2月1日、橋本昌県知事の定例記者会見が行われ、東海第2発電所の再稼動問題について、一歩踏み込んで慎重姿勢を明らかにしました。
県政記者クラブの幹事社が、1月25日の枝野経済産業大臣への東海第2発電所に関する申し入れについて質問しました。橋本知事は、「地震・津波が東海第2発電所にどういう影響を与えたのかということについて早く調査を終了させて、わかりやすく周りに説明してほしいと思っております」「(調査に)時間がかかり過ぎているような気はいたします」と、国の対応に不満を表明しました。その上で、「東海第2発電所の置かれている状況を十分に勘案してほしいということで、東海第2発電所の場合には、年数が相当経っていることとか、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)の範囲内に100万人住んでいるということとか、地震が大変多い日本海溝側に面しているとか、そういったことを申し上げて、これから地元とも十分に相談した上で再起動するかしないかを決定してほしいということをお願いしてきたところです」と語りました。
また、政府が40年以上経過した原子力発電所は廃炉にするという方針を受けて、「今日の新聞に、国として福井の2基について再起動は認めない方向だということが載っていました。うちの県の場合、(東海第二発電所は)もう既に33年と3カ月経っているわけでありますので、そういった中で仮に防潮堤の建設とか始めると。これだけでもかなりの時間を要しますから、現実問題として、40年までに何年稼動できるのかといったことも出てきます。コストパフォーマンスということで言うと、いいのかどうかということになってくると思います」との、コストパフォーマンスの視点からも運転再開を疑問視する見解を初めて示しました。
橋本知事は、昨年来、東海第2発電所の再稼動については、まず専門家の議論や国の判断を待つという言動に終始し、知事自身の考えを示すことはありませんでした。今回の定例記者会見での一連の発言は、東海第2発電所の運転再開に否定的な姿勢を示したものとして注目されます。
産経(幹事社):冒頭、幹事社から3つ質問がありますので、よろしくお願いします。
まず1つ目なのですが、先週、知事は、枝野経済産業大臣以下、原発に関する申し入れをされたと思うのですが、改めて知事の原発に対する現状のスタンスと、先週の申し入れの際の政府の反応といいますか、その受け止めをまずお願いします。
知事:先週の要請というのは、実は、企業立地補助金について、本県の枠をしっかり確保してほしいというのがメインだったわけでありますが、せっかくの機会をいただいたので、東海第二発電所についても県としての申し入れを行ってきたというのが実情であります。
そして、東海第二発電所については、昨年の経済産業大臣の発言からも、再起動を要請されていないものですから、地震・津波の影響の分析は進んでいるのかどうかをお聞きしたかったわけですが、それについてはまだ調査中ということで、はっきりした返事はありませんでした。
また、それとあわせて、東海第二発電所の置かれている状況を十分に勘案してほしいということで、東海第二発電所の場合には、年数が相当経っていることとか、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)の範囲内に100万人住んでいるということとか、地震が大変多い日本海溝側に面しているとか、そういったことを申し上げて、これから地元とも十分に相談した上で再起動するかしないかを決定してほしいということをお願いしてきたところです。
NHK:大臣への要望に関してなのですが、国の返答に対して、知事としての受け止めはどのように思われたでしょうか。
知事:私としては、地震・津波が東海第二発電所にどういう影響を与えたのかということについて早く調査を終了させて、わかりやすく周りに説明してほしいと思っております。
NHK:そういう意味では、今、はっきりした返事はなかったということですが、どうですか。
知事:時間がかかり過ぎているような気はいたしますが、今、定期検査中でもありますので、そういったことも関係しているのではないかと思っております。
朝日:関連で、先ほど、経済産業大臣に要望に行ったときに、地元とも十分相談した上でということを要望されたとのことなのですが、地元ということは、例えば、東海村とか水戸市など県央の首長さんたちが年末に協定の枠組拡大についての要望に来られたと思うのですが、それに対して回答期限ができれば1月中というお話だったと思うのですが、回答はいかがされるのでしょうか。
知事:近々回答します。
朝日:どういった趣旨になるのでしょうか。
知事:今、検討中です。
朝日:地元の声を聞いてほしいというふうに大臣にお伝えしたからには、県としても地元の声を聞くべきだとは思っているわけですが。
知事:当然、地元の声を聞いていかなければいけないわけでして、これまでもそうしてきました。ただ、安全協定の締結範囲の拡大等々については、東海第二発電所が再起動するかしないかによってエリアが非常に違ってきてしまうものですから、そういうところをある程度見てから判断していく必要があるだろうと思っております。今、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)を30キロという形で態勢づくりをしても、もし東海第二発電所が再起動しないのであれば状況は大きく変わってくるわけです。県のほうから安全協定の締結範囲を30キロまで拡大して地元との協議の場をつくれと言っていくことは、再起動を前提にしているととられることになります。現に懇話会からの要望書を見ると、再起動を前提にしたような要望になっているのです。再起動を前提にしたような行動は今とるべきではないと思っておりますので、そういったことが回答の要旨になると思います。
