安倍首相が掲げる成長戦略が展開される中、昨年11月には地方創生法(ひと・まち・しごと創生法)が成立しました。この地方創生の取り組みは、従来の画一的な、国からの一方的な施策展開ではなく、地元の実情に応じた戦略的な政策実行が大きな特徴です。
地方創生の具体的な視点は、地域の人口減少をいかに食い止めるか、東京一極集中にどのように歯止めをかけるかに大きなポイントがあります。
昨年、民間の有識者でつくる「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が自治体消滅の危機について警鐘を鳴らし、全国の自治体に衝撃が走りました。
2040年の全国市町村別人口を推計し、人口維持が困難な消滅可能性都市として、10年から30年間に20~39歳の女性人口が5割以上減少する自治体が896挙げられています。茨城県でも18市町村がこの中に入っており、中でも高齢化や過疎が進む小規模の町村はやがて人口1万人割れとなり、消滅の可能性が高いと説明されています。
こうした人口急減の問題は、合計特殊出生率が急激に下がり始めた平成期から社会問題化しており、さまざまな対策が講じられていますが、その効果が上がっているとはいえません。2013年の茨城県の合計特殊出生率は1.42で、過去最低であった2005年の1.32と比較すると、若干上昇してきたものの、出生数自体は漸減傾向のままで推移しています。
出生数を上げる大前提として、結婚しない男女が急増している実態があります。
茨城の生涯未婚率(20歳以上未婚者の数を20歳以上人口で割った割合。「未婚」とは、まだ結婚したことのない人を指し、離婚した人は含まない)は、平成22年10月1日現在(国勢調査)で、21.8%と5人1人以上が結婚していないという驚くべき数字が明らかになりました。
ちなみに、未婚率が高い市町村は、つくば市(25.84%)、五霞町(23.96%)、阿見町(23.77%)、土浦市(23.42%)、古河市(23.07%)です。低い市町村は、那珂市(19.52%)、八千代町(19.36%)、東海村(19.31%)、常陸太田市(18.62%)、大子町(17.45%)となっています。
未婚率は女性に比べて男性が高いの特徴です。2010年現在、50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合は、男性20.1%、女性10.6%と、初めて男性が2割台、女性が1割台と、2倍の開きがあります。
いばらき出会いサポートセンター~茨城県の取組~
茨城県では、2001(平成13)年度から、全国に先駆けて「男女の出会いの場づくり」を県の少子化対策に関する総合計画であるエンゼルプランに位置付けるなど、未婚化・晩婚化対策として積極的な結婚支援に取り組んできました。一方、いち早くこうした取り組みは、茨城県内では連合傘下の労働組合が積極的に行ってきました。
こうした流れを受けて、パートナー探しの支援及び「ふれあいパーティー」の開催を行う「いばらき出会いサポートセンター」は、2006(平成18)年6月に茨城県及び社団法人茨城県労働者福祉協議会によって設立され、現在県内に5か所の活動拠点センターが設置されました。
いばらき出会いサポートセンターが実施する、会員登録制によるパートナー探しの支援の特徴としては、会員自ら検索システムを活用してパートナーを探す点が挙げられます。会員はセンターのタブレット型端末を使用してお見合いをしたい相手を検索し、選択します。センターの相談員は選ばれた相手にお見合いの意思があるかを確認し、その意思がある場合はお見合いをセッティングし、5か所の拠点いずれかでお見合いが行われます。お見合いを経て、双方に交際の意思があることを確認するまでは、双方の氏名と電話番号は伝えないなど、プライバシーへの配慮がなされています。
昨年末現在で登録会員数は3128人(男性1852人、女性1276人)、延べ9448人が登録しました。週末はお見合いスペースが予約でいっぱいになることがあるなど、これまでに県全体で1323組(2014/12/31現在)が成婚に至っています。
実績を上げている要因としては、低額な入会金、広域的な取組、マスコミの協力、市町村との連携などが挙げられています。
また、「ふれあいパーティー」として、センター主催のパーティーを月3回程度開催しているほか、市町村、NPO法人、農協など他団体が行うパーティーをセンターが共催・後援するとともに、ホームページでPRするなど、積極的に支援しています。
マリッジサポーターは、茨城県知事からの委嘱を受け、地域において出会いの仲介や世話をするボランティアであり、その数は841人に上っています。
マリッジサポーターは、単独での活動としてお見合いのマッチングを行うほか、組織での活動として、全県を対象としたお見合いパーティーの開催や、県内5つの地域ごとに開催される定例会にそれぞれが保管する身上書を持ち寄ってのマッチング活動等を行っています。さらに、パンフレットの配布によるセンターのPRも行っています。
1300組を超えるカップルが結婚に至っている実績はありますが、結婚を希望している人の数からみると1%にも満たない数です。積極的な事業展開が望まれています。
サポートセンターの数の拡大や便利な場所へ移転、オープン時間帯の延長(夜8:00まで)などに取り組むべきと考えます。特に、未婚率が高い県西(古河市)・つくば地域(土浦、つくば市)へのセンターの立地を検討すべきだと提案します。
参考:いばらき出会いサポートセンター