1月4日、野田佳彦首相は年頭記者会見で、政府・与党で決定する消費増税法案の素案について、「いわゆる素案としての意思決定は今週中に社会保障と税の一体改革の本部を開いて、そこで決めていきたいというふうに思います。その上で、政府・与党の考え方がまとまった暁には、次は野党の皆さんに呼び掛けをしていくということであります。来週中にはその呼び掛けを行って、野党の皆さんもこれは先送りのできない課題であると、私はご認識をいただいていると思いますので、そしてお互いに議論をしてそれをまとめて大綱として取りまとめ、その大綱をもって法案化をし、年度末に法案を提出をする、そういうプロセスをたどっていきたいと考えている次第であります」(首相官邸のホームページより引用)と語りました。
野田総理は、国民を裏切る増税路線の導火線に火を付けてしまったようです。
そもそも増税無しに年金や医療改革など、増税無しに実現できると豪語して政権を奪取した民主党に、消費増税を語る資格などありません。
今、政府が進めようとする社会保障と税の一体改革の議論の問題点は、何よりもそれが目指すところの、年金、医療、介護をどうするかの全体像を国民に明示する責任があります。しかし、それが示されないまま、手段である消費税を上げる議論ばかりが先行していることにあります。
例えば、野党時代の民主党は現行の年金制度を批判し、「年金一元化」とともに、全額消費税で最低保障年金を実現するとしていましたが、政権を取って2年5カ月。今なお、その姿は示されていません。
今回の一体改革では当然、抜本改革案が示されるものと考えていましたが、2013年に先送りされてしまいました。本気でやるなら、今回の一体改革の中で提示すべきです。
一方、厚生年金の支給開始年齢引き上げが政府・与党で議論されました。これは、年金に対する不安を煽り、それをテコに増税を正当化しようという財務省側の思惑があったと思われます。
2004年の自公政権時代の年金改革で、年金制度は5年ごとに財政検証されることになりました。2009年の財政検証では、経済対策、少子化対策にしっかり取り組めば、現行の年金制度そのものは揺るぎなく安定していることが確認されています。
こうした点を説明せず、唐突に68歳引き上げを議論すること自体、国民の不安を煽るだけです。
公明党の年金制度改革に対する基本的な考え方は、「年金100年安心プラン」で、2004年の改革で100年住宅の基礎と柱はがっちり構築できたといえます。したがって、現行の年金制度の骨格を変える必要は全くありません。ただ、100年住宅といっても、水回りや間取りを変えるなどリフォーム(改修)は必要になります。100年間、全くそのままではなく、部分的な改善は必要です。
具体的には、無年金や低年金が深刻な問題です。このため公明党は、低所得者の基礎年金を25%上乗せする加算制度の創設や、年金の受給資格期間「25年」を「10年」に短縮することなどの対策を提案しているのです。
公明党は年金、医療、介護、子育て支援などの社会保障を充実させるためには、消費税を含む税制の抜本改革で安定財源を確保することは必要だと考えています。
ただし、それには前提条件があります。(1)社会保障改革の全体像を示す(2)景気を回復させる(3)行革、ムダゼロを徹底する(4)消費税引き上げ分は社会保障と少子化対策に使途を限定する(5)消費税だけでなく所得税、相続税など税制全体の中で財源を生み出す―の5つです。こうした努力なしに国民の理解は得られません。
社会保障の議論をした後、それを賄う財源について、消費税を含む税制改革でどう確保するのか議論するのが筋です。したがって、民主党が2013年に示すという年金の抜本改革案の提示の前倒しが絶対条件となります。
体改革の中で年金抜本改革が抜け落ちているのでは、どれだけ税金が必要なのかも分かりません。当然、消費税率のアップが必要なのかどうか、与野党協議をしても結論を出すことは出来ません。
民主党は付け焼き刃の議論で、消費増税にアクセルを踏むべきではありません。