「消費者行政の司令塔」として、大きな期待を背負って船出した消費者庁。9月で発足1年を迎えますが、民主党政権のもとで目に見える成果は残せていないのが現実です。消費者庁幹部は「期待された役割の半分にも届いていない」と危機感を抱いています。
縦割り行政の弊害で情報が埋もれ、適切な対応ができなかった反省から、情報一元化のため新設した消費者安全法。消費者庁にはこの1年で、全国の自治体や警察などから事故や食中毒など約1万7000件の情報が寄せられたが、人員不足などで具体的な注意喚起ができたのはわずか3件にとどまりました。
使い捨てライターやパワーウインドーの事故で子どもが被害に遭うケースが多発しましたが、関係機関が報告義務がない誤使用による事故として、1件も消費者安全法に基づく報告をしないなど、収集面での課題も露呈しています。
規制法令のない「すき間事案」の解消でも、死亡事故が相次ぐなどした、こんにゃくゼリーについて「安全性を欠く」と指摘しながら、結論は先送り。一部消費者らが望む規制への青写真はまだ見えず、スピード感を欠いています。また、景品表示法の処分件数も激減し、法執行面でも不安がのぞいています。
消費者庁は課題解消に向け来年度、定員(約200人)の4割に当たる80人の増員を要求。事故分析や法執行部門を増強する方針ですが、消費者庁幹部は「人員だけでなく職員の意識改革が必要。自ら消費者ニーズや必要性を考え、積極的に取り組まないと、国民に認めてもらえない」と強調しています。
また、県や市町村の消費生活センターとの連携なども充分ではありません。
被害者の視点を入れた事故調査機関の設置を検討したり、輸入ベビーカーの事故で積極的な被害救済を要請したりするなど、「消費者目線の行政」の芽は出つつありますが、存在意義が問われる2年目となりそうです。
(写真は、消費者庁が入居する山王パークタワー)