3月3日、茨城県議会代表質問がおこなわれ、井手よしひろ県議が茨城県議会公明党を代表して登壇。県内でトラブルが続発している大規模太陽光発電(メガーソーラー)に関するガイトラインの整備を橋本知事に求めました。
これにたいして知事は、太陽光発電施設に関し、事業者に適正な設置を促すため、県は独自のガイドラインを策定すると回答。建設を避けるべきエリアの指定や、適切な維持管理などに関する項目を盛り込む方針であることを説明しました。
太陽光発電施設を巡っては、国は事業が適切に行われるよう、点検・保守や事業終了後の設備撤去の順守のほか認定を受けた事業者の情報を公開する制度を新設する考えで、関連の改正法が来年2017年4月に施行される見込みです。
法律施行までの期間にも対応できるよう、県は早急にガイドラインを策定する方針で、橋本知事は「県や市町村が必要な情報を把握し、安全や景観を守るために適切な対応が取れるようにしていくことが極めて重要だ」と語りました。
井手県議ら公明党は、筑波山周辺や鬼怒川の溢水現場、日立市や笠間市、茨城町などの太陽光発電施設建設の現場や周辺住民との意見交換を続けてきました。1月15日には、昨年11月にガイトラインを整備した山梨県を訪れ、説明を聴取しました。太陽光発電の健全な拡大を図るためにも、ガイドラインの整備を強く訴えてきました。
【井手よしひろ県議の提案・質問】
大規模太陽光発電施設建設に係るガイドラインの策定について伺います。
茨城県では、東日本大震災以降、再生可能エネルギーに対する関心が高まり、その開発規模は全国第2位となっています。特に太陽光発電は平坦な未利用地が多く、日照時間も長いという県土の特長もあり、この3年間で10倍、100万キロワットを超えるまでに成長しています。
しかし、ここにきて大規模太陽光発電施設建設に関わる、様々な課題が浮かび上がっています。特に深刻なのは自然破壊、景観破壊の問題です。防災上の危険性も指摘されています。地域住民との軋轢も深刻です。
具体例を挙げれば、水郷筑波国定公園に指定されている筑波山の特別地域とその隣接地域で、住民の納得がないままに、大規模太陽光発電の開発が始められました。
県は、特別地域内の案件に関しては、自然公園法に基づき申請を不許可としましが、周辺住民からは「昔から土砂崩れや水害の恐れがあった土地。台風のたびに避難する家もあるほどで、防災上の配慮がない開発に不安が募る」との心配の声が上がっています。
関東・東北豪雨により鬼怒川が越水した常総市若宮戸地区は、堤防の役割を果たしていた自然の丘陵部を、太陽光発電の開発のために削ったことが、被害を拡大した要因の一つではないかと指摘されています。この現場では、本格的な堤防の整備が始まる前に、太陽光パネルを復旧させる工事が始まっています。
日立市では、太陽光発電施設の開発が、隣接する団地住民に何の説明もなく、始められ大きな問題となっています。日立市役所にほど近い高鈴台団地では、今年1月21日、明日から発電施設の工事を始めるというチラシが突然まかれました。翌日から大量の重機が投入され、あっという間に造成工事が始まりました。説明会が1度だけ開催されましたが、法的には全く問題がないとの説明でした。3月末までの完成予定で、連日突貫工事が続けられています。
太陽光発電施設は、民主党政権下で1万平方メートル以下の開発の場合、経済産業省への届け出のみで工事を行うことができます。この施設の設置を、地元自治体や県が規制することは出来ません。どこに施設が計画されているのかという情報さえ、自治体にも知らされていません。
私は民主党政権下の数多くの稚拙な政策判断の中でも、最悪の選択がこの電力の固定買い取り制度ではなかったかと思っています。政権交代後も、この制度の見直しを躊躇した現政権にも重い責任があります。
国の制度に 瑕疵 ( かし) がある以上、県や市町村は自らの地域と住民を守るために、具体的な行動を起こす必要があります。
