけ。ドコモやauでは有料サービスを受ける際に暗証番号の入力が求められるが、ソフトバンクは入力を省略しており、長男は母親に無断で何度も購入していた。請求額は翌月分も含めると8万円近くに上った。
ソフトバンクは当初、「請求通り支払ってほしい」として相談に応じなかったが、その後、地元の消費生活センターを経由して再度連絡を取ったところ全額返還された。主婦は「無料だと思って安心して遊ばせていたのに」と振り返る。
ソフトバンクの話「返金は個別対応しており、件数や金額は明かせない」
グリーの話「未成年者の利用について苦情があれば、状況を確認し返金も含めて個別に対応する。苦情や相談の件数は公表していない」
有料アイテム、157億円市場に
総務省によると、昨年の交流サイト、ゲームサイトなどでのアイテム販売の市場規模は157億円。2007年の60億円、06年の5億円と比べ、急拡大している。
モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)が「健全」と認定し、フィルタリング(閲覧制限)対象外となっている33サイトで見ると、「モバゲータウン」「大集合ネオ」など少なくとも13サイトが、「無料で遊べる」とうたいながら、有料アイテムを販売している。
これに対し、各地の消費生活センターなどには「5歳の子供が着せ替えで遊んだら4日分で10万円の請求が来た」(広島市)、「10歳の子の使用で5万円請求された」(北九州市)といった苦情が寄せられている。
総務省では「未成年者が親の同意なく利用した場合は原則的に取り消すことができる」としているが、「一度でも支払うと、法的に契約を認めたことになり、取り消しが難しい」と注意を呼びかけている。