6月5日、井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党議員会は、つくば市苅間の一般財団法人日本自動車研究所(JARI:Japan Automobile Research Institute)を訪れ、頭部保護帽「abonet+JARI(アボネット・プラス・ジャリ)」について、実際の製品を手にしながら説明を聴取しました。
日本自動車研究所は、1961年(昭和44年)、自動車高速試験場を、自動車に関する総合的な研究を行う組織に改め、クルマ社会の健全な進展に貢献することを使命とした公益法人の試験研究機関として、日本の自動車産業の発展と自動車技術の進展に寄与する研究を続けてきました。
特に日本自動車研究所は、「衝突安全」の研究・試験の分野では、国際的な数多くの成果を挙げてきました。*人体傷害メカニズムの解析、*衝突試験用人体ダミー人形の開発・性能評価、*ダミー人形を用いた自動車の安全性の評価などの知見を、自動車だけでなく他の分野に有効活用できないかとの発想から、頭部保護帽の開発が始まりました。
日常生活における転倒系事故による死者数(頭部打撃が損傷主部位と考えられます)は年々増加しており、現在では年間約7千人に達しています。また、交通事故による死亡・重傷者数(損傷主部位:頭部)は、歩行中、自転車乗車中ともに年間で約3千人に達しており、さらに今後、日本各地で発生の恐れがある大きな地震が発生した際にも、頭部の保護がとても大切です。
このような背景から、日本自動車研究所では、日常生活で気軽に着帽でき、かつ、頭を守ることができる帽子(頭部保護帽)の開発に着手。(株)特殊衣料との共同開発で製品化した商品が「abonet+JARI」です。
「abonet+JARI」は、自動車の衝突安全性能評価試験用の人体ダミーを用いた衝撃試験の結果をもとに、従来は枕の中材などとして利用されていたポリエチレンビーズを緩衝材として採用。検査結果では、転倒時の頭部への傷害リスクを約6割低減できる事が確認されました。
また、日本防炎協会が規定している防災頭巾の「対落下物衝撃安全性能基準」に基づいた試験も対しても、基準値を約75%安全サイドでクリアするという、高い安全性を確保しています。
さらに、日常生活における転倒や交通事故時の頭部傷害発生リスクを低減するためには、頭部の保護性能に加え、日常的に着帽しても違和感の無い概観や着用時の快適性なども重要です。
そこで、確かな頭部保護性能に加えて、従来の保護帽よりも高い通気性、装着性および軽量性、一般的な帽子と変わらないデザイン性なども重視して製作されたのが「abonet+JARI」です。
日本自動車研究所と特殊衣料は、「abonet+JARI」の普及を図り、より使いやすさやデザイン性を高めるために、地元のつくば市立葛城小学校の児童47人に実際に着用してもらうことにして、5月28日に贈呈式を行いました。来年3月まで、着用した感想や改善提案を子供たちから提出してもらいことにしています。
説明聴取後の意見交換では、児童・生徒用にヘルメットとの性能比較、大量購入した場合の納入価格の問題、児童生徒用だけではなく高齢者用としての展開などについて活発な議論が交わされました。
今年度、県議会の中に設置された「通学児童生徒の安全確保に関する調査特別委員会」の委員である高崎進県議(水戸市選出)は、「子供たちの登下校時の安全確保や学校内での防災・地震対策に“アボネット・プラス・ジャリ”は、大変有効だと感じました。委員会の審議の中でも、学校での導入の可能性を議論してみたい」と語りました。
参考:頭部保護帽:abonet+JARI
参考:abonet+JARIの特殊衣料のHP