憲政史上に残る画期的取り組みに期待
東京電力福島第1原発事故の原因を究明する調査委員会を国会に設置する法律が成立しました。次期臨時国会で正式に発足し、半年以内に報告書がまとめられます。
国権の最高機関たる国会が政府から独立した形で検証に取り組む意義は大きい。期待を込めて歓迎するとともに、今後の動きを注視していきたいと思います。
福島事故をめぐっては依然として不可解なことが多く存在します。
格納容器の圧力を抜く作業(ベント)はなぜ遅れたのか。その背景に、菅前首相の初動対応のまずさ、とりわけ現地視察があったのではないか。東電幹部が海水注入をためらったとされる真の理由は何だったのか。放射能拡散予測情報の開示がなぜあれほどまでに遅れ、混乱を重ねたのか。これまでの政府や東電の説明では到底納得できません。
折しも日本原子力研究開発機構の研究チームは、メルトダウン(炉心溶融)した2号機の注水を3時間半以内に再開できていれば、溶融を防げたとする解析結果を発表しています。
放射能の広がりを予測し、住民の避難を支援するSPEEDI(スピーディ=緊急時迅速放射能影響予測) の結果がなぜ公表されなかったのかなど、国民の疑惑は膨らむ一方です。
「人災」との見方が強まる中、国会事故調は真相に厳しく迫ってもらいたいと思います。
事故調査委員会をどこに置くか、この問題は、先の国会から議論されてきました。考え方は3つ。1つ目は内閣に置く(政府民主党案)、2つ目は民間の有識者で構成する委員会に置く(自民党案)、そして3番目は国政調査権を有する国会に置く(公明党案)の3案が議論されてきました。
内閣に置く方法は、すでに菅総理の諮問機関として発足しています。しかし、調査委員会は、内閣の対応策も調査の対象にしなくてはなりません。内閣の諮問機関に過ぎない委員会が、任命権者である内閣を厳しく調査することなどとても期待できません。
2つ目の民間案は、内閣とはまったく別の委員会が調査するという点で、内閣案よりも優れています。しかし、民間の委員会に、国会の国政調査権並みの強力な調査権(証拠の提出命令、証人の出頭命令、虚偽の供述には偽証罪の適用、などなど)を与えてよいのか、国会の国政調査権との関係はどうなるのか、といった大きな問題があります。
結局、公明党案は、憲法が衆参の両院に国政調査権を与えていることから考えれば、至極当然のことです。
この結論に至るまで、民自公3党をはじめとする与野党で喧々諤々の議論の末、公明党案でまとまりました。衆院で僅か21名の公明が、302名の民主党と118名の自民党を相手に勝ち取った成果ともいえます。
こうした経緯を経て、国会に原発事故調査委員会を設置する法案が成立しました。本邦初の画期的な制度でメディアからも大きな評価を得ています。原発事故を二度と起こさないために事故の実態をしっかりと検証することが大切です。そして、そのことが国際社会における日本の信用を回復させる唯一の方法です。
(写真は、福島第1原発4号機3月22日撮影:東京電力提供)