集団的自衛権は国連憲章第51条に規定された国家の国際法上の権利です。ただ、集団的自衛権の意味は、国連憲章において明確にされていないのが現実です。
そのため、①他国の防衛②個別的自衛権の共同行使③攻撃を受けた他国の被害が自国にとって死活的に重要な場合の防衛行為一の三つに解釈が分かれています。特に③が国際法学者に広く共有されている理解となっています。
しかし、被攻撃国と集団的自衛権を行使する国との関係の在り方が具体的に明確になっていないせいか、しばし集団的自衛権を口実とした不当な軍事介入を招いているのです。
そうした中、国際司法裁判所(ICJ)は1986年のニカラグア事件判決において、集団的自衛権行使の要件について初めて踏み込んだ判断を示し、注目されました。この判決によると、①被攻撃国の攻撃事実の宣言②被攻撃国からの援助要請一の二つが集団的自衛権の行使に必要であるとされ、集団的自衛権を行使しようとする国の主観的判断を封じようとしました。
一方、今回の閣議決定は、ICJが示したような要件に基づき行使される集団的自衛権を認めたものではなく、あくまで「新3要件」のもと、自衛の措置をとるかどうかが判断されます。
7月14日の衆院予算委員会での北側一雄副代表の質問に対し、横畠裕介内閣法制局長官は「閣議決定は、国際法上、集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについて行使を認めるものではない」と述べ、「わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られる」と答えています。
こうした見方について、憲法学者の木村草太氏(首都大学東京准教授)は以下のように語っています。
「首相の乱暴な政権運営を懸念しており、今回の閣議決定の枠を超えた法律案を作って、それを強行に制定しようとするようなことが起きないよう、閣議決定をきちんと守らせることが大事だ。法律家の多い公明党に期待したい。閣議決定で認められたのはあくまで自衛の措置なのだから、防衛出動以外では自衛隊は動かせない。国連出動(国連安保理決議に基づく武力行使)や外国防衛援助出動(他国防衛)は、今回の閣議決定からはできない。このことを閣僚や与野党の国会議員はもちろん、国民の側も、しっかり意識する必要がある。何が決められたのか理解するためにも、まずは閣議決定の全文を読んでみてほしい」(2017/8/13付け公明新聞)