2月26日より、茨城県地域防災計画のうち、原子力災害対策計画編の改定に関するパブリックコメントの受付が始まりました。県のホームページなどに掲載された素案を元に、3月15日まで募集しています。対象は県民と県内在勤在学者で、郵送、ファクス、電子メールで受け付けます。
このパブリックコメントや今日から始まった県議会定例議会などでの議論を経て、3月中には茨城県防災会議で決定される予定です。
地域防災計画の見直しの中では、総論、原子力災害事前対策、緊急事態応急対策、原子力災害中長期対策と4つの章立てとなっています。
総論では、原子力災害対策を行う範囲の拡大が示されました。
原子力災害対策を重点的に実施する範囲を、原子力発電所から概ね5キロの区域として、PAZ(予定的防護措置準備区域)と位置づけます。また、緊急時に災害対策を行う区域は、今までの3倍の広さである30キロ圏内として、UPZ(緊急時防護措置準備区域)に設定します。
PAZでは、放射性物質の原子炉外への放出前でも、原子力施設などの状態から判断して、予防的な避難や安定ヨウ素剤の服用などの防護措置を準備・実施します。
茨城県内で東海第2原発に関わるPAZは、東海村のほぼ全域と日立市、那珂市、ひたちなか市の一部で、居住する人口は6万人に及びます。
一方、UPZでは、放射性物質が放出された場合に、緊急時環境モニタリングの実測結果などを基準と照らし合わせ、避難などを段階的に行います。
UPZは、日立市、高萩市、北茨城市、常陸太田市、常陸大宮市、那珂市、ひたちなか市、水戸市、城里町、大洗町、茨城町、鉾田市など9市3町に及び、この範囲に96万人の人口を有します。UPZ内の人口では全国最大となっており、原子力防災の拠点である茨城県庁や茨城県警、原子力医療の拠点病院である水戸医療センターなども、UPZの範囲に含まれてしまいます。
第2章の原子力災害事前対策では、事故対応の長期化に備えた動員体制の整備や災害時要援護者への配慮(伝達体制の整備、病院、社会福祉施設等における避難計画等の作成)などが、新たに加えられました。
第3章の緊急事態応急対策では、緊急時モニタリングの強化(茨城県内では現在の80箇所のモニタリングポイントをさらに拡充します)、避難等の基準、避難所の開設運営等、避難所における女性の視点の活用、子育て家庭への配慮、安定ヨウ素剤の予防服用などが盛り込まれました。なお、避難の基準としては、空間放射線量率が、500μSv/hを超えた場合、数時間内を目途に区域を特定し避難等を実施します。空間放射線量率が、200μSv/hを超えた場合,1日内を目途に区域を特定し、地域生産物の摂取を制限するとともに、1週間程度内に一時移転を実施するとしています。
国は、3月中に都道府県と市町村に対して原子力防災計画の策定(または改訂)を求めており、県内の市町村でも現在、策定作業が進んでいます。しかし、PAZ圏内ではひたちなか市、UPZ圏内では茨城町や笠間市が、3月末までには間に合わない見込みです。水戸市においては、素案は策定されていますが、最終の防災計画にはまとまっていません。
更に、この防災計画の次の段階として、住民の避難計画策定が市町村に義務付けられています。昨年3月県議会代表質問で、井手よしひろ県議は、100万県民を重大事故の際にどのように避難させるのかとの質問を知事に行いました。知事は、県内のバスを全て動員しても、100万県民を県外に移動させることは物理的に不可能であるとの試算を示しました。市町村が実効性のある避難計画を策定できるかが大きな問題となります。