平成23年度の県内市町村の当初予算が出揃い、子宮頚がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成が、すべての自治体で予算計上されました。思い返せば、公明党茨城県本部として、一昨年春からの各議会での意見書運動、県民を巻き込んでの“女性の健康フォーラム”など、一気呵成に走りきった充実感があります。
しかし、この一定の成果も2年間限りの限定的な事業に留まっていることを冷静に認識しなくてはなりません。肝心の定期接種化については、検討の方向性が十分に見えていません。すでに、各市町村から2013年度以降は、その財源を巡って心配の声が漏れ始めています。
予防接種法に位置づけられた定期接種は無料で受けられます。その上、何らかの副作用などが発生した場合にも、国の責任が明確になり、地方自治体は安心して予防接種の徹底をはかることが出来ます。しかし、任意接種では自己負担が発生し、経済的な理由から接種をためらうケースも出てきます。受ける側も、任意接種ならば、受けなくても大丈夫という誤った認識を植え付けます。二重の意味で接種率を高めることは出来ません。
不活化ポリオワクチンの一刻も早い導入を
さらに、行政や政治の怠慢が強く指摘されているワクチンの問題があります。
これが、ポリオ(小児麻痺)ワクチンの“不活化”の問題です。
私たちは幼い時から、ポリオ生ワクチンを経口投与されてきました。痛い注射ではなく、甘いシロップのような生ワクチンを喜んで飲んだ記憶があります。
しかし、この生ワクチンには、大きな問題があることが判明しています。現在、生ワクチンを使っているのは、東アジアでは日本と北朝鮮だけとなっています。いわゆる先進国で日本のみが生ワクチンを使い続けているのです。
生ワクチンは、毒性を弱めているとはいえ、ウイルスが現に生きているため、極希に重症副反応を起こす場合があります。(約486万回接種に1人程度の頻度で、弛緩制麻痺が生ずることがあるといわれています)ポリオを予防するための生ワクチンが、結果的に大きな悪影響を与えるケースがあるわけです。
また、生ワクチンを受けた人の排便中のウイルスが、ワクチンの免疫のない保護者や別の子どもに2次感染する実例も報告されています。
2008年3月時点で、当時の福田内閣は、民主党議員から提出された質問主意書に対して、「生ポリオワクチン接種後に麻痺を発症したと認定された事例は、平成元年度以降80件」「生ポリオワクチンを接種された者からの2次感染と認定された事例は、平成16年度以降5件」と、生ワクチンの危険性を認めています。
この生ワクチンに対して、世界の先進国で接種されているのが、“不活化ポリオワクチン”です。
このような状況下、生ワクチンでポリオを発症した患者団体「ポリオの会」(小山万里子代表)は、2010年12月15日、不活化ポリオワクチンの早期導入を求めて約3万5000人の署名を厚労省へ提出しました。
しかし、この際受け取った民主党の岡本充功厚生労働政務官は「不活化ワクチンの国内開発の進捗は不明、輸入もできない」と、無責任な回答をしたと報道されています。
国は、生ワクチンで効果が高く、副作用が少ないSabin株を不活化したワクチンの開発を進めているといわれ、さらに他のワクチンと4種混合の接種を前提としているために、その開発が遅れているといわれています。
生ワクチンの接種によってポリオに感染する人がいる。という明らかに原因が判明している事柄に、行政や政治が手をこまねいていて良いのでしょうか。国産のワクチン開発が遅れるのであれば、「外国から輸入しても、一刻も早く不活化ワクチンを投与すべき」だとの主張もあります。無作為の犯罪行為との批判も甘んじて受けなくてはならない状況が続いています。
こうした現状を分かりやすく住民に説明するのも地方議員の責務です。また、ワクチン行政の見直しに、公明党の地方議員としても、新たな行動を起こす時が来ていると実感します。
参考:ポリオの会のHP
、次の人の口から入り、のどや腸の中で感染増殖します。感染者の90~95%は感染しても全く症状がでませんが、感染者の0.1%~2%に麻痺が発生するといわれています。
昭和35年の大流行をきっかけに、経口生ワクチンの緊急接種が行われました。昭和39年に国産経口生ワクチンの接種が始まり、昭和40年代中頃にはポリオの患者はほとんど見られなくなりました。