9月26日、東京電力福島第一原発の廃炉に向け、日本原子力研究開発機構(JAEA)が楢葉町に整備する「楢葉遠隔技術開発センター」の安全祈願祭と起工式が、楢葉町山田岡の現地で行われました。
このセンターは廃炉の作業者の訓練などを行う研究管理棟、原子炉格納容器の実物大模型などが入る試験棟の2棟からなり、平成27年夏に一部で運用を開始し、28年4月に本格的に業務を始めます。
加えて、同センターには、政府が検討を進める福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想のけん引役も求められています。この構想は、福島県東部の浜通り地域に新産業拠点を築くものです。今年6月に報告書がまとめられ、公明党が強く実現を訴えています。同センターが行う研究は、がんの放射線治療や環境・エネルギーなど幅広い分野への応用が期待されており、雇用創出や被災者の帰還、新住民の移住につながるとみられています。
既にアメリカでは、原子力施設周辺の環境浄化と産業都市化に成功している事例もあります。
かつてプルトニウムの精製で深刻な放射能汚染が発生したワシントン州ハンフォード地域では、1989年に政府と州が除染推進に方針転換。研究施設の技術力は新産業創出に生かされ、150近いベンチャー企業を輩出しました。
また、ワシントン州は、福島と同様に農業が盛んです。このため、施設従業員の教育にも関係した州立大学の教員は、州内で高品質のワインができることを証明し、製造業者らに教育を行いました。その結果、1981年には数カ所だった醸造所は、原子力施設の周辺などでも建設され、ワイン産業の規模は8000億円程度に拡大。ハンフォード周辺の人口も1990年の約9.5万人から20年間で17万人を超すまでに急増しました。
アメリカの例は、事故が起きた原子力施設の周辺地域でも、行政の取り組み次第で産業集積と住民の移住は十分に可能であることを示しています。
構想に対する福島県民の期待は大きい。6月の報告書では、構想の中期的な目標を6年後の東京五輪に設定すべきだと訴えています。今後の課題は、研究を促す特区の制定や首都圏へのアクセス改善、インフラ整備などです。一人でも多くの被災者が、将来の展望や計画を持てるよう、政府は取り組んでもらいたいと思います。
原子力のまち東海村との連携も不可欠
茨城県の東海村の役割も福島の再生に大きな役割を果たす必要があります。東海村の原子力の最先端技術を原子力科学研究・先端科学研究の推進にとどまらず、東京電力福島第一原発事故収束への貢献や、今後の原発ゼロ社会を目指して、廃炉研究の一大拠点にする必要があります。
東海村にある日本原子力研究開発機構が施設などを活用して原発事故収束に関する試験を行い、放射性物質で汚染された環境修復にあたる科学者や技術者を派遣する。機構が中心となり、原子力エネルギーの利用に伴う過酷事故対策や廃炉、放射性廃 棄物処分の研究に関するデータの蓄積と情報発信を目指してはどうでしょうか。
東海第2原発を運営する日本原電は、原子力発電から撤退させて、稼動している原発の安全性の確保や廃炉技術の研究開発拠点として再整備すべきです。