8月6日、広島市は71回目の「原爆の日」を迎えました。広島市の平和公園で午前8時から行われた式典には、91か国の代表を含むおよそ5万人が参列しました。
式典では、この1年間に亡くなった人や新たに死亡が確認された5511人の名前が書き加えられた、30万3195人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められました。そして、原爆が投下された午前8時15分に参列者全員で黙とうをささげました。
アメリカのオバマ大統領が現職の大統領として初めて広島を訪問したことを受け、広島市の松井一実市長は「平和宣言」の中で、オバマ大統領が被爆者を前にして述べた「核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」ということばを引用し、「絶対悪」である核兵器の廃絶に向けて各国が連帯して行動を起こすべきだと訴えました。そのうえで「被爆の実相を心に刻み、被爆者の痛みや悲しみを共有することにつながる」として、各国の政治指導者に被爆地を訪問するよう要請しました。また、安倍総理大臣にオバマ大統領とともにリーダーシップを発揮することを期待するとしたうえで、「『核兵器のない世界』の実現を確実なものとするために、核兵器禁止の法的枠組みが不可欠だ」と指摘しました。
安倍総理大臣は、「唯一の戦争被爆国として、非核三原則を堅持しつつ、核兵器不拡散条約体制の維持および強化の重要性を訴えていく。核兵器国と非核兵器国の双方に協力を求め、また、世界の指導者や若者に被爆の悲惨な実態に触れてもらうことにより、『核兵器のない世界』に向け努力を積み重ねていく」と述べました。
広島、長崎に各国指導者の訪問促す環境醸成を
オバマ米大統領の歴史的な広島訪問で、「核のない世界」をめざし日本と共に世界に訴え掛けていく決意を表明した意義は大きなものがあります。唯一の戦争被爆国である日本は、核兵器の「非人道性」をもっと世界に発信し、核廃絶に向けた国際的な合意形成へリーダーシップを発揮しなければなりません。
核廃絶への道のりは平たんではありません。今も世界に約1万5000発の核弾頭が存在し、北朝鮮が核開発を強行するなど、核軍縮・不拡散をめぐる動きはあまり進んでいません。そうした現状を直視しながら、核廃絶に向け、できるところから着実に対応していく必要があります。
そのために、世界の指導者が広島と長崎を訪問し、核兵器の惨劇を直接知ってもらうことが「核のない世界」への第一歩となります。訪問の際には、オバマ大統領のように被爆者の生の声を聴いてもらうことが大切です。
その意味で、先進7カ国(G7)外相が今年4月に示した「広島宣言」で、世界の指導者に両市を訪問するよう呼び掛けた行動は、大いに評価できます。
核廃絶の実現には、核の保有国と非核保有国が手を携えて行動していくことが重要です。外相会合を通じて、核を保有する米国、イギリス、フランスを含むG7の主要閣僚が初めて広島を訪れたのは画期的な出来事です。
一方、「核廃絶に向けた法的措置」を議論する国連のオープンエンド作業部会が8月5日スタートしました。議論に参加していない核保有国も含めた枠組みをつくれるかどうかが今後の課題です。71年前の惨禍を二度と繰り返さないため、日本は核の保有国と非核保有国の橋渡し役となって、積極的に行動していくべきです。