朝日:再起動を前提としない協議の場というのはあり得ないのでしょうか。
知事:今言ってきているのは安全協定を結べという話ですから、再起動を前提にしなければ全然形は変わってくると思います。
朝日:安全協定と切り離して再起動だけ話し合う場をつくるのは難しいのでしょうか。
知事:それは(自分たちで)つくられればいいのです。ほかの県で市町村のほうでやっているところもたくさんありますから。
朝日:県と要望している県央の首長さんたちとでそういうことを。
知事:今、前提が180度違ってしまうかもしれないことを仮定のもとに議論するというのは余り意味がないことだと思います。
朝日:わかりました。
茨城:国から地震・津波の影響について調査の回答がない時点では、再起動の要請が仮にあっても応じられないという感じでしょうか。
知事:現実問題として、それについては国の方針が決まるのを待っている状況です。今日の新聞に、国として福井の2基について再起動は認めない方向だということが載っていました。うちの県の場合、(東海第二発電所は)もう既に33年と3カ月経っているわけでありますので、そういった中で仮に防潮堤の建設とか始めると。これだけでもかなりの時間を要しますから、現実問題として、40年までに何年稼動できるのかといったことも出てきます。コストパフォーマンスということで言うと、いいのかどうかということになってくると思います。
茨城:地震・津波の調査の回答がまだ来ていないかと思うのですが。
知事:我々はそれだけ(東海第二発電所における地震・津波の影響についての回答)を求めているのではなく、それをきちんと解析したうえで、国としてどういうふうに考えているのかということを示してほしい。その根拠には、もちろん、地震・津波についてのしっかりした分析がなければだめなわけです。それをやらなくてはいけないので再起動の要請をしなかったと、昨年、我々は聞いておりますので、それであれば早くその点をはっきりさせて欲しいということです。
NHK:今、福井の2原発については国が再起動を認めない方針だということですが、今後、東海第二原発の再起動の方針が示されますが、今の国の姿勢が影響するとお考えでしょうか。スタンスというか。
知事:一番典型だったのが浜岡原発ですが、稼動中のものを止めたということがありました。我々立地の地元としては、しっかりした方針のもとに国としての意向を表明して欲しいと考えております。総理大臣であれ、その場で思いついた形でぽんと言われてというのは余りいいことではないと思います。(福井の2基については)環境大臣として発言されたのだろうと思いますが、内閣として(の発表と)とられます。しかし、我々は、例えば、関係者は福井の2基について再起動しないことについて同意しているのかということを知りません。その辺も、例えば、経済産業大臣も同意しているのかとか、みんなで議論した後で発表されるのが本来の姿なのかなと思います。
NHK:では、あれは政府の見解ではないというふうな受け止めですね。
知事:いやいや、環境大臣(としての発言)だから、政府の方針だと我々は受け止めているわけで、ただ、それが政府の中で十分議論された結果なのかどうかがわからないということです。
茨城:今の一連のお話ですと、知事の今のスタンスというのは、国の方針、態度待ちということで、知事自身は、今、フィフティフィフティというスタンスという感じでしょうか。
知事:いずれにしても、先ほど申し上げたような様々な問題がありますので、それについて国としてどう考えるのか、我々が納得できるしっかりとした説明がなければ県として方針を出すのは難しいのだろうと思います。
NHK:一部報道でありましたが、国に原発のデータを送る装置が、東海第二原発でも非常用バッテリーが繋がってなかったのですかね。とにかくデータ転送が一時的に止まっていたという報道がありましたが、これについてはどのように受け止めていらっしゃいますか。
知事:これは今回の福島原発の事故を受けて、どこでも非常用電源をきっちり確保しようという方向に行っていますので、昨年(震災時に)、3時間ぐらい止まったというような報道がなされていましたが、それをちゃんとカバーするための対応はとられていくと思います。
NHK:きのう、那珂市長が、市民アンケートをとるということを表明していますが、これについてはどのように受け取っていらっしゃいますでしょうか。
知事:これはそれぞれ市町村長さん方が考えを持っておられるでしょうから、県として何か言っていく立場ではないと思います。
NHK:自治体独自として住民の意向を県とか国とは別に集約していこうという姿勢がありますが、これまで公的なアンケートはなかったと思うのです。自治体が住民の意見を集約するということは県内では恐らく初めてだと思うのですが、こういった動きについて公的な自治体が取り組むということについてどのようにお考えでしょうか。
知事:それは選挙で選ばれているわけですから、首長さんが判断すればいいことだと思います。