茨城県は新年度から、「いばらき中性子最先端医療研究センター」を整備することになりました。東海村に整備された国の大強度陽子加速装置(J-PARC)を活用し、がん治療に役立てようという取り組みです。新年度予算に1億1618万円を計上し、茨城県をはじめ筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構、重工メーカーなど産学官の連携により、治療に使う中性子線発生装置の小型化量産化に取り組むことにしています。
研究センターは、東海村の「いばらき量子ビーム研究センター」の中に設置され、治療室や研究室が整備される予定です。
ここで研究されるがん治療法は、「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」と呼ばれています。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、患者の負担が非常に少なく、がんをねらい打ちできることが特徴です。がん細胞がホウ素を取り込みやすい性質を利用し、患者の体内にホウ素化合物を注射します。そのがん細胞に、中性子線を照射すると、ホウ素が別の放射線を出してがん細胞自体を破壊します。
中性子線を医療分野に応用する研究施設は、京都大学に次いで全国二番目であり、産学官連携での研究は、国立ガンセンターを中心とする研究が進んでいますが、大規模な施設とノウハウが蓄積する茨城県での取り組みが全国から注目されています。
県予算の財源は、原子力安全等推進基金を活用します。
筑波大など、最先端がん治療法「BNCT」実用化へ産学官で新組織
日本工業新聞(2011年03月03日)
【水戸】筑波大学は最先端のがん治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の実用化を推進する産学官のコンソーシアムを今夏までに立ち上げる方針を固めた。
加速器から照射する中性子を使ってがん細胞だけを破壊する治療法で、他の放射線では治療が困難な多発性がん、浸潤がんなどに有効とされる。コンソーシアムは小型加速器の開発と医療に利用するための薬事法に基づく登録、運用方法の確立に加え、臨床研究を重ねて次世代のがん治療法として「先進医療」の認定を目指す。
コンソーシアムは筑波大学のほか、茨城県、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構、重工メーカーなど、2010年4月に立ち上げた研究会を母体に産学官が連携。コンソーシアムの下に人材育成、加速器やその電源に関係する設備整備、開発した加速器の維持管理を行う設備管理の3部会を置く。組織代表には筑波大付属病院副病院長の松村明氏が選ばれる見通し。