こうした中、無秩序な太陽光発電施設建設に、歯止めをかけようという地方自治体の動きもみられます。
山梨県は昨年11月4日、「太陽光発電施設の適正導入ガイドライン」を公表しました。私ども茨城県議会公明党では、今年1月15日、直接山梨県庁を訪れ、このガイドラインの説明を受けるとともに、甲府市内の現状を調査してまいりました。
山梨県のガイドラインによると、10キロワット以上の業務用太陽光発電施設を対象とし、立地の検討や設置時の防災・景観・環境などへの配慮、住民との合意形成などに関して、市町村への説明を求めています。この市町村への事前相談などは、すでに設備認定を受けた案件にも遡って適用されます。
こうしたガイドラインの設定は、地域での大規模太陽光発電の乱立、地元住民の不安解消には大変有効です。
私ども公明党は、再生可能エネルギーを茨城県内で拡大することには、全く異論はありません。しかし、そのためにも無秩序な大規模太陽光発電施設の乱立には、一定のルールを定めるべきでと主張します。
そこで、大規模太陽光発電施設の建設について、国に対して、都市計画法における開発行為の要件を適用したり、発電事業者の名称や所在地などの情報を住民や自治体に公表することを義務づけるなど制度の見直しを求めるべきだと考えます。
また、大規模太陽光発電施設建設にかかわる茨城県独自のガイドラインを策定すべきだと思いますが、知事のご所見をお伺いいたします。
【橋本知事の答弁】
太陽光発電につきましては、施設を設置し固定買取制度により電力会社等に売電する場合には、国の認定が必要とされており、認定にあたっては導入設備の性能を維持するための基準を満たす必要があります。
しかしながら、法令による許可や届出が必要とされていない場合などには、発電事業者名などの情報等が自治体や住民に全く知らされないまま事業が進められ、地域住民とのトラブルが数多く発生しいているところです。
このため、一昨年六月には関東地方知事会において、設置者の名称や所在地、出力規模等を公表するよう国に申し入れておりましたが、昨年十二月には、全国知事会さらに本県におきましても、
・安全性を確保するための設計基準や施工・管理に関する基準の整備
・認定情報の原則的な公開
・一定規模以上の設備の設置に地方自治体の同意などを必要とする制度の創設
などを要望してきたところます。
これらを受け、再生可能エネルギー固定価格買取制度に係る改正法案が国会で審議されておりますが、改正案では、適切な事業実施を確保するための仕組みとして、事業実施中の点検・保守や事業終了後の設備の撤去の順守、事業者の認定情報の公開等の制度が新たに設けられ、来年四月から施行されることとなっております。
公開される認定情報の内容などは今後整備される省令に委ねられており、県といたしましては、その内容も確認した上で、改正が不十分な部分や今回の改正に盛り込まれなかった安全性を確保するための造成、地盤強化等に関する設計基準につきましても、引き続き国に要望してまいります。
さらに、改正法の施行までの間の対応をどうするのかといった問題もありますし、また地域住民とのトラブルを回避するためには、法令等による規制強化に加え、事業者自らが計画段階から地域住民に十分な説明を行い、住民の意向を事業に反映させることも重要だと考えております。
本県ではこれまで、太陽光発電事業については、個別の法令等により対応してまいりましたが、昨今の状況を踏まえますと、県や市町村が必要な情報を把握し、安全や景観を守るために、適切な対応が取れるようにしていくことが極めて重要であると考えております。
今後、市町村等関係機関との連携を強化いたしますとともに、立地を避けるべきエリア等の指定や適正な維持管理などの項目を盛り込んだガイドラインを策定し、太陽光発電事業の適切な実施に向けて対応してまいります。
(なお、井手県議の質問、橋本知事の答弁はビデオ動画からの書き置きしの速報版であり、正式な議事録ではありません。引用等にはご注意下さい)